第25話クラスメイトと合流しますか?
Now Loading…
全員へ視線で合図を送ると、袈刃音は旧校舎へ目掛け走り出す。後ろから千華達が追走する。
派手に動くのは危険だ。分かっている。
けれど、この状況を放置しておく方が問題だ。あの旧校舎の教室に人が、旭がいるかもしれないから。
「時花ちゃん。俺のこと、しっかり掴んでて!」
「は、はい!」
時花がこちらに目一杯しがみつく感覚を覚えながら、袈刃音は左腕でその幼い体を力強く支えて走る。空いた手で握るバールは体の側面に。
進む先にある教室の引き戸が、突然、ゾンビによって強引に開かれた。
生ける屍の魔手が室内に伸び、誰かの腕を廊下側へ引っ張っる。
それが誰だったのか、顔を見た瞬間に分かり袈刃音は驚愕した。
「――小野寺?」
意図せず、瞳に映った少女の名が、口から小さく漏れた。
だから、きっと偶然だったのだろう。不死者達の中に引きずり込まれる直前に、袈刃音は、不意に彼女と目が合った。
「退け」
次の瞬間には、小野寺舞に触れる不死者の前でバールを振り被っていた。
十数メートル以上の距離を一気に詰めたのだ。
死を迎えた存在の集団が血飛沫を撒き散らし、吹き飛んだ。
咄嗟に、解放された小野寺を教室の中へ突き飛ばす。
すかさず敵の姿を再び眼前に捉えた。
地面に転がった不死者達の中で、死を免れた者は多い。
しかし、奴らに反撃の暇は与えない。立ち上がろうとする隙をバールで狙って仕留める。
「袈刃音君!」
「中、入ってくださいッ」
短く真白に伝える。
教室へ警戒しながら入っていく彼女と千華を確認すると、袈刃音は、不死者の無力化へ意識を完全に向けた。
「申請、浄化」
数分が経過して、目に付くゾンビを全て殺し終えた頃、【ポイント】を消費して体や服についた大量の返り血を、他の汚れごと浄化した。
時花についた血なども、同様に。
「……袈刃音さん」
「終わったよ。ごめん時花ちゃん、嫌な思いさせちゃって」
「いえ、しがみつくのに必死で、目を瞑ったままだったので……。それより」
「ぁ、ぁあ、そうだった」
床へ時花を降ろし、袈刃音は、旧校舎に設けられた教室へ意識を向ける。
小野寺舞がいた。だとすれば、あの中に旭がいるかもしれない。当然、安全確認が最優先事項だけれど。
引き戸に手をかけ、緊張によって一瞬躊躇うが、軽く深呼吸して横に滑らせる。
「終わりました。真白さん、外の連中に噛まれた人いましたか?あと――」
言い切る前に、何かが、唐突に胸に飛び込んで来た。
視線を下に落とすと舞がそこにいて、袈刃音の制服を両手で縋るように掴んでいた。
「小野、寺?」
当惑する中、小柄な彼女の顔が袈刃音を見上げた。
泣いていた、嗚咽交じりに。
「か、カバネっち……ひ、ヒナっちが、ヒナっちが、攫われちゃった…………」
「…………は?」
混乱が、一気に加速した。
「へんな、変な三人組が、授業中に来て、私の所為で先生しんじゃ、死んじゃって。ヒナっちも、そいつらに連れ去られて」
「三人、組?」
「私、わたし……ともだち、なのに。怖く、て、動け、なくて、助けなきゃって、分かってたのに…………ごめん、ごめんなさぃ………………!」
言葉を詰まらせながら、小野寺は掠れた声で言った。
袈刃音は沈黙し、けれど、少しして彼女の頭に優しく左手を置いた。
「ったく、泣くことないだろ小野寺」
「ぇ?」
「その三人組に連れてかれただけなんだろ、旭は。なら死んだ訳じゃないし、何もお前の所為じゃないっての」
「で、でも……」
「いいから。だから小野寺、生きててくれてありがとな」
詳細こそ分からないが、それでも、小野寺によって一番重要な情報は得られた。
今回、時間遡行を果たしてから、ここに至るまでに起こった異常事態の全ては、十中八九、遊戯神の策略によるもので間違いないのだと。
それに、袈刃音が言った通り、小野寺舞には何の責任もない。
そう、諸悪の根源は――。
「袈刃音」
「悪い、いなかった」
千華の声に、何を言いたいのか察して、短く返事を返した。
「そっか、じゃあ」
「ぁあいや、探すのは後回し。多分学校の中にいないって分かったし、誘拐されてんなら、しばらく安全な気がする。どっちにしても、今はこっから出ないと」
室内を見渡す。自分達を含めてざっと十数人の人間がいる。
猛暑日だというのに、クーラーも効いていない熱気の籠った部屋だ。ましてや水や食料などあるはずもない。
【ポイント】を消費すれば当分の間は快適に暮らせるが、ずっとではない。
旭だって、いつその命が危うくなるか分からないのだ。
どこでもいい。この教室にいる者だけでも、可能な限り早く、安全な場所へ避難させなければならない。
【・ご案内】
本作の読後、『面白い』など感じられましたら、下の★★★★★の部分をタップかクリックして評価していただけると嬉しく思います。
ブックマーク、感想などもよければ。
作者のモチベーションとなります。
《完了》
【次の話へ進みますか?】
【→はい/いいえ】




