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第42話再会しますか?

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 森のような髪色に染めたショートヘアが、少女の鋭い動きに引っ張られ揺れた。

 装いはいつも通り、動きやすさを意識したもの。

 故に素早く、力強い踏み込みで彼女――湖窓(こまど)(ひびき)は薙刀を振るう。


「ぁあアッ!」


 不死者が施設の敷地内に跋扈(ばっこ)していた。

 響の一振りがそのうちの一体を狙い、頭部から胸部の肉を一気に切り裂く。


 飛び散る鮮血。傾く肉体。

 生ける屍は、砂と砂利を敷き詰めた足元に倒れ事切れる。


 既に十体以上が絶命し、日差しに熱された地面に転がっていた。


「く……ッ」


 しかし、奴らの勢いは止まらない。


 それほどの数がこの場所に集まっているのだ。

 響は肩で息をしながら、ゾンビ達の襲撃に耐えていた。

 相当余裕がないのだろう、ヘッドフォンを首にかけている。


「袈刃音!」


 加勢に向かおうとした矢先、千華が袈刃音を呼んだ。

 彼女の方を振り向くと、真白の車がこちらに追い付いて、既に道の端に留めていた。

 ドアを開けて、槍を片手に千華が自分の方へ走る。

 袈刃音は咄嗟に左手を突き出し、彼女を制した。


「え?」


 訳が分からないまま、千華は立ち止まった。

 静かに、袈刃音が、伸ばした手の人差し指を立てる。


「ぁっ」


 ゾンビが付近にいる。

 それに気付き、千華は即座に自分の動きに注意を払う。

 おかげで施設にいる者の意識がこちらに注がれることはなかった。

 ――ただ一人を除いては。


「っ!?」


 ハッと。

 何かに気付いたように、湖窓響はその場で硬直していた。

 不死なる集団。鼓膜に届く空気の震えだけを頼りに、奴らが口内から涎を垂らして生者の血肉を求め迫る、その最中(さなか)

 響の唇が、そっと開いた。


「……かば、ね?」


 狐につままれたような顔をして、少女の翡翠を思わせる色の瞳が、袈刃音を見つめていた。

 袈刃音もそれに気付く。

 重なる二人の視線。


 突然、響は俯きがちになって小さく笑った。


「ったく、遅いって袈刃音。……でも、良かった。じゃあ――これでやっと、本気で行ける」


 その呟きは誰にも届かなかった。

 袈刃音にさえ、聞こえなかった。

 ただ、袈刃音は彼女の纏う空気が変わったのを察知した。


「袈刃音、行かないと!あれッ」


 袈刃音の腕を引き、千華が声を殺して言った。

 もっとも、その必要はない。


「申請、――」


 不意に千華の視線が施設へ移った直後。

 響に食らい付こうと迫った複数のゾンビ達が、まとめて吹き飛んだ。

 恐らく、【ポイント】消費により強化された筋力だろう。

 鬼の如き怪力を得た彼女に、薙刀で薙ぎ払われたのだ。


 背後にゆらり、新たな不死者の影。

 が、その時既に、近くで、袈刃音が右手のバールを振り上げていた。


 ともすれば凶器と化す工具の強打を頭部に浴び、血飛沫と共にゾンビの命が散る。


「響……」


「そっち、任せたよ袈刃音」


 響がこちらを一瞥して、そう言い残したまま不死者のもとへ駆け出す。


 返事は要らない。その台詞だけ聞ければ、その反応さえ見せてくれたなら、これ以上の会話など今は不要。ちゃんと思い出してくれていたから。

 だから、袈刃音はただ、眼前の敵にだけ意識を注げばいい。


「ずぅぁあらァッ!」


 柄の長い刃が切り裂き、細く長い鉄塊が風すら巻き込み暴れ回る。

 飛び交うのは、不死者が断末魔に上げる潰れたような声の数々。

 凶器が肉体を断ち、打ち砕き、破壊する音。

 既に果て、歪な形で蘇った仮初の命を奪う(たび)、武器達は自らの牙で血を啜り、口元を(くれない)色に染め上げていく。


「すごい……」


 二人の戦いを目の当たりにして、千華は一人立ち尽くし言葉を漏らす。

 それ以外、何も言葉が出て来ない。


 何とかしないといけない、なんて思ってしまった自分が馬鹿みたいだ。

 袈刃音が向こうに加わっただけで一気に風向きが変わった。

 相変わらず、袈刃音はゾンビを殺すことに躊躇いがない。それに、あの剛力……。


 出会ってからずっと疑問に感じている。

 一体、袈刃音は――。


「ふむ、間に合ったようじゃな」


「あっ……」


 気が付けば、背後にクロノが立っていた。

 隣に真白の姿もある。


「クロノ様、胸が……その、苦しいです」


「これ、子どもが見るものではないぞ」


 腕に抱える時花の頭を胸元へ抱き寄せてクロノが言うが、本人は至って平静だ。

 袈刃音の知り合いという話だけれど……。

 そっと、千華は彼女を見つめた。


「少しすれば終わりそうじゃな」


 クロノの言葉の通り、「さくらい」の敷地内の騒動が終息したのは、それから少し経った頃だった。








文月です。

もっと早く投稿したかったのですが、作りかけの短編を片付けていたら思ったより時間がかかり、こうなってしまいました……。すみません。


ちなみに、短編はホラー系の作品となっております。よければご覧ください。

こちらです→短編:『闇夜。廻り道にヒトリ捕まった』


ところで、第2章のタイトル決めてないのですが。

どうしよう……。

その内考えます。


【・ご案内】

 下の★★★★★の部分は、読後、ぜひ本作の評価にお使いください。

 ブックマーク、感想などもよければ。


 作者のモチベーションとなります。


 《完了》





【次の話へ進みますか?】

【→はい/いいえ】

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