第101話見つけますか?
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空の色が薄い鈍色に染まりつつあった。
もう直に雨が降るのだと思う。
強い風も。所によっては雷も落ちそうだ。
ゴロゴロと、曇天が獣のような唸り声を上げている。
「あぁ、もう見つかっちゃった。すごぉい。どうして私がここにいるって分かったの、袈刃音君?」
袈刃音が嗣斗を両腕に抱えながら日通戯通りの道路へ足を踏み入れると、そこに愛羅の姿が見えた。
「目の前から突然消えたから、最初は向かいの建物に逃げ込んだのかと思った。けど、それにしては距離があり過ぎる」
「【ポイント】を使って瞬間移動したかもしれないよ?」
「大量の【ポイント】が要る。見つけて欲しがってる人がわざわざやらないだろ」
「へぇ、それで?」
「消えた訳じゃない。けど、姿がどこにも見当たらない。隠れたのは直ぐに分かった。それで思い出した、そういえば不自然過ぎるくらいゾンビが固まってる場所が一か所あったなって」
腕の中でぐったりと動かなくなった嗣斗を一瞥し、愛羅を凍てついた瞳で睨む。
「無駄話は、もういいだろ」
「私はそうでもないよぉ?」
袈刃音は口の中で苛立ちを嚙み砕く。
そうでもしなければ、今直ぐにでも彼女の首を捩じ切ってしまいそうだった。
「……何で殺した」
「言わなかったかな?」
「裏切ったのも同じ理由か?見て欲しかったからって、それだけで」
「うん、だって……それが私の全部だもん」
愛羅は至って静かだった。
静かで、不気味で、どこか諦めたように微笑んでいた。
「笑える状況じゃないだろ。もう終わりだ、藍刃さん。お仕舞いなんだ」
「ううん、終わらないよ?」
「?」
「終わるけど、思い通りにいかなかったけど。でも。終わらないの。そう、ここから……ここからなの私達」
何か様子がおかしかった。
「ホントはね?こんなの、私望んでなかったの。嫌だけど、やりたくなんかなかったけど、でも仕方ないよね?だって、袈刃音君が悪いんだもん、旭ちゃんばっかり見るから。これだけ殺しても袈刃音君がそんなだから悪いんだよ?」
どうしてそう思ったのか理由は定かではない。
だが袈刃音は、少女と自分との間で言いようのない緊張が高まりつつあるのを確かに感じた。
「――だから、もういいって思ったんだぁ。全部」
次の瞬間、愛羅は右手にナイフを持って袈刃音へ突進して来た。
少年は逃げずに、向かって来る刃を回し蹴りで弾き飛ばした。
彼女がこの程度で怯むとは思っていない。
案の定、逆の手に隠し持っていたナイフをこちらへ突き出した。
大きく後ろへ一歩跳び嗣斗を寝かせると、袈刃音は襲い掛かろうとする愛羅の腕を右手で掴んだ。
そうしてナイフを奪い、首に突き付ける。
が、何故か愛羅は――笑った。
「藍刃、さん……?――ッ!?」
ポタリ、ポタリと少女から赤い命の雫が零れ落ちてアスファルトに染みていく。
袈刃音のナイフ、ではない。
気が付けば、影のような靄を纏った鋭い刃が彼女の胸を貫いていた。
「アハ、ホントだ。言われた通りに、したら……袈刃音君が、見てくれた。見てくれたぁ。あぁ、やっと、やっと……――」
そこで言葉は途切れ、愛羅は袈刃音の方へ体重を預けるようにして倒れた。
「あ、藍刃さん!申請、治癒。申請、申請ッ……クソッ」
赤い温もりが彼女から急速に失われつつあった。
傷口からドクドクと溢れ出る大量の血は少女の服を深紅に染めていく。
愛羅を受け止めた袈刃音は、咄嗟に【ポイント】を消費して治療を何度も試みた。
けれど、傷が塞がらない。
このままだと愛羅は……。
「無駄ですよ、もう手遅れなのです。彼女は」
文月です。
相変わらず遅い投稿ペースですが、何とか2月までにもう1話を捩じ込めました。
ストーリーも中々カオスな展開になって来ていますね。
こうなると続きが気になるというか、早く見たくなるというか、どうなるのか楽しみでございます。もちろん、大まかな流れは決まっています。あとは形にするだけ。
主人公がどうなって、この物語がどう進んでいくのか、文月はどう収拾をつけるのか、次回もまたお楽しみにして頂ければと思います!
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