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第一章(きっと彼等の旅はここから始まった)Ⅲ

なかなか、時間が安定しなくてすいません。

女性が駆け込んでくると言う珍事の出来事ではあるのだが、さすが冒険者ギルドと言った所だ。

少しの間、静まるだけで、すぐに平常道理の元の賑やかさを取り戻していた。


神経が図太い奴が多いことだ。

少し彼等に呆れているとアリスが声を掛けてくる。


「何だか、呼ばれてるわね。モテる男は辛いわね」


彼女の態度は投げやりで、気のせいだろうが、拗ねている子供のようにも見える。


「モテるも何も、何処の誰かは知らないのだが」

「あの制服は、魔法ギルドの職員よ」


黒を基調とした制服が魔法ギルドの制服なんてはじめて知った。

冒険者ギルドの薄緑色で普段着のような制服とは全然違うのだな。

かっちりしていて軍人が着ている衣装のようにも見える。


そんな事を考えていると一人の冒険者が彼女の手を掴んだ。


「おい、ねぇちゃん。一緒に飲もうや」


そう言い、彼女の手を引いている。

面倒な事に巻き込まれた気がする。


こんな場で銀色の鎧を着込んでいる男だ、恐らくだがプライドが高い。

そして、無駄にプライドが高い冒険者は面倒を起こす奴が多いのだ。

おそらく、こいつも同類だろう。


「ちょっと、面倒になる前に片付けてくる」

「はいはい。さっさと行ってらっしゃい」


駆け出そうとした時だった。


「やめてください」


そう彼女が男の手を振り払うようにすると、男がその勢いに振り回され窓の外まで吹き飛んでいった。

訳が解らなかった。

あんな重そうな鎧を着た男を彼女は力いっぱい投げ飛ばしたのだ。

周りも唖然として、ギルドが再び静かになる。


が、ここは荒くれ者が揃う冒険者ギルド。

すぐに、『こりゃ傑作だ』と周りの冒険者は大爆笑し始めた。


これは、やばい。

そう思い慌てて彼女に向かって駆け出す。


皆が皆、笑ってくれるわけではない。

面白くない奴も確実に居る。

それは、吹っ飛ばされた彼等の仲間達だ。


「やりやがったなこのやろう」


案の定だが、一緒に飲んでいた彼の仲間は立ち上がり、彼女に手を上げようとする。

その間に間一髪で割り込み男の手を掴む。


男は驚いたように目を見開いた。

そして、殴られそうになり怯えていた彼女は俺の後ろへと隠れたようだ。


「おい。そこまでにしとけ」

「なんだよ。テメーも見てただろう」


男はガンを付けて来る。


「あぁ見てたぞ。彼女に絡んだ末に、返り討ちにあった男だろう」

「………」


正論に言葉が出ないようだ。


「それに、寧ろ感謝して欲しいね。こいつは、あんな重そうな鎧を着た男をぶん投げた怪力女だぞ」


そう言うと、後ろからグイグイと服を引かれる。

何事かと思いそちらを見ると、隠れていた彼女が膨れっ面で緋色の瞳を抗議ありげに此方に向ける。

事実だから、訂正はしない。


「そんな得体の知れない奴に絡むのか。お前は」

「くっ………」


男は力量差を感じたのだろう悔しそうに俯く。


「解ったなら、飛ばされた仲間を助けに行くといい」

「助かった」


男はそう言いギルドを出て行く。


「助かりましたが、とても失礼だと思います」

「そうかもな。だが事実は事実だ」


俺がそう言うと悔しそうにする彼女。


「で、俺に何か用が有ったのではないか」

「あなたが、ヒューイ殿ですか」

「そうだ」

「こんな失礼な人だと思いませんでした」


行き成り、貶され出した。

しかも、周りの冒険者達は『痴話喧嘩か』『もっとやれ』とはやし立てる。


「君に、如何思われようと構わないし。そもそも、何処の誰かとか知らないし」

「もういいです。私と一緒に来てください」

「だから、何の用なんだ」

「いいから。来なさい」


彼女は俺の手を取り無理やり引き摺っていく。

怒っているためか、彼女赤い髪が振り乱れるほど強く手を引かれた。

その勢いで、俺はつんのめる。


さすが、鎧男を吹き飛ばした女性だ。

力が強く振り払う事が出来ない。

そして、なすすべ無く連行された。


                      ☆


やって来たのは、当たり前だが魔法ギルドだった。

魔法ギルドは杖の絵が描かれた吊り看板が掛かっている赤レンガ製の立派な建物だ。

冒険者ギルドとは趣がまったく違う。


「そろそろ、手を離してくれ」

「駄目です」


彼女は

それにしても、来るまでにどれほど通行人の目に晒されたのか。

思い出すだけで恥ずかしくなる。


「おいおい。逢引なら、もっと良い所でやれよ」


突然隣から野太い男の声がする。

驚き隣を見ると見覚えの無い一人のガタイの良い男性が立っていた。


こいつは、何時の間に居たんだ。

まったく気が付かなかった。


どの冒険者より一回り筋肉が大きく、顔には傷跡があるスキンヘッドの男だ。

一般人からは浮く容姿をしている。

その上、服装も目立つ濃い赤の服を着ていた。


こんな目立つはずの男に気付けないなんてどうなっているんだ。

そもそも、こいつは何者だ。


「そう、怪訝そうな顔をするな。俺は冒険者ギルドマスターのタルトってんだ。以後よろしく」


男はエメラルド色の瞳を細め楽しそうに言う。


「なんで、貴方がいるんですか」


俺を引き摺っていった女性の知り合いだったらしい。

この二人が、知り合いって不思議な感じがするが。


「そら、俺のギルドであんな物見せられたらなぁ。気になるだろう」

「なっ………」


彼女は一歩下がり、絶句している。


「そんな事よりさっさと入ろうぜ」


タルトはそう言うと俺の繋いで無い方の手を繋ぐ。


「なんで、繋ぐ」

「いいじゃねぇか。おっさんと手を繋いでも。それともお前はおっさんとは繋ぎたくないのか」

「普通そうだろう。と言うかそもそも、アンタだけじゃなく彼女にも離して欲しい所なのだが」

「まぁ、細かい事は言わない事だ。さぁ行くぜ」


そうして、俺は両手を繋がれたまま、魔法ギルドへと引き摺られていく。

連行される犯罪者の気分を味わう事になった。



お読みいただき有難う御座いました。

思ったように進みませんねぇ。

改定前よりかなり長くなるかも知れません。

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