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新たな事実。(第31話)

この女性の姿はリクシャリアさんにそっくりで、言葉遣いはアイヴィスさんにそっくりだった。まるで、2人が1つになったような。


それでも、彼女は初対面の人。人見知りの激しい僕にとって、いきなり話しかけられそれに対応するというのはとてもじゃないけど難しい。それに今の僕の心の中は、焦燥でいっぱいだった。


「あ、ぇ……え、と……その………」


どうましたか、とただ聞かれただけにも関わらず、僕は動揺してしまっている。上手く口が回らず、言葉も出てこない。


「おっと…自己紹介がまだでしたね。」


そんな僕を見かねてか、彼女は自己紹介を始めた。その自己紹介は、衝撃のものだった。


「はじめまして。私の名前はイリス・リクシャリアと申します。齢は25、以後お見知りおきを。」


まさかの、リクシャリアさんと同姓なのだ。リクシャリアさんの本名は確か、ローザベル・リクシャリア。姿もここまで似ていて、姓も同じとなると、この疑いはほぼ確信に変わる。


「イリス、さん………あ、あのっ……リクシャリアさんとは、姉妹でいらっしゃいますか……?」


僕はひ弱な声でイリスさんにそう聞いた。もし本当に姉妹だとしたら、僕の緊張も少しはマシになるだろう。


「……ええ。あなたが仰っている人物が、ローザベル・リクシャリアであれば。」


そうだ。やっぱりそうだ。イリスさんは、リクシャリアさんのお姉さんだ。


「そ、そうです!えっと、僕はリクシャリアさん…じゃなくて……ローザベルさんにお世話になっている、華原凛と申します!よろしくお願いします!」


予想通り、僕の緊張も解れて言葉がするすると出てくる。安心感で、胸がいっぱいになる。


「あら、妹がねぇ……大丈夫ですか?ご迷惑など、掛けてはいないでしょうか?」


イリスさんの物腰は柔らかく、聞いていて安心できた。リクシャリアさんとは真逆で、本当に姉妹なのかと疑ってしまうほどだった。


「は、はい。むしろ、こっちが迷惑をかけているようなもので……」


僕が恥ずかしそうにそう言うと、イリスさんはにこりと微笑みかけた。いかにも大人の女性、と言った感じで、こういう所もリクシャリアさんとは真逆だった。


「なるほどね……それで、ローザベルは今どこにいるのですか?」


イリスさんはそう言いつつきょろきょろとあたりを見回した。こういう風に天然さが言葉の節々に出るのは、やはり姉妹だからなのだろうか。


「…その……恥ずかしながら、置いてけぼりにされてしまって……」


僕がそう言ったとき、イリスさんの口角が一瞬上がった。。見間違いかと思うほど、一瞬だった。


「……そうですか。なら、私とここを回ってみませんか?」


さっきのアイヴィスさんと全く同じ提案だった。それゆえに、ほんの少し警戒してしまう。失礼なのは分かっているが、なにせリクシャリアさんのお姉さんなのだから。リクシャリアさんと同じ、もしくはそれ以上の欲を持っていても不思議ではない。


でも、寂しさと焦りから早く解放されたい僕は、イリスさんの誘いに乗ったのだった。



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