お散歩に行く前に。(第22話)
「散歩…ですか……いいかもしれませんね。」
様々な思考を巡らせている僕に差し伸べられたリクシャリアさんの言葉は、僕にとって救いの言葉に聞こえた。
今でこそそうでもないが、昔…僕が小学校低学年ほどの頃は極度に人見知りで、店に出ることすら嫌がっていたくらいだ。
この性格は今でも少し残っていているらしく、初めてパルフェにいらっしゃるお客様が大勢お越しになられたされたときは結構緊張して、硬くなってしまう。
それと同じような状況に僕は置かれていたから、リクシャリアさんの意見を即決で取り入れた。
「そうか。では……城下楽座などどうだ?」
城下楽座…名前から推察するに、所謂城下町の商店街、といったところだろう。
この世界の店を見て回るということは、この世界に何が流通しているか、なにが主食として食べられているか、そして、おおよその貨幣価値もわかるだろう。
「城下楽座…いいですね。そこに行けば、この店で出せるスイーツの幅も広がることでしょうから。」
「うむ。では決まりだな。…アイヴィス、この店の護衛を頼まれてくれないか?」
リクシャリアさんはアイヴィスさんの方向を向いた。なぜだか分からないが、少し興奮したような表情だった。
「お断りいたします。騎士長と凛くんが二人きりというのは、不安で仕方がありません。」
アイヴィスさんは単刀直入に言った。毎度のことながら、上司に向かって言うような言い方ではない。
アイヴィスさんの言葉を聞いたリクシャリアさんは、漫画でよく見るような、驚きと悲しみが入り混じった表情、擬音で表現するなら、「がーん」という表現が最もしっくりするような表情を表に出した。
「なっ……?!ど、どこが不安だというのだ!私はこの命に代えてもリンを守り抜く心持なのだぞ!?」
リクシャリアさんは若干語気を強めてアイヴィスさんに抗議した。
「………そういうところです。少しは自覚を持ってください。」
…そう。リクシャリアさんがさっきの言葉を言っているとき、リクシャリアさんの腕は僕の体をしっかりと抱きしめていた。しかも、ちょっとやそっとではびくともしないような力で。
「…騎士長だけでは不安ですので、私も同行いたします。かまいませんね?」
「いや…だが……」
「かまいませんね?」
アイヴィスさんの表情に、リクシャリアさんは少し顔を引きつらせて「ひっ」と小さく声を漏らした。
僕は、リクシャリアさんの腕の拘束から抜け出そうと躍起になり下を向いていたため、直接リクシャリアさんの表情をうかがうことはできなかった。
だが、リクシャリアさんのおびえた表情とアイヴィスさんのオーラから、とてつもなく黒い顔をしていたことはなんとなくわかる。
そしてリクシャリアさんは、蚊のような声で「はい…」とつぶやいていた。
「…あの、リクシャリアさん。離してくれませんか?少し…苦しいです。」
「な、なにっ?!すまないリン!」
うーんまた更新が遅れてしまった…




