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異世界少女の保護者は竜  作者: 鹿熊織座らむ男爵
第一章  始まり
10/30

一日の終わり

途中からマクスウェル目線になります。

ここも(いつか)加筆修正予定です。

ご意見ご感想を頂けると泣いてストーカーしますのでお待ちしております。

「あー……何とか今日のノルマ終わったぁ」


問題集を解いて答え合わせをし、次の勉強をして明日その試験と今日間違えた箇所の再試……。

自分で望んでおいて、毎日この繰り返しなのかと思うと気が滅入りそうです。

すぐに宿題を始めないと間に合わなそうな量ですが、ちょっと知恵熱気味なのでソファでゴロゴロしているマクスウェルの上に乗っかって一緒にゴロゴロ中です。


「その割りには随分楽しそうだったではないか」


私のソファになっているマクスウェルが、起き上がりながらニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべています。


「えー?マクスウェルが掃除してるの見るのは楽しかったよ?」


起き上がったマクスウェルにぐったりと寄りかかりながら思い出し笑いをします。

マクスウェルも慣れない掃除とかでぐったり気味ですけど、人の事言えないほど楽しそうにしてましたしね。

ここでの生活二日目は目まぐるしく過ぎてしまい、もうすっかり夜も深けてしまいました。

この時間になってやっとゆっくり出来ます。


「そう言えば今日午後からずっと部屋の中に居たけど体調は大丈夫なの?」

「ああ。ここは直ぐ裏に森があるから半日もゆっくりすれば問題ないよ。そなたも一日室内で息苦しかったろう」

「うーん……何か凄く疲れた……」


マクスウェルは楽しそうに私の髪を撫でています。何かこうやってマクスウェルとゆっくりしたり、髪を撫でて貰うのが凄く久しぶりな気がします。

見上げる顔はいつも通りの見慣れた彫刻美。ただ今日は少し疲れているのか意地悪そうな笑みは無く、少し気だるそうな表情をしています。気だるそうにしているとなんと言いますか……凄い艶かしいと言うか凄い色気と言うか……。

マクスウェルにもたれ掛っているので接している所が仄かに暖かいです。竜って人より体温が高いんですね……疲れもあいまってこのまま寝てしまいそうです。


「ふさふさしてる竜って居ないのかな?絶対暖かくって気持ち良いと思うんだよね」

「それは寝言か?いきなり何を言っておるのだ」


考えていたことが口から出てしまい思いっきり笑われてます。

竜の姿のマクスウェルも今みたいに暖かいのですが、鱗が固すぎるんですよね。


「マクスウェルって暖かくて気持ち良いんだけど、ふさふさしてないのが難点なんだよねー」

「うむ、要は眠たいのだな?」


そう言って私を抱き上げてリビングから寝室に向かおうとした時、丁度ドアがノックされました。

入って来たのはなぜかお酒の瓶と軽食を持っている陛下でした。


「まだ起きてるかい?今日はお疲れ様っ!少しいいかい?」


そう言えば陛下、私の勉強疲れを癒す担当に就任してたんでしたっけ?

まさか本当に来るとは思ってもいませんでした……陛下はもう湯浴みも済ませたのか、楽な部屋着姿です。

いくら自分のプライベートな棟とはいえ、随分と無防備な姿ですね……。

陛下はそのままテーブルの上にお酒と軽食を広げソファにごろっと横になり、その長い手足をめいっぱい広げ伸びをします。


「んー……!ようやく一息つけるー。思ったより仕事が片付かなかったんだよね」

「今まで仕事されてたんですか?」


二人で陛下の正面のソファに座りなおしつつ、もう日付も変わる頃だというのに仕事していたっぽい発言につい聞き返してしまいました。

マクスウェルは特に気にする様子も無く人数分のグラスにお酒を注ぎ、陛下に渡しています。


「うん、さっき終わったところだよ。本当ならもう少し早く終わる予定だったのだけど、ミレーニアがね……明日の昼食を一緒したいってごね始めてね……」

「では明日ミレーニア様もご一緒出来るんですか?」

「私としては明日はサキと二人で過ごそうかと思っていたから……兄弟喧嘩程ではないが、少しもめたのだよ」


思い出したかのように溜息をついています。

確かに今日は途中からマクスウェルも居たので二人っきりでは無かったですね。

マクスウェルもそう思ったのか、意地悪そうに目を細めて笑っています。


「そなたの妹も居るのなら、我も同席しようか」

「これ以上いじめないでくれよ……」


そう言いつつ二人とも楽しそうにお酒を呑んでますね。なんだかんだ仲良しですね。

私もお酒を受け取ったのは良いのですが……これはブランデー?ですか?

テーブルの上の明かりしか点けていないので、グラスの中が綺麗な琥珀色です……。

ワインを二、三口呑んだだけで寝てしまった覚えがあるのですが、ブランデーってワインとどっちがアルコール強いのでしょう……?少しだけ呑みつつ二人の話でも聞きましょうか。


「そなたこんな時間に尋ねて来て、もしサキが眠っておったらどうするつもりであったのだ?」

「んー?起こさない程度に口付けしてから君を起こしに行くかな」

「皇帝ともあろう者が夜の森に一人で来るつもりだったのか?竜に会いに?」


そう言うとマクスウェルは面白そうにコロコロと笑っています。

薄暗いところで竜の姿のマクスウェルを見るのは慣れていても一瞬ビックリしますよ?

でもビックリしてるのを想像すると少し笑いが……。


「えーそんな二人で笑わなくても良いじゃん。とりあえず誰かと呑みたい気分だったしさー」


少し拗ねたように腕を組みそう言う陛下の姿を見て、よけい笑いが止まらなくなりました。

目に涙をいっぱい溜めて笑っているマクスウェルを最近はよく見る気がします。


「はははっ……では明日からはそなたが来ても良い様に部屋で休むとするかな」

「一人でも森まで行けるからそんなに気を使わなくても良いぞ?」

「寝ぼけて食ってしまっても良いのか?」

「よし部屋で寝てくれ」


もう二人の会話を聞いているだけで楽しくて疲れも飛んでしまいます。

笑いすぎてお酒が結構回ってしまったらしく、もう頭がふわふわしてきました。でもまだ聞いていたいのでもう少しこのまま……。


                ・                                    ・                                    ・


「サキ?眠ってしまったのか?」


 先ほどまでコロコロと楽しそうに笑っていたサキが、気付いたら我にもたれ掛って寝息を立てている。

 サキが我にもたれ掛ってくる事自体は取り立てて珍しくも無い事だったので、寝息が聞こえるまで気付かなかったな。


「ふふっ。疲れが出たようだね、可愛い寝顔だ……」


 いつの間にか立ち上がっていたフィアハルトがサキの顔を覗き込んで目を細めている。

 忘れておったがサキは酒に弱かったのだったな。疲れもあるだろうがこんな無防備に眠ってしまったのは酒のせいであろう。

 いつも通りサキを持ち上げ寝室に連れて行こうと立ち上がると、フィアハルトが顔を跳ね上げ我を見上げてくる。


「マクスウェルっ私がサキを運びたいのだが!」

「ん?だがそなたが持ったらサキが起きてしまうと思うが……」

「運ぶだけだから大丈夫だよ」


 目を輝かせてそう言われても、と思いつつもそっとフィアハルトにサキを渡す。

だがやはり、その長い睫がかすかに震えたかと思うと閉じていた瞳がゆっくりと開いてしまった。


「あっ……起こしてしまったかい?」


 申し訳無さそうな声色でフィアハルトがそう言うが、サキの事だ直ぐに頭は働かぬだろう。

 今もきっとその瞳に映る人物が誰なのかも分かっていない筈だしな。

 ただ無意識に普段と違う人物に抱き抱えられている事は分かるのか、虚ろな瞳のまま見上げている。


「ほら言ったであろう。サキをこちらに……」


 フィアハルトの腕からサキを受け取りなおし髪を撫でてやる、そうすると気持ち良さそうに我の胸に顔を埋め再び眠りに入る。

 しばしそのまま待つとすっかり寝付いたのか先ほどのように寝息が聞こえてきた。

 起こしてしまった罪悪感からか、フィアハルトは我の腕の中で眠るサキには触らずただ目を細め眺めることにしたようだ。


「……やっぱりマクスウェルの方がサキの扱いに慣れてるね。悔しいから今日はサキに添い寝しちゃおうかな?」

「それを我が許すとでも?」

「……なぁ、このまま二人でサキを抱いてしまえば抜け駆けとかでは無いんじゃないか?」

「……それは……良い相談だと思うが、どちらがサキの初めてを奪うかで戦争になると思うぞ?ちなみに我は譲る気は無い」

「……気にするところはそこなんだね」


 嬉しそうに声を殺し笑っているフィアハルトを横目に、寝室に移動しサキをベットに置く。

 置いて少し離れるとサキが何かを探すように手で空を切るような動作をしだしたので、着ていた上着を脱ぎ持たせてみる。

 上着を手にとりそれに顔を埋めるとそのまま大人しく眠ってくれたようだ。

 全く……まだまだ子供のようだな。


 止めなければフィアハルトはずっとサキの寝顔を見ていそうだったので、首根っこを掴み早々に隣に戻ることにした。

 まぁフィアハルトと二人で話が出来る時間が取れた事だし、たまにはゆっくりするのも良いかも知れぬな。


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