親しき中にも礼儀あり。(第24話)
「なっ…なんだその顔はっ!今のリンの言葉は、私を信用している表れだろう!?」
「ええそうですねしんようされていてよかったですねー」
「う……うぅ…」
いくらなんでもやりすぎじゃないだろうか。リクシャリアさんは今にも泣きそうな表情をしている。自業自得…といえばすぐ済むのだろうけど、それだけではあまりのもリクシャリアさんがかわいそうだ。
「あの、アイヴィスさん…いくらなんでも、言いすぎじゃないですか…?」
「そうでしょうか。騎士長はこれくらいでは懲りませんよ?」
懲りる懲りないとかそういう話ではない。僕は、アイヴィスさんが言い過ぎだということを伝えたいのだ。
「そうじゃないですっ。懲りる懲りないじゃなくて、アイヴィスさんが言い過ぎだってことを伝えたいんですっ!」
僕が顔を赤くしながら力強く言葉を放つと、アイヴィスさんはわずかなあいだ目をつぶり、リクシャリアさんのほうに体を向けた。
「…騎士長。先ほどの発言は撤回させていただきます。申し訳ありませんでした。」
その謝罪は、リクシャリアさんが修じぃにした時のようだった。丁寧に、そして陳謝の念が伝わる謝罪だった。
ただ無意味に形式上の謝罪をするのではなく、自らの行動を振り返り、自分の落ち度や愚行を確認してから謝罪する。そしてこの「申し訳ない」という言葉は相手にもきっと伝わる。
これが、僕がこの世界に来てしっかりと学んだこと。
「…アイヴィス。顔を上げてくれ。私にも疵瑕があった。」
リクシャリアさんはアイヴィスさんに優しく微笑み、やわらかい言葉をかけた。
こうしたように、相手側からの許しを得ることができると、謝罪した側も安心できるのだ。あぁ、ゆるしていただけた、と。
「さぁ。リン、アイヴィス。城下楽座へ赴こうではないか!」
リクシャリアさんが発した声に答えるかの如く、僕たちは笑顔でうなずいた。
所変わって市街地。
海から吹く優しい風に、僕はえも言われぬ心地よさを感じていた。
日本の海とはまた違った、さわやかで、そして身を預けたくなるような風だった。
「ふふ、どうですか凛君。この世界の海は。」
「はい。青々として、生命を感じさせます。」
アイヴィスさんの問いかけに僕は少し簡潔に答えた。アイヴィスさんは、微笑むだけで何も言ってはくれなかった。
「うむ。この海は生命の世界であると同時に、神秘の世界でもあるからな。果たして、この海の果てには何が広がっているのだろうな…」
リクシャリアさんはすこし切なさを感じさせる表情で、果てしなく広がる水平線を見つめていた。
海風に吹かれながら、僕たち三人は城下楽座へ足を運んでいた。




