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元義兄候補、現婚約者と

レックスとアイリーンの婚約が決まった日。


婚約を言い渡されたレックスはアイリーンにあまりにも不義理だと反論するが、父であるオーガストにレックスの女性不信に該当しない女性はアイリーンだけだと言われ、反論できなくなる。

レックスはならばせめて決定権は彼女にとアイリーンに婚約の最終決定権を委ねることを求めた──




 レックスとアイリーンの婚約が決まった日の事。


「レックス、気持ちはわかるがやり過ぎだ。お前も当分夜会で好奇の目にさらされるぞ」

 レックスの父オーガスト・ウィルコックスは息子を窘めるように言った。

「では、私に我慢しろと?」

「そう言っているのではない、やり方を考えろと。例えば私達を呼び出して家同士の話し合いの中で見せるとか、もっとあっただろう」

「……父上も割とえげつない事をおっしゃいますね」

「まぁな。昔知人の公爵令嬢がそれをやって大惨事になったらしい」

「……」

 レックスは、父親が自分の味方であるとはっきりすると息を吐いた。


「正直、女性不信になりました。だが、嫡男である私は結婚しなくてはならなくなったと言いましたよね、何故です?」


 レックスの言葉にオーガストは渋い顔をした。

「最近弟の姿を見ないだろう」

「ええ」

「家から追い出したからだ」

「……はい?」

 レックスは父であるオーガストの言葉に耳を疑う。

「アルフは、浮気と賭け事で借金という馬鹿をしたから追放したのだ」

「はぁ?! では、アイリーンとの婚約は?!」

「解消だ、あんな馬鹿とあの可愛いアイリーンを結婚させる気にはなれん」

「……ええ、確かに」

 オーガストの意見にレックスは同意する。



 アイリーンはレックスから見ても、可愛い妹のような存在だった。

 幼い頃は弟のやんちゃを窘める事もあり、しっかりしていたが──

 このような事態になろうとは想像していなかったのだ。



「そこでだ」

「なにがです?」

「アイリーンの父親とも話したが、レックス。お前とアイリーンを婚約させる」

「……」


「はぁ?!」


 一瞬レックスの思考が止まった。

「父上、何を馬鹿なことを言ってるのですか?! そんな不義理をした我が家にアイリーンを迎え入れる等彼女にとって侮辱行為に等しい!」

「気持ちはわかる。だが女性不信になったお前が不信にならずに接することができるのはおそらくアイリーン位だろう?」

「……」

 オーガストの言葉にレックスは黙り込む。


 事実だからだ。


 アイリーンなら、浮気もせず、自分と添い遂げてくれるだろう。

 そういう感情はあった。


 けれども──


「アイリーンは、それを快く受け入れてくれるでしょうか?」

「父親のアシュトン曰く『大丈夫だろう』との事だ」

「何故です?」

「お前が夜会で婚約破棄した現場を彼女は見ている」

「!!」

「彼女は、お前が傷ついているのではないかと心配しているそうだ。そんな子が拒否をするかと聞かれたらそうではなかろう」

「……」

 レックスはそれでも渋い顔のままだった。

「お前が良いなら、向こうはそれでいいと言っていた。それに私も、跡継ぎが結婚しないのは不味いのでな」

 オーガストの言葉に、レックスはため息をついた。

「わかりました。アイリーンなら、私も良いです。ただ、彼女がいやだと言ったら婚約は無しでお願いします。私は自分同様傷ついているアイリーンを傷つけたくないのです」

「うむ、わかった」

 部屋から出て行く父の後ろ姿を、レックスは恨めしそうに見つめた。





「──という事だ、この婚約の最終決定権はお前にある」

「どうしてそう重いものを私に軽い気持ちで投げるのですか」

 私はお父様の言葉に呆れた様に言いました。

「で、どうする。婚約を受け入れるか?」

 私はしばらく思案します。


 レックス様の女性不信はおそらくそうそう簡単に治らないでしょう。

 それならば、平気だと言っている私と婚約した方がこちらにも向こうにも益がある。


 浮気をなさらない方なら大歓迎だ。


「……わかりました、婚約の方を進めてください。お父様」

「ありがとう、アイリーン」

 お父様はそう言うと、部屋を出て行きました。

 レックス様のお父様とお話なさっているのでしょう。



 数日後、ウィルコックス侯爵様の家に招かれました。

 すると、レックス様とレックス様のお父様であるウィルコックス侯爵様が出迎えてくれました。

「アイリーンよく来てくれた」

「いいえ、お招きくださりありがとうございます」

 私は挨拶を返しました。


 晴れた日なので、庭でお茶会をするとなりましたが、ウィルコックス侯爵様は用事ができたと、どこかに行ってしまいました。


 完全に、二人きりになるように仕組まれました。


「……」

「……」

 無言の時間というのは痛く重いです。

「……アイリーン」

「はい、何でしょうかレックス様」

「……弟がすまなかった」

「レックス様が謝る事ではありませんわ、それにその件の謝罪はすでにオーガストおじ様からもらっていますし……」

「いや、だが……」

 レックス様は沈痛な面持ちで私を見ます。

「傷ついてないと言えば嘘になります、ですがお父様やオーガストおじ様のおかげで私は男性不信になることはありませんでした。ですが、レックス様。貴方は違うはずです」

「……すまない」

「謝る事はありません、私にとって喜ばしかったのは、レックス様の女性不信に私が入っていなかった事です。それだけで私には十分すぎる婚約の理由です」

「……アイリーン」

「レックス様、私貴方の事を兄のように慕っております、それをすぐ変えることは難しいかもしれません。貴方が私の事を妹のように可愛がってくださったように。ですから、ゆっくりと前を向きましょう?」

 そう、私が言うと、レックス様は静かに頷きました。



 婚約者に裏切られた者同士。

 でも、前を向かなければいつまでも裏切りに負けたままです。

 私はそれは嫌なのです。






個人的にさくさくとした話なので読みやすくなってるでしょうか?

それならば幸いです。

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