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第43話自己紹介をしますか?







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 児童養護施設「さくらい」にて。


「さっ、入って」


 響に促されるまま、袈刃音達は施設の入り口の先へ足を踏み入れた。


 入って直ぐに目につくのは、色紙を切って張って作ったような可愛らしい壁飾りの数々。

 玄関の端の傘立ての隣には、サッカーボールやプラスチックのバットなどを入れた遊具入れが置いてあった。


 幼い頃に通っていた保育所に似たこの雰囲気。

 最後に見た時とほとんど変わっていない。

 唯一違うことがあるとすれば――


「ヒビキぢゃーんッ!」


 突然、ダッダッダッダッと、騒がしい足音がこちらへ駆け寄って来た。

 勢い余ってぶつかりそうになる人影に気付いた響は、その肩を両手で優しく受け止める。


「大丈夫ヒビキちゃん!?怪我、どごも怪我じでなぁい?」


「大丈――「あああっ!頬のどご、怪我じぢゃっでるぅ!」。……あー、はいはいマミ(ねえ)、大丈夫だから。一旦落ち着いて。ね、ね?泣かないで」


「だっで、だっでぇ、ヒビキちゃんが一人でお(ぞど)に行っぢゃうがらぁ。良がっだよぉ」


 二十代くらいか。

 エプロンをかけた若い女性だった。

 背中の中ほどまで達した髪は亜麻(あま)色。


 彼女は心配を隠しもせずに、やや小柄なその体を名一杯使って響に抱き着いた。


「あっ……」


 が、響は躊躇う素振りを見せつつ、くっ付く彼女をそっと引き剥がした。


「うぇ……?どうしたの、ヒビキちゃん」


「えっ。えっと、いや何でも。うん、何でもないんだ……」


 袈刃音は二人の様子を静かに見守る。


 響が『アンデッド・ゲーム』で失ったのは、この施設に住んでいた家族だ。

 袈刃音も両親を死なせ、旭の親を失わせ、挙句、彼女自身まで守れなかった。


 無論、このゲームだと身内を失うなんてことは、特段珍しい話ではない。それくらいの悲劇は、探せばどこにだって転がっていた。

 誰もがそれを受け入れるしかなくて、失った悲しみを抱えながら生きていたのだと思う。


 逃げ出したのは袈刃音達の方だ。


 だから、犯してしまった過ちを否定して、自分の中にまだ微かに残っていたものさえ投げ捨てて、それでもいいと思った。

 そうして手にした結果が今、時を戻し辿り着いたこの世界にある。


 ――マミ姉、か。じゃあ、あの人が……。


 母屋(おもや)満実(まみ)

 確信はないが、恐らくはそうなのだろう。であれば、響が彼女に見せた作り笑いの理由も頷ける。


 袈刃音は人知れず、右の拳を強く握った。

 自分でも、やはり()()()()()()()()()()()

 目的のためならば、幾らでもこの手を血で染めると決めたのに……ままならない。


「ひ、響!」


 聞き覚えのない少年の声が袈刃音の思考を吹き飛ばす。

 響の方も、駆け寄って来た少年へ意識を向けた。


「ん?(れん)


「だ、大丈夫……なんだよな?」


「うん、もう安全。頼れる味方も来てくれたしね」


 そう言って、響の蒼い目が悪戯っぽい表情で袈刃音を見る。

 満実と思われる女性と少年の怪訝そうな視線が、釣られて袈刃音へ移った。


「えぁっ。えっと、その、三浦袈刃音です。どうも」


「ヒビキちゃん、学校の友達?」


「ん?うん、そう友達」


 流れるように虚言を吐いて、自分達の関係を誤魔化す響。


「おい響――」


「いいじゃん、どうせバレないって」


 彼女の二の腕を引いて、小声で注意しようとするも、本人はまったく意に介さない。


 その嘘だと、あとで何か聞かれた時に襤褸(ぼろ)が出て困るだろうに。

 せめて、もう少しお茶を濁して欲しかった。袈刃音は小さく溜息を零す。


「へぇ、そうなんだ」と満実は納得しているように見えるが、少年――恋といったか、彼の方は怪しい。こちらに向ける目が、若干鋭いものになっていた。


「響。その……友達いたんだ。男の」


「そういえば、言ってなかったっけ」


「いや。だったら、別にいいんだけどさ……。話すことでも、ないし」


 ホッとしたように恋は言葉を返した。

 しかし、そうなっても、チラチラと心配そうに自分達の様子を窺っている。


 なるほど、と袈刃音は何となく恋と響の関係を理解した。


「で、袈刃音。後ろの人達は?」


「そういえば、言ってなかったもんな」


「私の真似?」


「そういうのには気付くのか、お前」


「え、何が」


「別に。それより、紹介は上がってからでもいいよな?ここに来るまでに、ちょっと大変でさ」


 後ろに立つ千華達を一瞥して尋ねる。

 袈刃音やクロノは兎も角、他の面々はそうもいかない。

 行動を共にして実質まだ一日だが、やはり精神的、肉体的疲労が心配だ。


「確かに、立ち話も何だしね。どうぞ、皆家に上がってください。あっ、そうだ自己紹介まだだった。私、母屋満実っていいます。こう見えて、この家の責任者やってます」


 話の隙間に入り込んで来た、満実は、施設の中へ全員を促す。

 これでやっと一休み出来る。

 少なくとも、袈刃音と響を除いてはだが。


 弛緩した空気の中、二人は互いに目配せして気を引き締めた――。








文月です。


お盆は執筆に専念するぞ、と意気込み、さて一歩目!

……ね、何でなんでしょう?そんな時に、例の感染症が文月の体内に殴り込んで来ました。

お盆はそのまま高熱を出して、治療に専念することに。


投稿が遅れました事、申し訳ございませんでした。

症状も落ち着いて来たため、執筆も頑張りたい所存です。


そういえば、二章のタイトルが決まりました。

最近出した短編ホラーが意外と好評で悔しいですが、本作もこの調子で二章完結を目指していきます。


【・ご案内】

 下の★★★★★の部分は、読後、ぜひ本作の評価にお使いください。

 ブックマーク、感想などもよければ。


 作者のモチベーションとなります。


 《完了》





【次の話へ進みますか?】

【→はい/いいえ】

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