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騎士は自由気ままに。(第12話)

…多少、いやかなり心残りがあるが、このままリクシャリアさんを放っておくと精神がどうかなりそうなので対応しないと。


「し、仕事ですか…?えっと……リクシャリアさんは初心者ですので、会計とか掃除とか…ですかね…?」


本当は掃除から始めてもらうつもりだった。だが流石にそれではリクシャリアさんのプライドが傷つと思い、二つ任せることにしたのだが…


「私は王族騎士団の最高騎士長なのだぞ?一応それなりの能力はあると自負している。」


と、若干不服そうな声で僕に言った。これでもプライドが許さないとなってしまっては、どうすればいいのか全く分からない。


「と言われても…これ以外の仕事はいくらか経験がいりますし…」


半ば苦しい言い訳だと思うが、リクシャリアさんの気迫に負けそうだし仕方ないと思う。


いくらか言い合いを重ねるうち、だんだんとリクシャリアさんの纏う雰囲気が変わってきていた。

はじめの方は怒っていると思っていたのだが、ある一言をきっかけに正反対だということに気がついた。


「私かって…リンと同じように働きたいんだもんっ……!」


顔を少し覗き込むと、リクシャリアさんの目には涙が浮かんでいた。


…やっぱり僕は女性に弱いみたい…


「仕方ないですね…これからコーヒーの挽き方やケーキスポンジの焼き方をお教えしますから…」


僕が折れてそう言うと、一気にリクシャリアさんの顔は輝きに充ち溢れた。


「本当かリンっ!感謝するぞっ!」


と、僕の腕を掴んでぶんぶんと振り回した。



この異世界で、パルフェが開店するのは当分先になりそうだな…

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