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とりあえず王道なファンタジー世界の話。
姫らしくない姫と自称最強の俺様&腹黒メガネコンビが呪いを解くための旅をするお話です。
……逃亡生活をしながら。
重い話ではないです。
「「「「ワアァァァァァァ!!!!!!」」」」
「優勝はガル・アングレスとシオン・ルーフェスのペアだぁぁぁぁ!!!!」
響き渡る歓声の中で司会を務める男がそう叫んだ。
ますます大きくなる歓声を聞きながら、退屈そうに男は呟いた。
「はっ。俺様が勝つのは当然のことだろうが。」
彼は先ほど司会に名を呼ばれたガル・アングレスという男である。
その隣に立っているシオン・ルーフェスという男がそれを聞いてため息をつきながら言った。
「まぁ、あなたと私がペアなんです。優勝できて当然なのですが、思っていたより無価値な大会でした。」
「あぁ?」
「対戦相手は大した魔法も武器も使ってきませんでしたし、これで国からの報酬もイマイチなら何のためにこんな面倒な大会に出たのかわかりませんよ。」
「はんっ!おまえはまたソレかよ!物欲メガネ!」
シオン・ルーフェスはその呼び名に対して不満そうに眉をひそめた。
「失礼なあだ名を付けないでください。私はただ珍しい魔法や武器が見れるかもしれないと思ってこんな大会に参加したんです。それがなかったのだからせめて報酬は何かおもしろいものをもらわなくては割に合いません。」
「んなことどうでもいいんだよ!つえーやつが集まる大会だつーから出たのによぉ!雑魚ばっかじゃねーか!」
彼らが散々文句を言っている大会とは、セレーナ王国で数年に一度開かられる大会のことである。
その大会に出場するためにあらゆる国の強者たちが集まる。
その大会で優勝すればセレーナ国王から富や名声など望むものは何でも与えられる。
よって、その大会で優勝したことはこの上なく名誉なことなのである。
だが、彼らにとってそんなことはどうでもよかったようだ。
「あー、めんどくせー。さっさと報酬とやらをもらって帰ろうぜ。」
その『報酬』が彼らの運命を変えることになることを彼らはまだ知らない。