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異世界少女の保護者は竜  作者: 鹿熊織座らむ男爵
第一章  始まり
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二人だけの前夜祭

徐々にイチャイチャしていきます。


 案の定マクスウェルは気ままに動物を追いかけたり遠くの旅の小隊を眺めたりと寄り道をして、日が傾き始めた頃ようやく目的の街に到着しました。

 さすがに竜の姿のまま街に近づくと大騒ぎになりますので、途中で人型になりました。


 元々竜は人と交流をもとうとしません。

 出来れば街にも来たく無いようですが、私を一人で行かせる事もしないので人が少なくなってきた夕方に来るようにしています。


 以前うっかり昼間に来てしまった時に、マクスウェルのその彫刻のような造形美に街のお姉様方が凄い食いついてきて大変な事になりました。

 その時のマクスウェルの表情って言ったら思い出しただけでも笑いがこみ上げてきます。


 今日来ている街は皇国カルヴァディアの皇都、カルヴァディアです。

 この国は隣接する国と不可侵協定を結んでいる為関係は良好で、戦争も数十年も無く、至って平和な国らしいです。

 皇都の背中に私たちが住んでいる山と森があり、鉱石の採取や農業、林業などその有り余る資源で国が豊かに潤っています。


 街もその関係のお店が多く、宝石商や加工業のお店が軒を連ねています。

 私も勿論宝石は綺麗だと思いますが、元々この世界の感覚と少し違うので持っていても手に余ると言うか使い道が無くて特に欲しいとも思いません。


 ですのでそう言ったものには目もくれず、馴染みの雑貨屋さんに向かいます。

 いつも通りここで物を売り、必要な物を買ったら真っ直ぐ帰りますよ。


 雑貨屋さんのドアを開けると、ドアに付いている呼び鈴がリズム良く音を刻み来客を知らせます。

 すぐに奥のカウンターから見慣れた顔がぴょこんと飛び出しました。


「ライラさん、こんにちは!今日もいっぱい持って来ましたよ!」


 カウンターの女性ーライラさんは、明るい茶髪のロングヘアーとエメラルドグリーンの大きな目が印象的な女性です。


「サキちゃん久しぶりー!丁度ハーブ類が切れかかってたのよっ見せて見せてー」


 私より年上の筈なのですが、満面の笑顔で駆け寄ってくる姿は無邪気な少女のようです。

 外ではべったりとくっついてくるマクスウェルも、お店の中なら慣れたもので一人カウンターの横に腰掛けてこっちを眺めています。


「あらあら本当にいっぱいねっ。ねぇ、次は果物とか木の実とかいっぱい持ってこれる!?今貴族令嬢様達の間で果物が美容に良いって流行ってるらしくて良く売れるの!あっあと、最新春モデルスイーツ何だけど…」


 いつもこんな感じで次に欲しい物や街で流行ってる事など、色んな話をポンポン教えてくれます。

 いつもこの話が長くなっちゃってマクスウェルを待たせちゃうんですけどね。


「そうそう、明日の花祭り勿論行くよね?」

「えっ…?」


 花祭りとは、この国の大切な資源である山や森に感謝の祈りと、来年の豊穣を願うお祭りです。

 最近はそれよりも、恋人同士で過ごしたり相手を探したりする場になっているらしいですけどね。

 勿論お祭りの存在は知っていましたし、今回それに併せて頼まれていた物を売りに来たのですが、マクスウェルが人混みを嫌がるので参加したことはありません。


「んー…屋台とかちょっと気になるけど、いつも通りパスかなぁ…?」

「えー勿体無い!今年の豊穣の祈りは皇帝陛下自らが行うらしいよ!?あまりお目にかかれないんだし見て行きなよー?私も広場の近くに屋台だすしねっ」


 豊穣の祈り。お祭りのメインイベントで、その名の通り感謝の祈りを捧げる事ですが、通年だと毎年選ばれる花姫が祈りを捧げる役割をするのですが、今年は過去最大の豊作とその恩恵で他国との信頼関係も強く築けたとの事で陛下自ら行うことにしたらしいです。


 確かに陛下はそうお目にかかれないですし、元よりお祭りにも多少は興味はありましたが……。

 ちらっとカウンターの端で頬杖をついて座っているマクスウェルに視線を向けます。

 微笑ましそうに女子二人の会話に耳を傾けていたマクスウェルは、少しため息をつき


「……好きにしたらよい」


 と一言だけ呟きました。


「えっ本当に!?ありがとーマクスウェル!」


 まさか許可が出るとは思っても見ませんでした!

 喜び勇んでそのままマクスウェルに飛びついてしまいましたが、保護者の気が変わる前にいっぱい甘えて機嫌をとっておきましょう。

 マクスウェルもそのまま私をぎゅっと抱きしめ、私の髪に顔を埋めています。

 甘えると大抵のことは許してくれちゃうんですよね。

 そんな様子を満足そうに見ていたライラさんが口を開きます


「今日泊まるところ決めてないでしょ?私は家に帰っちゃうけど店の二階なら好きに使って良いからねっ。その代わり次は果物いっぱいよろしくー!」


 なんとまさかのお泊まりですか!

 マクスウェルが居るので一度帰っても問題無いのですが「たまにはゆっくりする?」と聞くと、あっさりと承諾されました。


 ライラさんはお店を閉めると、掛け持ち営業をしているバーに行ってしまいました。

朝から晩までパワフルな人です。


 その後急いで帰る必要もなくなったので、普段見ないようなお店を覗いていきました。

 街の一部は明日の花祭りの準備の為閉鎖されていましたが、街のあちらこちらに花のアーチが出来ていて前日から浮かれちゃいそうです。


「あっお酒売ってるよ?持って帰って飲む?二階からなら広場が見えるかもしれないしっ」


 ライラさんのお店は大通りに位置しているので、もしかしたら広場が見えるかも知れません。

 ぎゅっとマクスウェルの腕に抱きつき、視線を投げ掛けます。

 元々マクスウェルの胸位しか身長がない為おのずと上目遣いになります。


「あぁ、そうしようか。そうか、そなたの祖国では丁度成人の歳だと言っていたな?そなたから酒に誘われるとは思ってもみなかったな」


 そう嬉しそうに言うと、適当にワインを選んでいきます。

 お酒初体験の私と、全く酔わないマクスウェルなのでどのお酒が良いかとかはさっぱり分からずでした。

 でも相当上機嫌なのか、マクスウェルはお店を出た所で買ったお酒と私を抱きかかえてそのまま部屋まで戻りました。


 部屋に戻るともう外はすっかり暗くなっていました。

 二階の窓からは少しだけ広場が見えます。

 まだ作業中なのか明かりが灯った広場は遠目でも幻想的な雰囲気を醸し出しています。


 私が子供のようにベットに座り込み外を見ていると、マクスウェルは慣れた手つきでグラスに注いだワインを二つ持ってきました。

 そのままグラスを受け取ると、マクスウェルも隣に腰を下ろします。


「ふふっ……なんか新鮮な感じだねっ」


 いつもは月明かりしかない山の中なので、こんなにも光があるのは久しぶりです。

 そのまま受け取ったワインを一口含みます。

 爽やかな飲み口かと思った矢先、やっぱり少し酸味が強く、アルコールもきついようです。

 隣のマクスウェルは何ともないようで、外を眺めながらスルスルと飲んでいます。


「マクスウェルはいつもこんな感じのを飲んでるんだよね…?私には少し強かったかなぁ?」


 二、三口飲んだだけで体の中心あたりが熱くなってきました。

 マクスウェルは不思議そうな表情をしたかと思うと、目を細め微笑みます


「我を何だと思っているのだ。そなたには……ふふっ……まだ早かったようだな?」


 グラスを窓際に置き、私を抱き寄せ腕の中にすっぽりと納めます。


「えーこのワインが強いんだよぉ」


 体を預けつつ、ちょっとだけ反撃しました。

 適当に買うものじゃないですね。ワインはアルコール高いって学習しました。


 マクスウェルは自身の腕の中ですでにほろ酔いになっている私を眺め、いつも通りふふっと笑うとワインを口に運びます。

 下から見ると、窓から差し込む光でその彫刻のように整った顔が浮かび上がっています。

 ワインを飲み下す時に動く喉まで妖しく綺麗に光って見えます。


「凄いね……凄い綺麗。目も髪も光でキラキラしてて……ワインも髪の色と合ってるし……見とれちゃうね」


 喉元に触れながらついそう口に出してしまったらしく、マクスウェルは私の頭に顔を近づけるとそのまま耳を軽く口に含むようにくわえます。


「……っ!」


 くすぐったいのと、いきなりの事で体がビクッとなりましたが、後ろからしっかり抱きかかえられているし、グラスも持ったままなのでそれ以上抵抗出来ません。


「我を口説いてどうしたいのだ……?……今夜のそなたはなんとも大胆だな」


 そう耳元で少し掠れた声で囁くと、そのまま耳に舌を這わせます。

 背筋がゾクゾクとなり、体がビクっと動いてもお構いなしに容赦なく舌を動かし続けます。


「マクッ……んっ……」


 吐息と舌を這わせた時に絡む唾液の音が頭の中に直接響いてくる感覚に、抵抗も出来ずされるがまま感じるがままの感覚に体をふるわせます。


「そうだ…そなたはもう大人だったな。ではこのまま食べてしまってもよいだろう…」


 そう言うと、耳から首筋へと舌を這わせたかと思うと少し歯をたてて首筋を噛む。

 耳以上に体の芯から突き上げられたような激しい感覚に大きく体が跳ね上がります。

 たまらずぎゅっと握り締めていたグラスからワインが零れ、首筋から肩、胸元まで伝って行きます。


「おや……勿体無い」


 そんな事微塵も思っていないようなわざとらしい口調でそう言うと、こぼれたワインを舐めるように首筋から下へと舌を這わせていきます。


「はぁっ……んっ……きょうっ……どうしたの?」


 お酒のせいかいつもと違う雰囲気のせいか、少し潤んできた目を向け辛うじて言葉を紡ぎます。

 そんな言葉を首筋から顔を離し、いつも通りの意地悪そうな笑みで覗き込んできます。

 いつも通りの表情なのに、いつもと違う光のせいか違った雰囲気に感じます。

 いつもだったらこんな見え方をしないのに……と思っていたら無意識にマクスウェルの頬に手を添えていました。

 サラサラの赤い髪に彫刻のように整った顔。とても人間らしく人間離れしたそれについ見とれてしまいます。


「……っ。そなた…そんな顔で愛おしそうに触れられては抑えもきかなくなる…」


 少し息を飲むように呟くと、私の持っていたグラスを窓辺に置き顎をくいっと持ち上げると、塞ぐようにその唇を押し当てて来ます。

 程良くアルコールも回っている私は、その呼吸も許さない程荒々しく口の中に進入してくる柔らかいものに、一切抵抗できずただその感覚に喘いぐ事しか出来ません。


「んっ……はぁっ……ん……」


 そのままベットに押し倒される形で横になると、覆い被さるようにまた口付けをされます。

 お互いの吐息と、口の中で響く音しか聞こえません。

 やっと解放されたかと安堵すると、さっきまで私の口の中で暴れていたそれを、今度はまた首筋に這わせます。

 また突き上げるような感覚に襲われていると、マクスウェルの髪が私の頬を撫でます。

 それはいつも通りの匂いがし、ふっと体から力が抜けます。

 そのままマクスウェルの頭を抱きかかえると、マクスウェルも顔を上げぎゅっと抱きしめ返してくれます。

 密着すると、リズムの良い心音が聞こえます。

 その音と、私より少し高い体温が気持ちよくそのまま眠りに落ちてしまいました。


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