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騎士の本性。(第16話)

リクシャリアさんに喫茶店のイロハを教えて小一時間。


僕は椅子に座り、くつろぎの時間を過ごしていた。

リクシャリアさんは人が変わったかのように、ノートに教えたことを思い出して書き込んでいる。

……この世界の文字は僕には読めないが、熱心そうで、それでも楽しそうな顔を見るとそう思わざるを得ないのだ。


「ふふ……リクシャリア様のことが気になりますか?」


ひぃっ、と僕は素っ頓狂な声を上げた。 当たり前の反応だろう。足音もなく背後に回り込まれて、耳元でささやかれては仕方ない。

僕はさっきの声の羞恥心を消すために、自分で自分に言い訳ををしていた。 本気で恥ずかしいのだ。


「そんなかわいい声を上げないでください……リクシャリア様に襲われますよ?」


その一言で、背筋がゾクッとしてしまった。 チラッとリクシャリアさんのほうを見ると、僕の背筋はまた凍った。

顔は上げずに視線だけを僕のほうに向けていたのだから。

正直、とても怖い。蛇に睨まれた蛙のように、体が思うように動かない。

命の危険は感じないものの、貞操とプライドの危険をひしひしと感じている。


「お、襲うなんて……冗談、ですよね……?」


額に嫌な汗をにじませながら、僕は騎士さんの方を向いた。


「生憎、私は冗談を言わない人間でしてね……うふふっ♪」


衝撃。僕はその場で固まり、現実を受け止めきれずにいた。


(え?嘘だよな……?リクシャリアさんは騎士団の最高騎士長だし、そこらへんの事情はきっちりしてるはず……それに、女子には手を出さないって言ってたし……いや、でも最高騎士長ってことは仕事なんか山のようにあるだろうし……せ、性欲なんか有り余ってるかもしれないし……)


顔を真っ赤にしながら、僕は思考を巡らせていた。

それこそ、周りの状況になんか気づかないほど頭の中は思考で一杯だった。


背後で起きた物音で、僕は我に帰った。


リクシャリアさんが手を伸ばした状態で、床に伸びていた。

再び衝撃。まさか、本当に僕のことを襲おうとするとは。


「凛君、大丈夫ですか?全く、困った騎士長さんですよね……」


若干の困り笑顔で、騎士さんは僕に話しかけてきた。手の形は手刀の形になっていて、騎士さんがリクシャリアさんを気絶させたことは、火を見るより明らかだった。


一番敵に回したらいけない人は、もしかしたらこの騎士さんかもしれない。

そんな思考が僕の頭を支配した。


僕はただ、冷や汗を浮かばせながら小さく何度も頷くことしか出来なかった。



実に三か月ぶりの更新です。


いや、本当にごめんなさい。アイデアが出てこなかったとか、学業が忙しかったんです。

……本当ですよ?


超がつくほどの遅筆ですが、気長にお付き合いください。

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