新しい出会い。(第30話)
あのことがあってから、僕は四六時中四六時中ドキドキしっぱなしだった。
ついさっきまではもしリクシャリアさんに何がされたとしても、アイヴィスさんに助けを求めればいいと思っていた。
アイヴィスさんなら安心だと。そう思っていたのに、実はアイヴィスさんも僕のことを狙っていただなんて。
しかも、雰囲気的にはリクシャリアさんよりも危ない。
リクシャリアさんは僕が拒めば素直にやめてくれるだろう。
でも、アイヴィスさんはきっとそうはいかない。
さっきはアイヴィスさんから離れたくなかったが、今はリクシャリアさんから離れたくない。
「凛君。どうしてそんなに私から離れるのですか?」
リクシャリアさんのそばにいた僕の手を、アイヴィスさんがぐっと引っ張った。
さっきみたいなリードするような手の引き方ではなく、やや強引な、奪うような手の引き方だった。
「私から離れないでください。あまり騎士長のそばにいると、襲われてしまいますよ。」
アイヴィスさんはそう行って僕のことを抱きしめた。きっとこの人はいつもと同じように振舞おうとしているのだろうけど、今の僕には邪推しかできない。
「……アイヴィス。リンが嫌がっているではないか。」
リクシャリアさんはそう言って、アイヴィスさんを諭した。
そして、ある提案をしてくれた。
「2人とも。少しの間、別々に行動してみないか。その方が、気分転換にもなるだろう。」
アイヴィスさんはこくりと頷き、すんなりと受け入れている。
でも僕は、受け入れることが出来なかった。
知らない街を、人見知りのこの僕が1人で探索することを余儀なくされているのだから。
お金のこともあまり良く分からない。店の人がどんな人なのかも知らない。この国の法律がどうなっているかも分からない。
わからないことだらけのこの世界で、1人になるのは恐怖以外の何物でもない。
「あ、あのっ……やっぱり、僕……」
僕は、2人に拒否の意を示そうと顔を上げた。
そこに、2人の姿はなかった。
僕は、1人になってしまった。
あの時と同じだ。まっさらな快晴の日に、「いってきます」の伝言だけ残してどこかへ行ってしまった父のように、知らないうちにどこかへいってしまった。
僕は1人になろことに強いトラウマを持っている。もう戻ってこないんじゃないか、とそう思ってしまう。
それも、こんな知らない街で。
足がすくんで動いてくれない。震えが止まらない。周りにいる人たちが、恐ろしく見える。
そんな中、1人の人に声をかけられた。
「あの、すみません。どうかしましたか?」
その人は、リクシャリアさんによく似た大人の女性だった。
新しい人の登場でございます。
人物の描き分け頑張らんとなぁ…




