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異世界少女の保護者は竜  作者: 鹿熊織座らむ男爵
第一章  始まり
11/30

二日酔い

 暖かいー……このふかふかぶりはベットでしょうか?いつの間にベットに移動したんでしたっけ?

 んーまだ眠たいしいっか。

 暖かい匂い……マクスウェルの匂いがしますね……竜ってもっと動物臭そうな印象ですが、マクスウェルは天日干しした毛布のような匂いがします。

 この暖かさといい匂いといい、マクスウェルが隣に寝てると思うのですが……。

 そう思いうっすらと目を開けると、やっぱり目の前にはマクスウェルー…の胸。

はだけたシャツの隙間から引き締まった胸元が見えます。

 しかも気付きませんでしたが私を抱き抱えるように寝ています!

 さすがに人型のマクスウェルの胸元は見たこと無い……あれ?竜って裸なのか!って違う!えーとえーと……。

 マクスウェルの腕の中から抜け出そうとした時気付きましたが、背中にも暖かい何かがくっついてます……。

 恐る恐る視線だけを後方に向けると、肩のあたりに金色の髪が見えます……。

 ……確かに昨日寝る前まで金色の髪の人と一緒にいましたが……まさか陛下じゃないですよね?

 え?三人で川の字になって寝てるんですか今?

 もう一度確認しようと少し動いた時、背中に抱きついていた陛下が少し動きました。


「んー……」

「ひゃっ!」

「……っ」


 陛下が少し動いた事でそのふわふわの髪が私の首筋に触れ、変な声が出た挙げ句目の前の胸に顔をぶつけると言った玉突き事故勃発です……。

 陛下は何事も無かったかのように私の背中に顔を擦り付けてきますが、そのたびに髪が首筋に触れるので、くすぐったくてしょうがありません。


「ふっ……んんっ……」


 くすぐったくてだんだん体が前屈みになりますが、そうすると目の前のマクスウェルにしがみついてしまう形になってしまいます。取り敢えず陛下が大人しくなるまで必死に声を殺し耐えます。


「んっ……サキ……?そんなにしがみついてどうしたのだ?」


 少し目線を上げると、金色の瞳がまだ眠そうな眼差しで私を見下ろしていました。

 これだけグイグイしがみついてしまえばしょうがないかもしれませんが、マクスウェルが先に起きてしまうなんて……。


「マクスウェッ……んんっ!」


 状況を説明しようとしますが、背中でもぞもぞ動くふわふわなものが容赦なく首筋を襲います。


「っふははははっ!サキっくすぐったい」

「だってぇ……」


 マクスウェルは私の言葉を遮り、私の頭を抱き抱えコロコロと笑い出します。

 もう!寝る時はちゃんとシャツ着て下さい!この体勢ですと体温とか鼓動とか直接体で感じてしまいドキドキしてしまいます!

 きっと顔も真っ赤だと思います。


「あらあら……おはようございます、サキ様マクスウェル様」

「あっ!アマリーさん」

「サキっ、くすぐったいから話すなっ……ははは」


 起こしに来てくれたアマリーさんですが、この光景を見て笑い転げてます。 

 早く陛下を起こしてくださいよアマリー……。


「ふふふっ……これではサキ様昨夜はさぞ暖かかったでしょうね、ふふ。さぁ、陛下起きて下さいませ」


 笑いつつ私の背中にくっついている陛下を引き剥がしにかかりますが、私を抱き枕のようにしっかり抱え込むだけで起きる気配がありません。

 その間にマクスウェルはさっさと抜け出してアマリーと楽しそうに私を眺めています。


「うーん。困りましたね……ただでさえ陛下は寝起きが悪いんですが、お酒も入ってるようですしこれは……」

「私の出番ですかね」


 振り向けないので顔は分かりませんが、この声はクラレスですね。

 もうクラレスが陛下を探しに来るほどの時間なのでしょうか……背中で感じる限り相当怒ってますね、うん。


「この馬鹿を引き剥がすので、竜皇陛下サキを持ってて下さい」

「えっ……クラレス様力ずくですか?」

「ちょっと引っ張るだけです」


 もう声色的にもちょっとじゃないですよね?

 現にしっかりと私を抱えたマクスウェルもニヤニヤ楽しそうな笑みを浮かべてますし。

 そんな事を考えていると急に後ろに引っ張られました。


「……っ!いったい!痛い痛い!」

「フィアハルト……いつまで寝ているのですか?それになぜここで寝ているのです?」

「あっクラレ……って痛い!」


 ようやく体から陛下が離れたので振り替えって見てみると、陛下はがっちりとクラレスに髪を引っ張られていました。

 やっぱり力づくじゃないですか!しかもその光景を楽しそうに見ているアマリーを見る限り、これは日常茶飯事なんですね……?


「ふふっ。昨夜飲み比べをしてな、そのままサキのベットに潜り込んで寝てしまったので放置していたのだが……面白いものが見れたな」

「竜皇陛下に飲み比べを挑むなんて……フィアハルト、やはり馬鹿なんですか?」

「あぁー……そうだった。頭いた……」


 陛下は完全に二日酔いのようで、ベットから起き上がってすぐにソファに倒れ込むように座りました。

 アマリーの準備したお水を飲んでますが、この様子では今日の公務は難しいんじゃ無いでしょうか?


「マクスウェル、飲み比べなんて絶対勝つじゃん。確信犯」

「いや、我もそう言ったのだが、それでも大丈夫と根拠の無い自信を振りまいておったのでな。特に断る理由も無かったのでやったまでだ」

「本当にうちの馬鹿陛下が……。陛下、二日酔いで辛くともそれは自業自得ですのでいつも通り公務はしかりやって頂きますからね。それとサキと竜皇陛下に迷惑をかけたので、当分サキと会うのを禁止します。浮かれすぎなんですよ……これも自業自得ですので」


 そう言うとクラレスは有無を言わせぬ勢いで、陛下を引っ張って連れて行ってしまいました。

 部屋を出ていく時の陛下の顔は当分忘れられそうにありません……。

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