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第23話高校へ向かいますか?

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「何、だよ……これ…………ッ」


 高校に到着した時には、既にその惨状が敷地内に広がっていた。


 校門の柵の前から、足がもつれ転倒した女子生徒の姿が見えた。

 焦燥感に満ちた表情を浮かべつつ必死に起き上がろうとして、けれど、間に合わなかった。

 複数の不死者の手に捕まり――次の瞬間、女子生徒はゾンビ達に貪るように体を食い千切られていった。

 絶叫し、抵抗するように暴れていた少女の四肢は、しばらくすると動かなくなる。

 声も止む。

 そうしてまた、新たな不死者が、この世に生まれた。


 そんな風な光景が、眼前の至る所で繰り広げられていた。


「……ッ!」


 まるで、地獄絵図のような凄惨な景色。

 袈刃音は、絶句した。

 これまでの『アンデッド・ゲーム』の初期にも見たその場面と、今の場景(じょうけい)が、不意に重なった。

 いや、けれど、けれど、いくら何だって、この展開はあまりに早過ぎる。


「ウソ……」


 不意に、背後から小さな声が聞こえた。

 ここに来るまでに乗っていた兎祁神真白の車から、呆然とする袈刃音の様子が見え、気になったのだろう。後ろを振り返ると、近くまで来て、この惨状を目の当たりにした荒山千華がそこに立っていた。

 (いな)、彼女だけではない。真白に加え、時花までもが、眼前に広がる阿鼻叫喚の空間を直視していた。


「皆、車に隠れててください」


 数秒考えてから、袈刃音は静かにそう伝えた。


「袈刃音君は?」


「俺は……あっちに、探さないといけないのがいるので…………」


「けど、危険じゃ……」




「かもです、真白さん。でも、それでも、今行かないなら――()()()()()()()()()()()()()()()()()


 それは意図せず出た言葉なのか。

 返答の後半、少年の呟くような真情の吐露に、真白は言葉を失った。


 そんな彼女を他所に、袈刃音は高校の敷地内へ向かおうと踵を返す。

 しかし、その手を、小さな手が掴んで引っ張った。


「袈刃音さん、時花は……時花も、お留守番ですか?」


「え?えっと」


「その、クロノ様に、袈刃音さんから()()に離れるなと言われているんです」


「……こうなった時、クロノがそう言えって?」


 顔を見つめながら問うと、「はい」と静かに時花は首を縦に振った。

 返事を受け取った袈刃音は沈黙する。


 ――分かってるよ、クロノ。この子から離れるなって、俺に言いたいんだよな。でも、だからってお前……。


 本気か?

 今はここにいないクロノに、そう訊きたくなった。


「時花ちゃん。俺が今から行こうとしてる所、すっごく危ないんだ」


「でも、袈刃音さんがいれば大丈夫だと……」


「一緒にいれば、そんな簡単には死なないと俺も思う。けど、代わりに、さっきの神社での事みたいなのを何回も見なきゃいけなくなる。もしかしたら、アレよりも酷い事が起きると思う。俺も、理由がなかったら近付かない、行きたくないような場所なんだ。だから――」


「だ、大丈夫ですッ。時花は、()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()。……クロノ様が、夢で見せてくれたんです」


 伏し目がちに言う時花を見ながら、袈刃音は衝撃に目を見開く。


 自分の記憶を復元させるだけでなく、クロノは、こんな小さな女の子にも似たような行為を行ったというのか。

 どうかしている。そう感じる反面、合理的ではあると思った。


 だって、そうでなければ、ここに来るまでに時花が袈刃音に対して、あれ程協力的になるはずもなければ、あそこまでこの状況に危機感を覚えているはずもない。

 口だけの説明で、このゲームの恐ろしさを理解させるのには限界があるから。

 そして、死を直視するのに少しだけでも耐性が付けば、最低限の冷静を保っていられる。生存の確率が上がる。


 時花は、それが分かっているのだろう。


「分かった、行こう」


「はい」


 しかし、そんな二人を制止する声が上がった。


「待って!時花をあんな危ない所に連れて行くなんてダメッ。どうしてもって言うなら、私もついて行くから」


「真白さん、ついて行くって……あの中で、もし仮にはぐれたりしたら」


「だったら、この子もここで待たせたらいいじゃない。さっきから、時花が死んだとか、夢だとか話がよく分からないけど、保護者としてこの子を一緒に行かせるなんて許可出来ない」


 正論を語り、断固として自分の意思を曲げようとしない真白。袈刃音は、このままだと話は平行線を辿りそうだと感じ、内心で徐々に焦りが募っていく。

 そんな少年に思わぬ助け舟が出された。


「あ、あの、えっと、なら私も一緒に真白さんと高校の中に入ったらいい、と思うんだけど……」


「千華ちゃん?」


「話に割り込んでごめん、真白さん。でも、その方がいいかなって。私、部活の練習試合とかでたまにこっちの高校来るから道分かるし、はぐれた時の合流場所決めとけば問題解決じゃん?袈刃音も、一人で動くんじゃないなら、この中の事知ってる人多い方がいいでしょ」


「……そっか、それなら、千華が真白さんにずっとついてなきゃ駄目だけど。けど、それでいいならその方が確かに」


 こちらも動きやすい。


 無論、袈刃音が注意を払うべき対象が増える事になる。とはいえ、数の利を活かせば、ある程度の問題解決は可能か。それに、【ポイント】もある。


「構いませんか?」


 尋ねる袈刃音に、数舜迷ってから真白は意を決したように頷いた。


「うん」


 彼女の言葉を受け取って、袈刃音は後ろを振り返った。

 見据える先は高校内部。もう(じき)に、この体は恐怖と混乱が渦巻く死地へ踏み込む。






文月です。

本日の投稿はここまでとさせて頂きます。

明日も連続投稿となります。


引き続き、お楽しみくださいませ。


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 《完了》





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