7
城からある程度離れた街の宿に落ち着いたのはすでに日が昇った後のことだった。
あれから彼らは一晩中馬で移動していた。
シャルティアも馬に乗れることには乗れるが、姫であるシャルティアに丸々一晩も馬で移動できるほどの体力があるわけもない。
シャルティアはガルの馬に乗っていた。
彼らが借りた宿の一室にはベッドが二つしかない。
「仮にも姫、というか女性と同じ部屋なんて……。一体何を考えているのですか。」
呆れたようにシオンが言った。
「はぁ?二部屋もとったら金がもったいね……じゃなかったオヒメサマの護衛ができねーだろ。」
「はぁ、全くガルは……」
「私は別に気にしませんよ?それよりそろそろお休みになってください。一晩も馬で駆けたのですからお疲れでしょう?」
「シャルティア様もお休みください。ガルは床で寝ますから。」
「はぁ!?何で俺が!」
「だいたいあなたは……」
今にも喧嘩が勃発しそうな雰囲気にシャルティアが口を挟んだ。
「私は馬の上で休ませてもらいましたから大丈夫ですよ。」
ニヤリとガルは人が悪そうな笑みを浮かべた。
「ふーん。なんなら俺と一緒に寝るか?クククッ」
「ガル!いい加減に……」
シャルティアは相変わらず微笑みを浮かべていた。
「いいよ。呪いを解いてくれたら一緒に寝てあげる。」
シャルティアの口調が急に変わった。
「ほぉ、猫被りはもういいのか、オヒメサマ。」
ガルもシオンも全く驚いた様子はない。
「これからずっと一緒にいるんだからいつまでもあんな話し方じゃ疲れるでしょう?
あと、呼び方もシャルティア様とかオヒメサマじゃあ堅苦しいし、私の正体がすぐばれちゃうよ。」
「それもそうですね。シャルティア様の愛称は確かシャルティーでしたが……」
「それじゃあ、すぐバレるだろ。
んー?そうだなぁ……ティアでいいんじゃねーか。」
シャルティアは一瞬軽く目を見張った。
「ふふふ、私に愛称をくれるのね。」
「……随分うれしそうだな。」
「私を愛称で呼んでくれるのはお父様とお兄様だけだったからね。」
そんなに喜ばれると思っていなかったので、ガルは気まずそうに目を逸らした。
シオンはガルのその態度が照れ隠しによるものだと気がついていた。
「眠る前にこれからどうするか少し考えましょうか。」
先ほどの冗談の飛ばし合いでガルとシオンの眠気も飛んだようである。
「まず呪いについて調べる方法は主に二通りあります。一つは様々な国や地域の文献です。セレーナ王国は大国ですが、この世界の全ての書籍があるわけではありません。」
「もう一つは伝承ね。」
「そうです。呪いなどに関しては文献よりも地域の伝承の方が信憑性が高いこともあります。」
ガルが訝しそうに口を開いた。
「おまえ本当にオヒメサマか?姫なんてもっと世間知らずなもんだって思ってたけど……」
「一応本物の姫だよ。らしくないとはよく言われるけどね。」
クスクスとおかしそうにシャルティアは笑った。