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 オールド・グレメント

平手打ちって痛いよね


 意識が戻った時、

 目の前に見えたのは若いシスターらしき人だった。


 シスターは泣きながら目が覚めた俺を抱きしめてく

 れた。


 ちょ、良い匂いがするから困るんだけど!


 シスターが何を言っているのか

 全くわからない。


 あれ?何でだ??この身体に転生できたから勝手に

 記憶が頭にインストールされるはずじゃ...


 シスターの顔を見ながら、

 考え込んで黙っていると


    ゛パチィーーん゛


 いい平手打ちが俺の顔に注がれた。


 まって、

 いきなりだけどめっちゃ痛い!!


 「痛い...」


 「痛いのは当然です!

  もう二度と、私を悲しませないと誓ってくださ

  い」


 おっ、

 やっとシスターが何を言ってるのか分かったぞ!

 まさか叩かれて記憶がはっきりするとは...


 叩かれた頬を摩っていると

 シスターはまた泣きながら俺を抱きしめてこう言っ

 た。


   「貴方は、一人じゃないんです」


 その言葉の意味を

 俺は理解する前に

 意識がまた飛ぶってわかった


 あぁ、多分これあれだ、

 前の宿主のデータを読み込まされてる...





☆☆☆☆


 それから三日ほど経った。


 記憶がいっぺんに頭に流れ込んできて

 その影響であれから半日寝ていた。


 そのおかげでこの身体の元持ち主の素性や生いた

 ち、

 何故貴族の子供がここにいるのか

 その説明がてらおさらいする。


 今の俺の名前は


    オールド・グレメント


 元々、グレメント家当主の妾の子で

 グレメント家当主と本妻の子の間には子宝に恵まれ

 なかった


 そのおかげで

 オールドは妾の子でありながら長男として厳しい教

 育に身を費やすことになる


 が、オールドが当時6歳の時

 本妻との間に子供が産まれる


 オールドはその時まで自分はこの家を継ぐ為にいる

 と

 妹ができてもそれは変わらないと

 思っていた


 半年後、妾、オールドの母親が謎の死を遂げる


 だがオールドは見ていた


 オールドの母親が食べる料理に

 香辛料のようなモノをスープの中に混ぜる本妻の姿

 を調理場で目撃していたのだ


 その件を母親が亡くなった日に問い詰めたところ


 何故か泣かれ

 当主に泣きつき


 「この子は私を犯人に仕立て上げ、私と貴方の子供

  を追い出そうとしてる!」


 と、逆にオールドは悪者扱いをされた


 その日を境に

 オールドは今まで辛く厳しかった英才教育とやらを

 放棄され、罰として屋敷から出ることのできないよ

 うに命じられた。



 一年、

 オールドは屋敷の中で半監禁生活を送っていた


 食事は出てくるが、

 外で運動をする事も許されず、

 幼いながらもぶくぶくと太っていった


 そんなある日、

 当主が約一年ぶりにオールドの前に現れた


「お前のような性悪な豚はグレメント家の恥だ。

 本来なら家から出す事を躊躇うのだが、

 お前さえよければここから出してやろう。

 そのかわり、お前は二度とグレメントの名を語るこ

 とは許さぬが、どうだ?」


 つまり、本妻に何かを囁かれ、

 オールドと一緒に居たくない、

 娘にあんな兄が居るなんて言えない

 などと言いくるめ、

 オールドを追い出そうとしているのだろう。


 当時7歳であったオールドであるが

 全てを理解し、

 自身の母親の仇かもしれない女が居る屋敷で暮らし

 たくない

 嵌められてしまい、

 母親を殺された事により

 当初は怒りに満ちていたが

 それより自分の言葉より、

 本妻の言葉を信じて

 オールドを追い出す事に賛成している当主(父)の

 言葉が


      辛かった


 何故、母親が死んだ時

 ちゃんとした死因を確かめようとせず

 そのまま火葬したのか

 その時にオールドを立ち合わせず

 部屋に閉じ込めていたのか


 そして今、オールドを追い出そうとしている当主


 そこでオールドの心は折れた。


 そこからの記憶は曖昧で、

 気づけば簡素な荷物を持たされ馬車に乗っていた


 どうやらオールドは当主の言葉に

 首を縦に振っていたらしい


 約半月、馬車に揺られ途中で村や街を横断しながら

 オールドは目的地に着いた。


 そこは町外れの、教会兼孤児院。


 オールドは孤児院に預けられる形で屋敷から追い出

 されたってわけだ。


 今までろくに屋敷から出させてもらえず、

 歳の近い子と友達も居ない人生を送ってきたオール

 ド。


 孤児院の子供達とも打ち解けれるはずもなく、

 ただただ時間だけが過ぎていき、

 そして心が折れてから元に戻る事なく、

 あてがわれた部屋に篭りきりになり、

 やがて

 自ら死を望んでしまっていた。


 それで魂自体が死を受け入れた為、

 俺の出番になったとゆう事らしい。


 らしいってのは神様が説明を省いたからであって、

 俺の憶測に過ぎないからだ。


 「オールド...お前が心が折れたのもわかるよ」


 今は俺がオールドの記憶を受け継いでいるが、

 それは俺の前世+オールドの記憶なので、

 このような状況でも冷静でいられるのは

 間違いなく前世の記憶のおかげとも言える。


 俺はベッドの上で両手を合わせてオールドの冥福を

 祈った。



 来世ではオールドが良い人生が送れますように


 そして、

 俺の第二の人生、

 オールドの無念の気持ちを引き継ぎ、

 上手く生きれるようにと。

 

 


 

なかなか前向いて進まねぇよい

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