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異世界少女の保護者は竜  作者: 鹿熊織座らむ男爵
第一章  始まり
8/30

一夜明けて3

ここは大幅カットする予定の内容でしたが、まぁ気にせず晒そうかと思います。何事も勢いです勢い。

ご意見ご要望ご感想クレーム等何でも受け付けております。

「あ-このまま寝てしまいたいねー、仕事に戻りたくないよ」


陛下は小動物を相手にしているような勢いで私を撫で回しながらそう溢しています。

さすがに一国を預かる陛下がそれはまずいのでは……。


「寝てしまっても良いですけど、私しっかりとクラレス様に言いつけますよ?そうしたらもうこうやって陛下とは会えなくなるんだろうなー寂しいなー」

「……凄いね的確に怖い事言ってくれるね。本心で寂しいと思ってくれてると嬉しいのだけれど。まぁそろそろ竜皇陛下にサキを返さないと食われてしまいそうだし私は大人しく城に戻ろうかな。竜皇は森の中に居るのだろう?呼ぶかい?」

「陛下が食べられないように陛下を送ってから呼びますね」


そうお互いに冗談交じりに笑いながら話していると、急に辺りが暗く陰りました。

何事かと思うよりも早く竜の姿のマクスウェルが風を巻き起こしながら陛下と私の後ろに降り立ちます。


「わっ!?竜皇!?」

『うむ、食ってもよいと聞こえたが誠か?』


いつから聞いていたのか分かりませんがしっかりと話は聞いていたようですね。舞い散る花弁の中頭を下げ私達を覗き込んできます。

陛下は竜の姿のマクスウェルを見るのは初めてだったのでその大きさに驚きつつ、食べては駄目だと思いっきり否定しています。


『もう良いのなら城まで持っていくがどうするのだ?」

「え?背に乗っても良いのかい?」

『大した労力でもないのでな。それになるべく良い所をサキに見せておかねばな』


竜の姿なのになぜこんなにも威厳が無い事をサラッと言うのかしら……。それに人を背に乗せるなんて信じられません。

陛下も同じ気持ちなのでしょう、言葉無く頭上で少し不満そうにしている竜をただ見上げています。


『まだ戻らぬなら我はここで休むが、早くしないと花が壊滅してしまうぞ?』

「もっ戻る!戻るからゴロゴロしないでくれ竜皇!」


さっきまでぼぅっと見上げていただけの陛下が我に帰ったようにマクスウェルの首に飛びついている様は、みんなに見せてあげたいくらいです。マクスウェルは面白そうに低く呻く様に笑っています。


「マクスウェル珍しいね、自分から人に手を貸すなんて」

『ん?まぁそなたに良い所を見せたいというのもあるのだが、この者が居らなかったらそなたとは会えなかったのだろう?こう見えて少しは感謝しておるのだ』


何々!?今日は本当に珍しい事を言いますね!陛下を手の上に乗せるように持ちながらそう言うマクスウェルを驚きの表情で見つめてしまいます。


「おっ!では皇后にする事も了承して……」

『それとこれは話が別だ。そう言えば先ほど何やらサキを抱き締めておったな……?飛んでいる時に間違えて手に力が入ってしまっても許せ?』

「すっ少しくらい良いじゃないか竜皇!大きいのは見た目だけか!?」


騒ぎながら対等な会話をしている二人を見ていたら笑いが堪えられませんでした。

陛下じゃないですが地面に横になって笑っている私を見て、上の方で二人も楽しそうに笑みを溢しています。


『サキもおいで、一緒に城まで送り届けよう。それと人の王よ、我の事を竜皇と呼ぶのはあまり気が進まぬ。我もそなたの事は名で呼ぶことにするのでそなたも我の事は名前で呼ぶが良い』


そう言い私を手に乗せるとふわりと舞い上がり城まで飛びます。


「りゅっ……えぇっとマクスウェル?さすがにあまり高く飛ぶと目立つぞ!?」

『これ位は大丈夫であろう。もし何か問題になったら色々な権力を使ってでもそなたにもみ消してもらうつもりだ』

「えぇー……ちょっとそれは……えぇー」


空中でも二人は仲良く?会話したまま、あっという間に棟の裏側のバルコニーに到着しました。

棟にくっつくように着地したマクスウェルの手から、無事棟の中に入るとマクスウェルも人型に戻りました。


「ありがとうマクスウェル!存外に快適な空の散歩だったよ!今度公務の時間が空いたら君ともじっくり話がしたいねっ」

「あの眼鏡の宰相が今回のようにそなたを自由にする時が来たらそうしたいの」

「あっ!待って陛下!その土まみれの格好で戻ったらクラレス様に何言われるか……!アマリーさーん!」


さっきまで直接地面の上に転がっていたので、頭の先から足の先まで土まみれです。

こんな時間にお風呂に入るわけにもいかないので、大急ぎでアマリーに着替えを用意してもらい、頭に付いた土は出来るだけ払って何とか送り出しました。


「アマリーさん……何かごめんね……仕事増やしちゃって」

「うふふっ、これ位お気になさらないで下さい。あんなに楽しそうな陛下は初めて見ましたので楽しい限りです」


盛大に室内に散らかった土を二人で掃除しながら溜息混じりにそう言いうと、女子力の高いアマリーは笑ってそう言うだけです。マクスウェルは勿論手伝ってくれる訳も無く、掃除の邪魔にならないようにイスに大人しく座っています。


「アマリーさんは昔から陛下のそばに居たんだっけ?あんな感じじゃなかったなんて信じられないよ……」

「侍女としてお使えしているのは私が16の頃よりですが、私の母が元々ここで侍女をしておりましたので、その関係で幼少期より懇意にしていただいております」

「じゃあ幼馴染みたいなもの?」


私は完全に掃除の手を止め話を聞く体勢でアマリーの顔を覗き込みます。


「そう言って良いものなのでしょうか分かりませんが……それに近いものかも知れませんね。陛下は昔から次期皇帝陛下として育てられていらっしゃったので、幼少期はあまり子供らしからぬ落ち着いた方だったのですが……」

「……落ち着いた……方……」

「それは本当に我らが知っているあのフィアハルトの事か?」


マクスウェルでさえそう口にしてしまうほどにさっきのあの姿を見たらその話が信じられません。むしろそう口にしたはずのアマリーさえ困ったような笑顔をしています。


「まぁ……あの馬鹿陛下はここに来て、抑えてた感情を爆発させている節はありますね」


いつの間にやら入り口に立っていたクラレスが、床に座り込んで話している私とアマリーを見下ろしています。


「クラレス様……いつもビックリする登場の仕方をしないで下さい」

「そんなつもりは無かったんですけどね。うちの馬鹿陛下の戻りが遅いので迎えに来たのですが、どうやら入れ違いになったようですね。随分と汚して……アマリー、たまにはあの馬鹿を怒って下さいよ?」


相変わらずクラレスは陛下に厳しいですね……アマリーは何も言わずニコニコ頷いていますし。ん?陛下と幼馴染という事は……?


「クラレス様とアマリーさんも幼馴染って事ですか?」


クラレスが少し不思議そうな顔をしたあと、アマリーの顔を見て何かを納得したようです。


「えぇ、その感じですと少しアマリーから聞いているのですね。あまりにも三人とも立場が違いますので公には言ってはいないのですが、そんなものですね。アマリーは昔から気立てが良いのにうちの陛下は年々こう……」

「ふふふっ。確かに陛下は年々幼くなっていますね。猊下は……眉間のシワが気になりますわ」

「……アマリーに言われると洒落にならないのですが」


あのクラレスがたじたじになっています!やっぱり女性が一番強いんですね。幼馴染とか微笑ましくて羨ましいです。

楽しく二人が他愛も無い会話をしているのを見ていたら、ふとアマリーがこちらを見て寂しそうな表情をしました。


「すみませんサキ様!サキ様の前でこんな話を……」

「へ?」


完全に気を抜いていたので変な声が出てしまいました。後ろと正面でマクスウェルとクラレスが笑っているのが分かりますが、一先ず無視してアマリーが優先です。


「サキ様はご家族や幼馴染様に会うことも叶わないと言うのに私ったら……」


土下座しかねない勢いで謝り出したのでさすがに止めに入りましたが、正直私もそんな事すっかり忘れていました……。


「ちょっ!アマリーさん大丈夫だから!楽しく聞いてたから気にしないで!?むしろクラレス様の弱みとかそんな話が聞きたいなーとか考えてたから!」

「そこで何で陛下ではなく私なんですか?」

「そっちの方が面白そうだから?だからアマリーさんいっぱい話し聞かせてよ!私仕事も無くて手持ち無沙汰だしね。その代わりにマクスウェルの生態を発表します」

「うむ、こちらにも飛び火か」


どうにか周りを巻き込んで顔を上げさせる事に成功しました。

実際、公にされていないので外に出るのもあまりよくないので、アマリーとお話しする以外やる事がないんですよね……。


「では……時間が合い次第、猊下の秘密をお教えしますね」

「……アマリー」


このクラレスの困り果てた顔を見る限り、クラレスの弱点はアマリーなんじゃないかと思いますが一先ず土下座祭り回避です。


「クラレス様、手持ち無沙汰なのはどうにかなりませんか?あっ!私クラレス様の侍女になろうかな!」

「そう簡単に宰相付きの侍女になれたら苦労しませんよ、ちゃんと分かって言ってますか?それに契約者様に余分な労働はさせられないんですが……。簡単な事なら明日までに考えておきましょうか」


おぉ!言ってみるものですね!ただでえ忙しい宰相様に余計な仕事を増やしてしまった気もしますが……。


「では我のしご……」

「竜皇陛下は地面でグッタリしていて下さい。契約をしてからならいくらでもこき使いますから」


間髪入れずマクスウェルは否定ですかそうですか。

確かに余分な労働している位なら体を休めて欲しいですしね。


「少し時間を取り過ぎましたか……私は戻ります。アマリー途中まで荷物を持ちましょう」

「ふふっ。宰相様に持たせたとなると私が侍女長に怒られてしましますよ?お気持ちだけ頂きます」


そう言って仲良く揃って退出していきました。

今日は大人な態度のマクスウェルですが、普段からあの二人みたいに落ち着いた関係が良いなって少し思っちゃいました。


               ☆



「ねぇマクスウェル。クラレス様とアマリーさんって両想いかな?」


思いの外午後やることが無く、結局竜の姿に戻ったマクスウェルと一緒に日向ぼっこに中です。

 適当に森の中を散策して採取したハーブを乾燥させつつ思い出した事を聞いてみます。


『どうだろうな……。悪くは思っておらぬと思うが、こればっかりは我も解らぬな』

「陛下と私の会話は知ってたのに?」

『あれは我は森と繋がっておるのでな、嫌でも聞こえるわい。全く、好き勝手触りおって……』


 つまり森の中では隠し事が出来ないって事ですね。便利なような不便なような……。


『もうどちらが良いか決めたのか?』

「えっ?」


 全く話を聞いていませんでした。

 勢いよく見上げると金色の瞳が真っ直ぐこちらを向いていました。


『今日話してみてどうだったのだ?決まったか?』

「一回話しただけじゃ分からないよ。でも楽しかったよ。ちょっとマクスウェルみたいだったしね。でも楽しく話してる顔と、時々見せる皇帝の顔どっちが普通なのかはよく分からなかった……」


 初めて話すような人にいきなり素の自分を晒せる人なんて居ないって知ってるし、ましてや相手は皇帝陛下、それこそ腹の内なんて知れない相手……。

 私を気に入ってくれているのか契約者が欲しいのか、そんな事を考えてしまうと心がずっしりと重くなります。


「マクスウェルは珍しい事ばっかりな日だったね?名前呼ばせたり一緒に飛んだり……普段絶対しないことだよね」


 深く考えていることをマクスウェルに伝わってしまうのが嫌で、咄嗟に話題を変えます。


『あぁ、竜皇やら皇帝やら面倒でな。正直我にはあまり関係のない呼び名だしな。あやつを連れて飛んだのは、たいして意味はないよ。強いて言うならばあやつはそなたに害を与えるとは思えないのでな、それならば多少は力をかすよ』


 意外です。

 今まで人に興味を示して来なかったのに……押しに弱いタイプかな?


「そっか……マクスウェルらしいね。んー私はまだマクスウェルとこうやってゴロゴロしてたいな……」

『それは我を選ぶって事か?』


 そう言いながら鼻を刷り寄せてきます。


「はははっくすぐったいよ!まだすぐには選べないって言ったでしょー?今はこのままが良いなって思ったの」


 刷り寄せてきた鼻先を撫でながらそう返事します。

 だって優柔不断の私はどうしたいかなんてすぐに選べませんよ……申し訳ないと思いつつ当分変わらずいたいです。

 明日からはどんな仕事を頂けるんでしょう。

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