✒ 屁はこいない / 作戦会議 1
エトワール
「 ──一寸、ワタクシの話を聞いてますの、コルネット! 」
コルネット
「 はいはい…。
ちゃんと聞いてるわよ、エトワール…。
卒業パーティーの会場で屁をした事を笑われて、怒ってるんでしょ? 」
エトワール
「 ち・が・い・ま・す・わ!!
全然、ワタクシの話を聞いてませんわね!!
ワタクシは絶対に屁なんて盛大にこいてませんわよ!! 」
コルネット
「 じゃあ、すかしっぺ? 」
エトワール
「 す…すかしっぺもしてませんわよ!!
ダリエラン子爵令嬢と仲間達にはめられたんですわよ!! 」
コルネット
「 あのね、エトワール…。
人間は生きてる限り屁をするのよ。
王様だって、王妃様だって、アンタを断罪して婚約破棄を宣言したパープー王子殿下だって、アンタに恥を掻かせて婚約者の座から引き摺り下ろした屑女のダリエラン子爵令嬢だって屁をするのよ。
アタシだってするわ。
勿論、アンタもね。
屁は健康のバロメーターなのよ。
屁をする事は悪ではないわ。
こく時は、場合を考えないといけないけどね 」
エトワール
「 …………何が言いたいんですの? 」
コルネット
「 エトワールは生き物として自然な行為をした──って事よ。
こく場所を間違えただけでね 」
エトワール
「 こいてない──って言ってますわ!! 」
コルネット
「 …………屁コキ令嬢ねぇ。
それでハイツォクス王子殿下との婚約が破棄してもらえたんでしょ?
名誉の称号じゃないのよ 」
エトワール
「 何処がですのよ!
不名誉な称号にほかなりませんわよ!!
もっと真面目にワタクシの相談に乗ってくださいな! 」
コルネット
「 相談ったて……。
宿屋の看板娘のアタシに何が出来るって言うのよ…。
エトワールの愚痴を聞くぐらいなら出来るけど、協力は出来ないわよ 」
エトワール
「 コルネット!
貴女はワタクシの幼馴染み兼親友でしょう!
もっとワタクシの悩みに対して親身になってくれても良くなくて!
貴女の親友が大勢の紳士,淑女の前で侮辱されてますのよ! 」
コルネット
「 アンタねぇ……。
前はアタシの事 “ ライバル ” って言ってなかったぁ? 」
エトワール
「 そ…そうだったかしら??
そんな事…ありましたかしら??
ほっほっほっ… 」
コルネット
「 たく……調子良いんだから… 」
アタシはコルネット・ムスタキン。
《 宿屋街 》にある宿屋・ムスタキン亭で看板娘をしているの。
アタシに愚痴を吐いてる貴族令嬢様は、エトワール・ログトゥクインって言うアタシとは腐れ縁ってだけの幼馴染み。
何故かアタシを勝手にライバル視していて、かなり迷惑も被っている。
何かあると平民に変装して我が家にやって来ては愚痴り散らすんだから。
他に話す相手は居ないのかしらね?
貴族令嬢なんだから、貴族令嬢らしく、貴族令嬢とつるんでたらいいのに……。
はぁ〜〜〜……。
?
「 あらぁ、エトワールちゃん。
いらっしゃい♥
何時もコルネットと仲良くしてくれて有り難う 」
エトワール
「 シェリナおばさま。
御機嫌ようですわ 」
シェリナ
「 ふふふ。
御機嫌よう、エトワールちゃん。
良かったらこれ食べてね。
新メニューを考案してみたの♥ 」
エトワール
「 有り難う御座いますわ。
いただきますわ 」
シェリナ
「 ゆっくりしていってね。
エトワールちゃんなら何時までも居てくれても構わないわよ 」
コルネット
「 もぅ〜〜〜、お母さん!
あんまりエトワールを甘やすような事、言わないでよ!
本当に居座っちゃうでしょ! 」
シェリナ
「 いいじゃないの。
お友達なんだから。
この辺にはコルネットと歳の近い子なんて居ないし。
エトワールちゃんと遊びに行って来ても良いのよ 」
コルネット
「 行かないわよ〜〜〜 」
このエトワールに甘々な金髪碧眼の美人さんは、なんとアタシの実母なの!
お母さんは結婚する前、大公令嬢だったの!
何で《 宿屋街 》で宿屋の息子をしている実父と出逢ったのかは知らないけど、大公令嬢だったお母さんは宿屋の1人息子のお父さんと恋愛結婚して、今や宿屋・ムスタキン亭の女将をしてるのよねぇ…。
どうして大公令嬢から平民になる事を決めたのか聞いても「 ひ・み・つ♥ 」って言われて教えてもらえないの。
まぁ、お母さんは宿屋の女将が楽しいのか生き生きしてるから、お母さん的には最良な選択だったのかも知れないわね。
宿屋を継ぐのはアタシじゃなくて兄さんだから、アタシは別に看板娘をしなくて良いんだけど、好きだから看板娘をしてるの。
アタシ…、例え義理でもエトワールと姉妹になるなんて絶っ対に嫌なんだから!!
──そうなの、エトワールがしょっちゅうアタシの家にやって来るのには理由があるの。
それは────。
エトワール
「 ところでコルネット、アルフレド様は居ないのかしら? 」
コルネット
「 兄さんなら、ゼルさんに≪ 城下町 ≫の案内してるから居ないわ。
当分、帰って来ないわよ 」
エトワール
「 なんだ……居ませんの……。
傷付いたワタクシの心をアルフレド様の笑顔で癒そうと思ってましたのに… 」
コルネット
「 残念だったわね。
日が暮れるまで帰って来ないと思うから、エトワールも屋敷にもう帰ったら? 」
エトワール
「 貴女ねぇ、そんなにワタクシに居てほしくありませんの? 」
コルネット
「 なんだ、ちゃんと分かってるじゃないの。
少しだけ見直したわよ、エトワール! 」
エトワール
「 どういう意味ですの、それ……。
それより、ゼルさんって何方ですの?
アルフレド様のお友達ですの? 」
コルネット
「 お客さんよ。
我が家に宿泊してくれてるの 」
エトワール
「 あら…旅人さんですの?
この時期に旅人さんが来るなんて珍しいですわねぇ 」
コルネット
「 そうでもないわよ。
ゼルさんは大陸中を旅している吟遊詩人なんですって 」
エトワール
「 吟遊詩人…ですの?!
…………それなら珍しくありませんわね。
王様と王妃様は吟遊詩人がお好きですから城へ招待してますもの 」