宰相室1
短めです。
城内の装飾描写は今後追加予定です。
「何か……嵐のような人だったね」
「ふふふっ。ミレーニア様は昔からああいうお方ですね」
さっきまで居たミレーニアは、最近の貴族達に流行っている事や噂話や恋話と、女子会のような話をポンポンと一人で繰り広げ、颯爽と戻って行ったと思うとすぐに戻って来るや否やマクスウェルの腕を引いて森に行ってしまいました。
あんなに唖然とした表情のマクスウェルは見たこと無かったですが、お互い言葉を発する前に連れて行かれてしまいました。
「さあ、サキ様。準備が出来ましたのでそろそろ宰相室へ行きましょうか?」
ミレーニアの話をしつつクラレスの所に行く為、侍女服の準備をしていました。
「髪はどれが良いかなー?長いのか短いのか……」
「昨日の茶色の長い髪のものが大変お似合いでしたので、それで宜しいかと思いますよ?」
そう言って着々と髪をセットして行きます。
こっちの世界では色素が薄い茶色や金色の髪が多いらしく、私の黒やマクスウェルの真紅の髪は珍しいらしいです。
私の存在自体城内でも公表されていないので、目立たないように無難なもので纏めることにしました。
手早くアマリーが気付けをし髪をセットしてくれました。
「では、宰相室までご案内いたします。と言いましてもこの棟から真っ直ぐ城に延びる廊下を渡って、道成に行くだけですが」
「帰りは自力で戻ってくればいい?」
「私の手が空いていればお迎えにも行けるのですが、なかなか難しく……申し訳御座いません」
まぁ行きも帰りもお迎え付きの侍女なんておかしいですし、道順も簡単そうなので大丈夫でしょう。多分。
自分が方向音痴じゃないって信じてます……。
と言いますか、変装はしていますが今日は初めてお城に行けるんです!
ちょっと興味あったんですよねっ。絵本とか私の知っているお城のイメージと同じ感じでしょうか?
宰相室にお茶を運ぶ侍女って設定で行くことになったので、お茶セットを持ってアマリーに付いて歩きます。
陛下の私棟と城の間は通路で繋がっていて、廊下の大きな扉を開ければすぐに城です。
棟の方は落ち着いた雰囲気の、いかにも居住用といった内装をしていましたが、扉をくぐると景色が一変します。
白を基調とした色合いながら、足元にはゴミ一つ落ちていない、端に金の刺繍が施された真っ赤なカーペットがずっと廊下の奥まで続いています。
それは本当に踏んでしまっても良いのかと疑う程に手入れが行き届いています。
完全に呆けている私を尻目に、アマリーは先に進んで行ってしまうので、恐る恐るそのふかふかなカーペットの上を歩きながらアマリーについて行きます。
棟と城を繋ぐ廊下を抜け、城の一番大きな廊下に出ます。
その廊下の天井は、首を真っ直ぐ伸ばして見上げないと上まで見えない程高く、その天井には細かな彫刻が施されています。
壁の要所要所に設置されている燭台も、どれも手入れが行き届いていて、燭台自体が光り輝いています。
城、と言うよりは神殿に近いような内装をしており、見るもの全てが想像の斜め上を行っていて口が開きっぱなしになります。
ふとすれ違う人達に目を向けると、全員しっかりとした装いに身を包み背筋を伸ばしゆったりとした仕草で優雅に歩いています。
ただ廊下を歩くだけでもマナーが必要な空間なんですか……?
「ふふっ……。サキ様?もっと堂々としていて下さらないと怪しまれますよ?」
アマリーが少しトーンを落としそっと私に囁きます。
完全に観光気分でした……。そうでした私は今侍女を演じなきゃいけなかったんでした。
付け焼刃ですが、横に居るアマリーの真似をし、背筋を伸ばし堂々と歩きます。
途中何人か、貴族のような装いの方や騎士の方とすれ違う時は、端により頭を下げる等侍女らしい行いを実践で教えてもらいつつ、どうにか宰相室の前まで到着しました。




