第107話どう対処しますか?
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「……ぅ、ぐ」
袈刃音を襲ったプレイヤーの男は目を見開き、腹を手で庇いながら後退る。
だが、耐え切れなくなりその場に蹲った。
「ぇぐ、カ――ハッ……」
ボトボトと無遠慮に零れ落ちる血が地面に赤い水溜まりを広げていく。
熱、熱……体が高熱と勘違いする程の強烈な痛み。
だが、それは男のものではなかった。
「くッ……」
歯を食い縛り、袈刃音は左の二の腕をぐっと掴んだ。
血管が圧迫され、流れ出る血液の量が増える。
掴む腕の肘から先は完全に失われていた。
「ふっ。愚かな、自分を殺そうとする人間を庇って重傷ではないですか。――おっと、さらに増えたのですよ?守る対象とやらが」
シャーエイドロードの声に視線を前に持ち上げると、今の騒ぎに呼び寄せられたプレイヤー達が続々とこちらへ集まりつつあった。
非常階段の踊り場につけられた巨大な傷に慌てて後退る者、袈刃音を見つけるなり武器を構え襲い掛かろうとする者、躊躇って動けない者。
それぞれが互いの動きを阻害し、乱入者達は出入口で立ち往生している。
袈刃音の焦燥が加速する。
どうする?シャーエイドロードに攻撃を仕掛けようとすれば、その瞬間にこの場の誰かが狙われる。
かと言って、このまま何もしなければ奴の方から攻めて来る。
こちらへ殺意を向けて来るプレイヤーの対処も余儀なくされる。
自分一人ならまだしも、直ぐ近くに恋がいる。
守り切れないッ……。
「――申請、【煙幕】!」
「!?」
隣から声が聞こえたかと思うと、次の瞬間、白い煙が足元から勢い良く吹き出し袈刃音を包み込んだ。
声は葉山恋のものだった。
驚きに体が縛られていたのも束の間、恋が袈刃音の服を引っ張り叫んだ。
「今だ、ぶっ放せ!」
考えるより先に体が動いた。
【想焔】の蒼い輝きを右手に灯し、その勢いを一気に高める。
袈刃音を中心として、煙幕を飲み込みながら周囲へ広がった焔の波。
沈静のイメージを糧に燃えるそれは、何者をも燃やさぬこけおどし。
だが、
「う、うわぁ!」
「火だ、逃げろー!」
冷たい焔に驚いたプレイヤー達はこの場から一斉に退避。
シャーエイドロードも剣を巨大化させ、防御しているために身動きが取れない。
もっとも、それ故に気付かれるのは早かった。
「これは……ブラフ?――っ、しまったのです!」
焔が霧散した直後、湿気を伴った冷たい風が踊り場に吹く。
右の壁を見ると、周囲の所々に黒い焔を残して巨大な穴が開いていた。
シャーエイドロードの視界に袈刃音達の姿はない。
「逃がしましたか。ですが……」
床には、大量の血が零れ落ちていた。
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《完了》
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