第36話遊戯神に話しかけますか?
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「なるほど、これは負けか」
薄暗い闇の中、遊戯神が呟いた。
彼が作り出した空間。いや、特殊領域と説明した方がより正確だろうか。
ともかく、狭いのか広いのかも分からないこの宵闇のような場所がそれだった。
眼前。腰に手を当てて、その様子を静観していた時空神・クロノは、小さく鼻を鳴らす。
「「ちぇす」と言ったな、それは。相手もおらんのに、よくやるな遊戯神」
「退屈でね。よければ、クロノ様も一戦いかがかな?」
片膝を立てて床に座したまま、遊戯神が尋ねる。
ちぐはぐなその姿は相変わらずだ。
極彩色の髪は所々跳ねており、瞳の色も左が赤、右が青と片目ずつ違う。
小柄な体を覆う衣服は、様々な服の一部を切り取って繋ぎ合わせたもの。
唯一統一されているとすれば、病人のように青白い肌の色くらいか。
「退屈……。では、下界でくだらん遊びを始めたのも、それを紛らわせるためか」
訊くと遊戯神は小さく笑みを浮かべた。
盤面の白い駒を摘まんで盤外に置く。
そうして、駒のあった位置へ、黒い駒を斜めに移動させた。
「昇格。最弱のポーンは、敵陣の最奥でキング以外のあらゆる駒に昇格できる。ルーク、ナイト、ビショップ、そして最強のクイーン。どうやら、クロノ様のクイーンはボクのキングを取ったようだ」
「駒ではない。【審判】で皆の前でも言うたであろう、貴様の不正を正したまでよ」
「そうだった気もするね。まぁ、見事にやられたことには変わりない。だから、退屈凌ぎというのは適切じゃなくなった、これはもう立派なゲームさ」
「……ふっ、愚かよな。あまり人間を舐めていると碌なことにならんぞ。今の袈刃音は、神に届くやもしれんからな」
クロノの忠告に対し、遊戯神はふてぶてしい態度を崩さない。
「【想焔】。原型は第一【守護者】の能力だったか。正直、ここまでの力を秘めているとは思っていなかった」
「神が不用意に一人の人間へ入れ込み過ぎれば、そうなるのは必然じゃ。利用されるのもまた然り」
「ふふ、入れ込んでいるのは貴女も同じだろう、クロノ様?」
「――っ!?」
遊戯神の言葉が、クロノの美麗な顔を強張らせた。
思わず息を呑む。
――こやつ。まさか、時花を知って……ッ。
どこで露見したのかは分からない。
しかし、クロノの警戒が瞬く間に高まりを見せたのは語るまでもなかった。
「そんなに怖い顔をしなくても、直接手を下そうだなんて考えていないさ。ただ、間接的になら、全くない話じゃない。だって、ボクが勝つか、クロノ様が勝つか……これはそういうゲームだから」
「貴様」
「当然、他の神から賛同を得てからだけれど。でも、彼らもそれを見てみたいんじゃないかな。それこそ、退屈凌ぎにね?」
やはり、遊戯神は好かない類の神だ。
見ての通りの腹黒さと、掴み切れない不気味さが受け付けない。
今からでも『アンデッド・ゲーム』を終わらせるよう説得できれば苦労はしないが、恐らく不可能だろう。
遊戯神は遊戯を司る神。途中でゲームを投げ出すなど考え難い。
小さく溜息を零し、クロノは決心した。
「……ふん、であれば望むところよ。貴様如き小童、捻り潰してやるわ」
「あぁ、楽しみにしているよ」
二柱の視線が虚空でぶつかり、両者不敵な笑みを向け合う。
そうして、沈黙のまま、神と神の会話は終わりを告げたのだった。
祝・10万字!
次回が一章の最終話となります。
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