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今までの日常、これからの日常。(第19話)

ようやくプラセーノ公国での開店にこぎつけた喫茶店『パルフェ』。

これからとてつもない受難が待ち受けていても、剛毅に歩んでいこう。

いつ日本に帰れるのか。いつお父さんに会えるのか。そして、修じぃは生きているのか。 そんなことも記憶の片隅におきながら進んでいこう。


「フフッ……リン。これからよろしく頼むぞ?」


「えぇ。もちろん。」


僕は笑顔で答えた。するとリクシャリアさんもふわりと笑って、僕の頭を優しく優しく撫でてくれた。

お母さんに撫でられたような、不思議な安心感が僕を包み込んだ。


「…リンの髪は見た目からしてサラサラそうだったが…まさかここまでサラサラだったとは…」


完全にムードぶち壊しである。一気にガクッとなってしまった。

全く…この人はいい意味でも悪い意味でもムードメーカーだな。


「騎士長?少しは空気を読むことを覚えてくださいね。」


騎士さんが辛辣な言葉をリクシャリアさんにぶつける。だがリクシャリアさんはそんなこと気にも留めず、


「いいではないか。どうだ、アイヴィスも撫でてみるか?」


今まで耳にしたことのない単語がリクシャリアさんの口から飛び出た。アイヴィス…?

もしかして…この騎士さんの名前…?


「申し遅れました。私、本名をアイヴィス・ラルゴといいます。」


予想は見事的中。アイヴィスは、この騎士さんの名前だった。 ラルゴと言えば、日本では音楽用語なのだが…何か関係はあるのだろうか?


「いえ?おそらく関係ないと思いますが。」


「ひぅっ?!」


いつの間にか僕の後ろに回り込んでいた騎士さん…アイヴィスさんは、耳元で僕に囁くように言った。

まさかわざとやっているのではあるまいな。やっていたら怒るぞ。


「そんなそんな……ワザとに決まっているじゃないですか?」


なぜリクシャリアさんやアイヴィスさんは、僕の考えを惑わせて来るのだろう。

…まぁこれが友好の証と考えれば、理解できないこともないが……

いけないいけない。また思考に意識を傾けていては、アイヴィスさんやリクシャリアさんになにかされてしまうかもしれない。



「チョロすぎでしょう……全く………」


「えっ?な、何か言いました?」


「いえ、ただ騎士長がちょろちょろしているなと。」


相変わらず辛辣すぎないか。仮にも上司のリクシャリアさんに向かってちょろちょろしているとは…

もしかして、縦のつながりが割と緩いのか?

僕はさっきいけないと自制した行動、思考に意思を傾けてしまった。


僕が我に帰るきっかけになったのは、ぱしゃりという日本で聞きなれた音だった。


「な、なにかしていたんですか?」


「あぁ…少し、この店の中の写真をな。」


なるほど。実際日本でもパルフェの内装をカメラに収めるお客様も少なくない。それと一緒だろう。

それより、カメラもこの世界にあるのか。



「…いくらなんでも気づかなさすぎではないか……?」


さっきからリクシャリアさんとアイヴィスさんがぶつぶつ言っているような気がするのだが、本当に気のせいだろうか。




チリンチリン、と店の扉に備え付けてある小さな鐘が音を鳴らした。

外から入る光と、アイヴィスさんとリクシャリアさんの気ままさに気を取られ、顔まではよく見えなかった。


「ここか…ついさっき現れた店っつうのは……」


どこか懐かしく、聞きなれた声。


「あいつはまさか……凛か…?」


その聞きなれた声で呼ばれる、僕の名前。



「…そういうことか、あいつも、こっちの住人になったってことか…」



声だけで表情が読み取れるような、感情豊かな声。



まさか。







「修…じぃ……?」


パルフェに現れた人物。それは、ある日忽然と姿を消した、僕の祖父だった。



まさかの祖父降臨。ここから作者はどうしていくのだろうか。

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