第112話YOU LOSE
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「ぁ、あ……」
何時からだろう、死の気配を敏感に感じるようになったのは。
幾百、幾千の死を見送って来た。己の手を使って殺めた者もいれば、他者の悪意によって殺された者、自害した者もいた。
幾つも見てきた中で、段々と袈刃音はその者に忍び寄る「死」の匂いを察知出来るようになっていった。
「く、そ……」
感じていた。分かっていた。
恋に迫るそれが死だと理解していた。
していたのに、また何も出来ないまま目の前で失った。
「くそ、くそ、くそ、クソクソッ!クソぉ……」
ショッピングモールの柱に突き刺さった銀色の刃。
長く鋭い刀身にだらりと力なく吊り下げられた恋は、自重によって徐々に肉を裂かれ地面にずり落ちていく。
その光景を前に袈刃音は重い四肢で藻掻いた。足で体を押し出し、不可視の壁を突き破る勢いで張り付きながら拳をそこへ叩きつける。
何度も。
衰弱し切ったその体で最悪な今をどうにかしようとする。
けれど、全てが無駄だ。
生半可な力でこの檻は壊せなどしない。仮に破壊出来たとして、何が出来るのか。……何も出来はしない。
分かっている。
分かっているからもどかしいのだ、腹立たしいのだ。
「トゥラ、ヌア……トゥラヌア、出て来い。出て来い、殺してやるから出て来いよ!」
「まぁっ、「一歩も動けなくてムカつくからそっちが自分の間合いに入れ」だなんて随分と傲慢じゃなぁい?というか、ものすっごく哀れかもぉ。だって、その憎くて堪らない私に必死な顔で懇願しちゃってるんだものねぇ」
「ッ!」
柱の陰の空間が歪み、そこから現れたトゥラヌアを視界に捉えた瞬間、袈刃音の動きが止まった。
――焔を纏う、赤々と燃える怒りの焔を。
拳に、足に、体の武器となりそうな箇所全てに。
あまりの殺意に声すら出せぬまま、少年は鋭い眼光で神の【守護者】を睨み付けた。
「アハハハ、まるで獣ね。それか幼児。「仲間を殺されて僕は怒ってます」って顔で訴えてるわ。さぞ私を殺したくて堪らないでしょうね。無理だろうけど、頑張って。ほらもっと、感情のままに振る舞って!」
天使が袈刃音を嘲笑っていた。
焔がその声に呼応するように激しさを増す。
「ころ、す……」
心が、今にも壊れて熱を失いそうだった。
「殺、す」
けれど、今はこの悪辣な神の【守護者】を殺さなければ……。
「殺す」
何もかもを失って、それでも、怒りと朝比奈旭という最後の希望だけが袈刃音の心を生かし続けていたから。
それだけがあればいい。それだけは守り抜く。
だから戦う事を止めてはいけない。
立ち止まるな、立ち止まりさえしなければ、まだ袈刃音は――
「おれは、お前を」
「そう言うと思って、殺してあげておいたわ」
「……ぇ?」
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