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108/113

第108話辿り着きますか?

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 ――走る。

 叩き付けるような雨の中、どれが雨音でどれが水溜まりを踏み締める音なのかも分からなくなる程に。


 ――走った。

 びしょ濡れの服と雨が体温を奪おうとも。

 傷口が痛みに悲鳴を上げ、血が流れ続けようとも。


 ――駆けた。

 息が乱れ、鎧でも身に着けたように重い体に鞭打って。

 恋を抱く片腕に力を籠め。

 視界の大部分が雨で塞がれる中、意識が朦朧とし始めて来ているのを分かりつつ。

 それでも、袈刃音は駆け続けた。


「――い!」


 どこへ向かっているのだろう。

 そもそも、この景色の先には何が待ち受けているのだろうか。

 思考する余裕はなかった。

 ただ、それでも遠くへ。どこか安全な場所を探していた。


「おい!もういいッ、放せ!おい、聞いてんのかよお前!?おい――こ、のォ!」


 恋が強引に袈刃音の腕を引き剝がすように暴れた。

 落とすつもりはなかった、中学生が全力を振り絞って抵抗したぐらいでこの手が緩むなどいつもなら有り得ない事だった。

 けれど、重傷と失血によって疲弊した体が恋を放してしまった。


 挙句、足を滑らせた。


 濡れた地面に派手に転がった袈刃音には、辺りが妙に静かに感じられた。

 打ち付ける雨は(うるさ)いはずなのに、それすらもどこか遠くにあるもののようだった。


「……」


 立たなければいけない。だが、体に上手く力が入らない。


「くっ、この……!」


 そんな袈刃音の腕を引っ張り恋が起き上がらせようとする。

 袈刃音は僅かに浮いた自分の上体を持ち上げ、そのまま立ち上がった。

 酷く頼りない動きだ。ふらふらしていて、ゆっくりで、それでも恋に引っ張られつつ前に進んだ。


「ほら、もう少しだ。ここ。そう、ここでいい。座れ」


 どれだけ歩いただろう。きっとそこまで遠い距離を歩いてはいないはずだが、正確な道のりをあまり覚えていない。

 恋に誘導されるまま袈刃音は床に座り込み、おもむろに顔を上げた。


「……っ」


 そこは見覚えのある場所だった。

 例えば、そう、本棚と本棚の間から少し遠くへ意識を向けると見える読書スペース。

 その前に二段に分けて張られた背の高い硝子の壁。

 そして、二段目の硝子は窓になっており、そこへ飛び移る事さえ出来れば、外からこちらへ侵入出来るのを袈刃音は知っていた。


 ――ショッピング、モール……?










どうも、文月です。

今週も少ない文字数でしたが、まぁ、書けるところまで書いて出そうの精神でしたので今回はここまで。

次回をお楽しみに。


なお、来週の投稿はございません。短編を書きたいなぁ、と思いまして。

その次の週には109話目を出せるようにいたしますので、少々お待ちくださいませ。


【・ご案内】

 下の★★★★★の部分は、読後、ぜひ本作の評価にお使いください。

 ブックマーク、感想などもよければ。


 作者のモチベーションとなります。


 《完了》





【次の話へ進みますか?】

【→はい/いいえ】

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