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変わらないもの。(第14話)

ゴリゴリと小気味良い音を立てながら、年季の入って使いなれたミルのハンドルを回す。

リクシャリアさんはいろんな方向から僕をじろじろと見て、怪訝そうな顔をしつつもたまに驚きの表情をする。正直な話、ここまで見られるとは思っていなかったのでかなり緊張している。


だんだんと店内にいい香りが満ちてくる。このコーヒーの独特の匂いに、店の中にいる騎士さんもリクシャリアさんも表情を綻ばせる。


「出来ました。僕の店自慢のカフワです。どうぞ飲んでみてください。」


そう言って僕は自信を持ってリクシャリアさんの目の前にカップを置き、その中にドリップしたコーヒーを入れる。

白い湯気が立ち上り、その湯気の下に黒々としたコーヒーが見える。

その光景にリクシャリアさんは目を輝かせていた。


「で、では…いただきます…」


ご丁寧に手を合わせてリクシャリアさんはおずおずとカップに手を掛ける。

そして、この世界にとって未知の飲み物をゆっくりと飲み始めた。


「ん…ふぅ……」


リクシャリアさんはコーヒーを少し飲んで、一息つく。

幸せそうな、安心したかのような、様々な憶測が出来る表情を浮かべた。


「美味しい…」


たった一言。でも僕にとってはなによりも嬉しいこの言葉。

もといた日本でも、このプラセーノ公国という僕にとって全く未開の世界も。このほのぼのとした空間は、変わりようのないものなんだということを、今初めて知れた。


「ありがとうございます。」


この空間の中では、こんな当たり前の一言でも心に響く。そんな優しい、おだやかな空間が広がっていた。

周りにいた騎士さんも、リクシャリアさんも、そして他ならぬ僕も。みんなが笑顔になる。



大変ながらくお待たせいたしました…反省しています。次からはもう少し早い執筆を…

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