第40話目的地へ向かいますか?
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昨日行き先を伝えただけだが、真白はここまで全員を運んでくれた。
途中で仲間に加わったクロノに対しても、戸惑いはありつつ、しかし受け入れてくれようとしている。
ここまで協力的なのは、彼女が袈刃音を信頼してくれているからだろう。
ありがたい。
それはある意味、時間遡行後の世界で、自分が一番欲していたものだから。
『湖窓響。その者を協力者にすると?』
『お前も知ってるだろ、クロノ。このゲームじゃあ、時間が経てば経つほどプレイヤーが力を持つ。【ポイント】を使ってな。そうなったら、本格的に【ポイント】争奪戦が始まる。敵がゾンビだけじゃなくなるんだ』
昨日、真白と合流を果たす前。
袈刃音がクロノと交わした会話だった。
プレイヤーが力を、特に異能力を持ち始めるというのは厄介な話である。藍刃愛羅がそのいい例だ。
複数人を相手取る事態になれば、今の袈刃音でも一筋縄ではいかないかもしれない。
早いうちに対策を打っておかなければならない。
ゲームの進行が早まっているなら、なおさらだ。
――だから、
『信用できて、強い仲間が要る。響とは前々回までの世界で、毎回、一か月くらい一緒に動いてた。だから、あいつと組めれば……』
『探して、合流できたとしても』
『?』
『探して、合流できたとしても問題がある。向こうは今回、其方のことを覚えておらんじゃろ?一体どうするつもりじゃ』
『確か響は、俺の時間遡行完了に合わせて記憶が戻るよう、【ポイント】使って申請してたはずだ。もちろん、前回は会ってないから確実にそうだって言えねぇけど。でも、賭けだとしても、探す価値は十分あるだろ』
ゲームシステムへの申請内容が、袈刃音の時間遡行完了後という、単純な条件での記憶復元だったなら。
あるいは、袈刃音の記憶が戻ることが条件なら。
申請が一度でも通っていれば、賭けは勝ちだ。
たとえ袈刃音の時間溯行が何度あっても関係ない。
もう一つ不確定要素があるとすれば、遊戯神の介入だが……。
奴の能力は、世界の理を大きく改変できるほど強力だ。
反面、自ら定めたルールを歪めるのには何らかの制約が付き纏うらしい。
前回の世界で、あの性悪な神が、不自然にも【ポイント】消費なしに、袈刃音の時間遡行を補助しようとした。
今思えば、あれがきっと制約だったのだ。
遊戯神であっても、『アンデッド・ゲーム』のルールに従わなければならない。
大丈夫。響の願いが叶えられている可能性は十分にある。
「ゾンビ殺して。それで、手に入った【ポイント】使ったら、何でも願いが叶っちゃうんだよね」
再び走り出した車の中、目の前に浮かぶ黒いボードに指先で触れながら、続けて千華は呟く。
「何か、本当にゲームみたい……」と。
そのあとに聞こえた彼女の溜息は、寒気を覚えたように、長く、震えていた。
――そろそろ全員、心身共に疲労が溜まって来る頃か。
特に、精神面。
たった二十四時間ほど前に、平穏がいきなり崩れ、生き残るために自らの倫理観の破壊を迫られたのだ。精神負荷は相当なもののはず。
千華に関しては、昨日何度か死を覚悟する場面があった上に、ゾンビも直接槍で殺した。きっとしばらく、その時味わった凶器で人肉を裂く不快感を忘れられない。
さっき、軽く休憩をとったが、早いうちに落ち着ける場所でしっかり休ませた方がいい。
でないと、多分持たない。
「千華は。その、家族は……?」
「いないよ」
「え?」
「あぁ違くて、えっと……。鹿羽市にいないんだよね、私の家族。こっちの学校に通うのに、私だけ引っ越して来たから。家族は、ここの外」
彼女の気を紛らわせようとして地雷を踏んだかと思ったが、杞憂だったようだ。
袈刃音は頬を僅かに緩めた。
「そっか、このゲームに巻き込まれてないのか。じゃあ、ちょっと安心だな」
「……うん」
「こっから、味方が増えてったら、結構死ににくくなると思うしさ。そうしたら、またすぐ会えるだろ」
「――っ。そっか。うん、そうだよね袈刃音」
幾分か千華の表情が明るくなった気がした。
実際、数の力を活かせれば、『アンデット・ゲーム』での死亡率は格段に下がる。
当然の話、烏合の衆だと、数の安心感の所為で、無謀な行動や危険な行為をとってしまうようになるが。
響なら、施設にいる他の子どもや大人を制御できるだろう。
児童養護施設は、この先にある十字路を右に曲がった場所に建っている。
もうすぐ着くは、ず……だ…………
「――ッ!?」
車が置き去りにしていく窓の景色。
そこに一瞬、異常なモノが映った。
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