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断絶の魔法師  作者: 永地 京
一章 境界の理
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5 お城へ

 シルバ様の洗礼から三ヶ月が経ち、俺は再びフィーナの着せ替え人形になっていた。


「今日はお披露目式だよね。どこでやるかフィーナは知ってるの?」


 日本で言う成人式的な催しである、お披露目式が今日この国では行われる。

 そのための身支度を俺はしていると言うか、されているというわけだ。

 ズボンのベルトから上着のボタンまでフィーナにまかせっきりで、手持ち無沙汰な俺は、生まれて初めての外出を前に少し浮き足立っていた。


「毎年お披露目式はフィールラリア城で行われます。その年の五歳になる貴族の子女が一同に返すことになるので、毎年かなりの人数が集まることになりますね。それに、今回は六星議会、その全員の嫡子が参加なさるので、式も例年よりも大々的に行われるでしょう」


「へぇ。六星議会の人たちってそんなに凄いんだ」


「はい。国王陛下、四公爵家家長、それと聖円教最高司祭様の六人で国の政策等を決める重大な議会ですからね」


 なるほど、六星議会はこの国のトップたちの集まりだと。

 そうこう話しているうちに、着替えも終わり、俺は母とフィーナと一緒に馬車に乗り込んだ。

 ちなみにクアンは現地で合流する予定である。

 生まれて初めての外出、しかも行先は前世では縁のなかった王城である。

 …………やばい、ちょっと緊張と揺れで気持ち悪くなってきた。


「お母様。王宮はここからどれくらい離れているんですか?」


 異世界にエチケット袋とかちゃんとあるのかな。

 気を紛らわせるために俺は向かいに座るリーシアたちに話しかけた。


「そんなに遠くないわよ。馬車で一時間くらいかしらね」


「そうですね。気分が悪くなったら遠慮なく仰ってくださいね、シーア様。」


 そう言ってフィーナは何処からともなく小さな壺を取り出した。それは一体何のために使うものなんですかね、フィーナさん。

 それにしても。一時間揺られるのかぁ。…………遠くの景色を眺めていることにしよう。


「そう言えば。よくお父様が前に魔獣狩がどうのと言っていましたけど、こういった馬車は襲われたりはしないんですか?」


 この世界には魔法を使う動物、俗に魔獣と呼ばれる生物がいる。

 人間と違い、魔獣は単一の魔法しか扱うことが出来ないらしいが、それでも人間以上の戦闘力を持つ生物が、物理法則を超えた力で襲ってくるのだ。それの被害をうちの糞親父(クアン)は俺をビビらせようと事細かに伝えてくるのだ。そう言う事をするから煙たがられるんだとクアンは分かっていないのだろうか。

 幸いなことに人間の脅威となる魔獣はそうそう現れないらしいく、うちの領地にあるという『常夜の森』でも、年に数匹いるかいないかと言うレベルの話しらしい。

 しかし、魔獣出なくともクマとか狼とかだって普通に生息しているらしいし、馬が襲われたりはしないのだろうか。


「ふふふ。心配しなくても大丈夫よ、シーア。この国の主要道にはね、ラインが通っているから」


「ライン、ですか?」


「ええ、ラインよ。正確には……何だったかしら?」


「国家級広域展開補助魔法です。リーシア様」


「そうそう、それよ。それがあるからこうした馬車が通る様な道には魔獣とか危ないものは入って来られないの」


 へぇ。便利な魔法があるんだな。

 でも、そんな大規模な魔法、誰が発動してるんだ?


「主に地中に流れる魔力流の龍脈や、大気中の魔力。そして、ラインの上を通る全ての生物からほんの僅かに魔力を貰って維持されているんですよ。ラインは防御障壁の魔法だけでなく、声をラインの通る場所に送ることも可能なんです。ですから、魔法先進国の殆どでラインは敷かれています」


 電話線かつ防御障壁になる魔法か。

 吸収される魔力も微々たるもので、言われても分からないレベルだしな。

 魔力版税金みたいなもんだと思えばいいのか。


 なんやかんやと暫く馬車に揺られていると、次第に綺麗に整備された道に出て、行き交う馬車も次第に増えてくる。

 初めて見る王都の街並みは俺の胸を高鳴らせるに充分なものだった。

 窓から見える街並みは活気に溢れ、馬だけでなく大きな蜥蜴が荷車を引いていたりする。


「すごいですね。こんなに栄えていたんですね。この国は」


 あの蜥蜴って高いのかな。お小遣い貯めたら俺でも買えるかな。


 今日までの五年間、俺は屋敷の敷地内のみで生活していたから、こんなに豊かな国だとは知らなかった。

 勿論、これがこの国の全てでは無いということは分かっているが、それでも道ゆく人々の顔には輝かしい笑顔に満ちている。

 やがて、人の波を超えて、馬車だけが行きかう道幅の広い道に出て暫くすると、大きな壁の前で馬車が止まった。


「ここが、王宮ですか?」


「ええ、そうよ。大きいでしょ?」


 …………大き過ぎませんかね。

 想像の三倍くらいの規模なんですけど。

 右手に見える塔とか建築基準法とかに引っかからないのか心配な高さなんですけど。

 お城って行った事ないから分からないけど、これがスタンダードなのか。


「さぁ奥様、シーア様参りましょう。中で旦那様がお待ちですよ」


 リーシアとフィーナに手を引かれ俺は王城へと足を踏み入れた。


予告通り、次話は零時投稿する予定です。

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