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第一章(きっと彼等の旅はここから始まった)Ⅷ

獣人とは獣の特徴が部分的に出ている人の事だ。

鳥の翼を持った鳥族、狼の耳と尻尾を持った狼族等、多種多様な種類が有る。

それを、ひと括りに獣人と呼ぶのだ。


「アンネこっちにおいで」


フィリンはアンネを呼ぶ。

すると、彼女は話していた客に一礼し、此方へとパタパタと走ってきた。


「改めて、紹介するよ。娘のアンネだ」

「アンネです。助けていただいて有難う御座いました」


アンネは帽子を脱ぎ一礼してきた。

犬、いや狼だろうか。

彼女の透明感の有る白い髪にピンと立った狼の様な耳がくっついており、尻尾もフワフワとした尻尾だ。

あと、彼女は珍しい事に、琥珀色と青色のオッドアイだった。


「あの。私の顔に何か付いてますか」


アンネからは不安そうな顔をされ、アリシアからは余りじろじろ見るなと言わんばかりに腕をつねられた。


「気にしないでくれ、それで君は狼族であっているのかな」


アリシアの不機嫌な視線を感じつつも、誤魔化すために問いかける。


「いえ、犬族です」


申し訳なさそうな顔をするアンネ。

これは、種族間コンプレックスと言う物だろう。


世間一般からは犬族は狼族より下に見られがちだ。

そして、犬族もそれが解っているらしく、狼族と間違われると、自分の事を卑下する者が多いのだ。


「犬族か。すまない。どうも俺は獣人の種族を見分けるのは苦手で」

「いえ、慣れてますから」


そうは言っているものの彼女の表情は優れない。

不味い事をしたな。

フィリンの方を見ると『何時もの事だから気にする事はないよ』と声を掛けてくれるのだが、気まずい。

フィリンも『何時までクヨクヨしてんだい』とアンネに激を飛ばすが効果はいまひとつだ。

如何した物か。


そんな事を考えていると突然、隣から『ぐぅ』という可愛らしい音が聞こえる。

振り向くと其処には、真っ赤になり俯いたアリシアがいた。


「ははは。すまないね。飯も出さずに立ち話させちまって」


バシバシと俺の背中を叩きながら言うフィリン。

力が強いのか、結構痛い。


「アンネも、何時までも落ち込んでないで個室に案内してやんな」

「うん」


バシバシと自分の顔を叩き気合を居れ作り笑いを浮かべるアンネ。

深くは追求せず、彼女の案内されるまま後に続くのだが。

個室とは何だろうか。

それだけが疑問だった。


「ここにどうぞ」


連れて行かれたのは小さな部屋だった。

部屋には、黒光りする木製のテーブルと、革張りのソファーが置かれている。

この部屋にあるものは全体的に高級そうで、気後れしてしまいなかなか席につけない。


「お兄ちゃん。何してるの」


アリシアは俺と違い度胸があるのか腰を掛け、座るように催促をしてくる。


「いいのか」

「えぇどうぞ」


念のためにアンネに聞くと、笑みを浮かべ返される。

えぇい。ままよ。

アリシアの向かい側の椅子に恐る恐るではあるが、浅く腰を掛ける。


「なんだい。借りて来た猫みたいになって」


俺がビクビクして腰掛けていると、フィリンが料理をワゴンに乗せてやって来た。


「高そうな部屋なのでな」

「なんだい。気後れしてるのかい。肝っ玉の小さい奴だね」


フィリンは呆れた表情をする。

村出身の俺からすれば、こんな家具を平然と使える度胸なんて有るはずがない。


「大丈夫さね。ここも、酒場だよ。そんなマナーがどうなんて言う気はないよ」


いや、それはそうなんだけど、そこではないのだ。


「女将さん。此処って貴族が良く来るの」


俺が何とも言えずに居ると、アリシアが普通にフィリンに問いかける。

堂々としているアリシアが恨めしくも、かっこよく見える。


「あぁ。ここの領主がここの料理を気にってくれたらしいんだけど」


一呼吸置き、フィリンは苦笑し続ける。


「領主をあんな場所でもてなす訳には行かないからね。この部屋を作るはめになったのさ」


なるほどそれでこの部屋が有るのだな。

貴族用の部屋か、益々気遅れしそうだ。


「でも、どうして私達をこの部屋に連れてきたの」

「この料理だからね。あんな所で出したら他の連中が群がってきて食事どころじゃなくなるよ」


アリシアの問いかけにフィリンは待ってましたと言わんばかりな顔をして、ワゴンから料理を取り出した。

そんな彼女を見ると、おやっと疑問を抱く

そんなに食に固執する性格ではなかったはずだ。

むしろ、食には無頓着だった気がするのだが。


「先ずはローストラビットだ」


フィリンは大皿に乗ったウサギの丸焼きを机に置いた。


「すごいよ。お兄ちゃん」


そのインパクトにアリシアの目はキラキラと輝いていた。

俺はと言うと、色々な意味で驚き絶句している。


「ははは。そうだろうそうだろう」


アリシアの反応に気をよくしたフィリンは次の料理を取り出した。


「次は、ラビットスープ」


器の中には、具がゴロゴロ入った黄金色のスープが注がれている。


「すごいよ。スープが澄んでるよ」

「本当に凄いな」


うん。これはやばい。


「最後はりんごのタルトだ」

「おぉ」


アリシアは喜んでいたが俺は別の事に気づき、気になっていた。


「女将さん。これって誰かが予約注文した料理だよな」

「「えっ」」


アリシアとアンネは驚いた表情をしたが、意味合いは違うのだろう。


「どうして、解ったんですか」


アンネの返答に、やはりそうだったかと納得する。


「あー。もしかしてあんた料理出来るのかい」


困ったような顔を浮かべるフィリア。


「まぁ、人並みには」

「そうかい。それじゃあわかって当然かい」


フィリンの言葉に、ピンと来ないのかアリシアとアンネは首を捻った。


「アンネ。アンタはこの店を手伝ってんだから気付くだろう」


アリシアと一緒に首を捻っているアンネに対してフィリンは苦笑する。


「お兄ちゃん。どういうことなの」


アリシアは考えても答えが出なかったのだろう。

諦めて俺に尋ねて来た。

お読みいただき有難う御座いました。


なんだか文章の書き方がわからなくなりそうになる今日この頃です。

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