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玉座の間。
それは極一部の者だけが入ることを許された空間である。
もちろん本来なら彼らのような身分の者には一生縁がないところでもある。
そんなところにガル・アングレスとシオン・ルーフェスは招かれた。
そのような状況にも関わらずガルは退屈そうに欠伸をしている。
シオンも至って冷静に玉座を見つめている。
ガルは退屈そうな態度を隠そうともしていないが、シオンは最低限の礼儀は守っているようだ。
「噂通りの無法者であるな、ガル・アングレス。」
「はっ、俺は田舎モンだからなー。礼儀なんてしらねーんだわ。」
王の隣に控えている男が何か言いたそうに口を開いたが、それを王が制止した。
「まぁ、よい。そんなことよりあの大会で優勝したお主らに頼みがある。」
「頼み……ですか?褒美ではなく?」
シオンは探るように王に聞き返した。
王はずっと威厳のある表情をしていたが、そこに悲痛さが混じったことに二人は気がついていた。
「本来ならば大会で優勝したお主らに褒美を与えるのが筋だが、無理を承知で頼みたい。どうか私の娘を……」
バアァン!!!
「お父様、そのお話は私が自らお話しします。」
王の話を遮って、玉座の間の煌びやかで大きな扉を開けたのは一人の少女であった。
少女といってもおそらくは16か17くらいであると考えられる。
彼女は他の貴族の令嬢に比べて質素なドレスを纏っていたが、決して地味というわけではなく、むしろその質素さが彼女な天性の美しさを引き立てていた。
「お初にお目にかかります。私はシャルティア・セレーナと申します。」
「ああ、セレーナ王国の第一王女様ですか。お初にお目にかかります。私はシオン・ルーフェスと申します。彼はガル・アングレスです。」
「存じ上げておりますわ。お二人とも先ほどの大会ではとても見事な戦いぶりでした。」
にっこりと微笑んで彼女はそう言った。
「んで?そろそろ本題に入ってもいいんじゃねーの?オウサマはだいぶ焦ってるみたいだぜ?」
「ふふふ、そうですね。」
ニヤリと笑ったガルにシャルティアは穏やかな笑みを返した。
王もその隣に控えている男もひどく焦っている様子なのに、おそらく話の中心であるだろうシャルティアに意に介してもいないかのようである。