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最低の勇者  作者: 本加本品
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最強はそこに立つ

「ふざけるな!」

怒りに任せて手にあった短剣を投げ飛ばした、

カラカラと音を立てて神殿の石畳を転がっていく、


「必要なことなんだコノエ、君が『最高の勇者』になるために」


目の前の騎士、『最強の勇者』ユウが優しく、なだめるように

話してくる。


「コノエ様」


後ろから泣き出しそうな声で名前を呼ぶのは聖女のナナだ、


「私は、……ダ、ダイジョウブ、です。」


「な、何が、大丈夫なんだ?」


「あ、あれ?ダイジョウブって間違っちゃい…ました?

全然平気って意味なんですよね?」


それは俺がこの神殿までにくる旅の中で教えた言葉だ、だけど


「だから、何が、平気なんだ?」


嫌な予感がする、鼓動かうるさいくらい響いている。


「知ってました、全部、だから、ダイジョウブなんです。」


「全部…?」


情けないほど声が震える、

ユウが歩み寄って語り出す、


「『聖女』は君を『勇者』にするための試練なんだよ」


「しれん?」


「『勇者』には、試練と実績そして犠牲が必要だ、見てきただろう?この世界の魔法を、」


そうだ、この世界には魔法がある、国に人々に、尽きることの無いエネルギーとして、生活に、あらゆる事柄に溢れてる、

魔力の源、魔石を原料として、


「全ての魔法の源、魔石、 それは、『聖女』の血だ。」


は?


「この湖の神殿、この水は自然の魔力が豊富に含まれてる。

ただ、それだけでは役に立たない、人の精神が干渉できず、

魔法が発動しない、だから、その体に魔力を宿した『聖女』の血、そして強大な精神力が溶け合うことで、この湖が全て魔石になる。」


「まって、まってくれ!」


理解か追い付かない、魔石が…血?

王都の、町の、皆が、笑顔で、使ってた、笑顔にしてた、あれが?

『聖女』の?『聖女』達の?

おぞましい吐き気が喉を焼く、すがるように、否定してくれと懇願するようにナナを見る。


「ダイジョウブ、なんですよ!全部、覚悟できたんです。

貴方の、コノエ様のおかげで、」


ナナの笑顔が優しい、涙混じりの笑顔が

全てを肯定しているのがわかった。


いや、俺の……?

まってくれ、それじゃ、俺が、俺が!


「コノエ様が、勇者に、『最高の勇者』になりたいと、おっしっゃた時、目が、笑顔が輝いていたんです。

貴方のようなに綺麗な人の、力になれるなら、私、この身も、」


「だから!! なんで、俺が、おまえを!!」


「それが君の『勇者』としての実績になる。大量の資源を得た功績、世界全ての人々を救うに値する。」


「そして、『聖女』は君の持つその剣でしか殺せないからだ。」


いつの間にか、さっき投げた短剣が、腰の鞘に収まっている。


「その剣で『聖女』を殺した時、大量の血と魂が、それを聖剣にする。

そうすれば、君も、『勇者』になれる。」


腰の剣が、まるで呪いのように感じだす。

おぞましいものの一端を身につけているような、

気持ち悪さが全身に這いずり廻る。


「お願いします、コノエ様、私は皆様の、そして、貴方の力になりたいのです。」


「止めろ!止めてくれ、」


「コノエ様、……」


「俺は、ただ、勇者に、勇者の力が、欲しくて…」


「得られるとも、力も、名誉も、誰もが君を、『勇者』と認めるとも。」


「お前は黙っていてくれ!ユウ!!」


「いや、黙れない、『勇者』として話さなければならない。

君と同じ葛藤を抱いた者として。」


はっとした。

そうだ、こいつは、いや、こいつらは、

やってるんだ、勇者に、勇者になったやつは皆。

『聖女』を。同じように。


「コノエ、この世界で、一番の悪は、倒すべき敵は、何だと思う? 人を殺す様な悪人か? 強欲な権力者か? 悪政振り撒く無能な役人か?」


「何?」


「違う、そんな些細な悪は元の巨悪を殺せば消える。一番の悪は、……貧困だ。」

「富も、力も、何もかも、<減る、尽きる、無くなる。>此が悪だ。」

「見て、この巨大な湖を、此れが全てエネルギーになる。これほど素晴らしいことはない。拳程の魔石でも町一つのエネルギーを100年以上は賄える。」

「この湖全ての魔石なら、この国、それどころかこの大陸50年分は支える事が出来る。」

「全ての貧困を、不幸を、不運を、打ち消す、この世の全てを満たし尽くし、潤い尽くして、あらゆる悪を、悪心こそを殺し尽くす。」

「それが、それこそが僕の、最強の正義だ。」


「そんな、…」


「そうとも、」


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