表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
endless the World War  作者: うぃざーど。
第1章 大地へ
9/65

1-1 豪腕の戦斧

この人生は旅である。

その旅は片道切符の旅である。


往きはあるが帰りはない。



 一度扉の鍵を使うと、その扉は二度と閉じることはない。


 一度その空間の中へ入ると、その空間からは二度と出られない。


 一度起こってしまった出来事は、誰にも消すことは出来ない。



 グランバートの悲劇。

ソウル大陸北部ゼータ地方にある、大国グランバートの象徴、グランバート城。悲劇は一夜にしておき、そして一夜で城とそこに住む人々のほぼ全員を失った。ただ二人だけの生き残り、カリウスとメロディ。世間に飛び出してしまった魔道の杖を取り返すため、今彼らは大地に立つ。


 二人が城を脱出してから、3日が経過した。この時点ではまだ、世界情勢に特別変化はない。グランバートでそのような事件があったと知る人も、この時点ではまだ少ない。しかし、政治の中枢、軍務の拠点が消えた影響は大きいだろうと考えられ、その情報はすぐに各国に知れ渡ると考えられていた。

 そうなれば、グランバートはどうなるか。想像に容易い。


 「ん…?」

 「誰かな、あれ」


 3日後の昼間。二人には陸上車両などの交通手段はなく、歩きで近くの町まで向かっていた。道化師がどこへ消えたのかも分からず、まずは町で情報を集めるのが先だろう、と二人は考えたのである。

 その途上。崖と崖を繋ぐ橋の手前で通せんぼする、一人の若き男がいた。


 「悪いが、ここは通さねぇ」

 「どうしてだ?俺たちはこの先の町に用がある。どけてくれ」


 突然若き男が話しかけてきた内容に、流石に二人も驚いた。初対面でいきなりこの先には行かせない、などと言われると、無理もない。


 「通りたければ…金を置いていけ。でなければ、俺を倒すことだ」

 「だって、カリウス。どうする?」

 「通るしかないよ」

 「でもあの人、全然悪そうに見えないよ。何か事情があるんじゃない?」


 メロディがその男にも聞こえる程度の声の大きさで会話する。もちろんその男にもその内容は聞こえてきたが、最初にそれを聞いた時、その男は驚愕の表情を浮かべた。カリウスは、確かにそうは見えない、と少しだけ笑みを浮かべながら返答した。

 と、その時。少し取り乱したような姿で、その男は斧を取り出した。豪快な金属音が短く響く。


 「問答無用!!」

 「やるしかないか…!」


 男が高速で斧を振り抜くと、カリウスもすぐ剣を抜いてその攻撃を防ぐ。互いの武器がぶつかり合った瞬間、カリウスの手に強烈な刺激が伝わった。剣を打ち合ったことは何度もあるが、これほどの衝撃は初めてであった。

何度も打ち合う度にその男の力強さを感じ、この男は一体何者なのだろう、とカリウスは考えた。


 「中々やるな!」

 「そっちこそ…」


 だが、いつまでもここで戦っている訳にはいかない。何度かの打ち合いの後、カリウスは力押しでいったん間合いを開くために飛び上がった。これで少し落ち着けるか、と思いきや、その男は素早く移動し戦斧を振り下ろした。やや反応が遅れたカリウスは一瞬斬られることも考えたが、すぐに剣を前に出して受け止めた。お互いの武器がぶつかり合って激しく攻防する。カリウスにとっても、これほどまでに強敵と戦うのはあまり経験がない。カリウスは勝負に出る。

 互いに押し合っている膨大な力を利用し、カリウスは一瞬力を抜いた。その瞬間その男の体勢が前へ崩れる。この時点でその男も引っかかった、と感じたが既に遅かった。カリウスは剣の柄を軽くその男の顎にぶつけ、怯んだ隙に斧を弾き飛ばした。体勢の崩れたその男の背後で、地面に戦斧が刺さり虚しく音を立てる。


 「勝負あり、だね」

 「…見事だ」


 カリウスが剣を収めて、その男の横を通り過ぎようとした瞬間。再びその男が言葉を発し始める。


 「大したもんだぜお前!こんなに強い相手と対戦できるとは!!」



 あまりに突然すぎて、カリウスも、そしてメロディも、思わず表情を崩す。



 …。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ