4-16 the War
…。
「この感じ…誰だ…くっ!」
激しい戦闘が繰り広げられている。レイの目の前に現れた女性も同じく、国境なき独立軍の所属の者で、男に負けないほどの力と技量でレイを攻撃してくる。まるで待ち伏せを受けたかのような形となったが、レイにはこうする理由が分かっていた。自分で、理解したくはないものであったが。
「これでは先へ進めない…!!」
「それで良い。邪魔をする者は容赦しない…レイ」
「…俺の名を…!?」
初めて聞いた、その女性の声。細身で剣を持ち、防具を身につけないという度胸に似合った、力強い声であった。初めて声を聞き、彼は驚く。独立軍には女性も参加しているという事実を前に、その圧倒的なまでに力に彼は防戦を強いられる。
「お前たちは道を誤った。すべて戦争を拡大させるための戦争に過ぎない」
「…もう、何度も聞いた」
「手遅れになる前に手を退くか、それとも…」
「たとえ間違っていた道だとしても、この戦いを終わらせないことには、すべては始まらない…!!」
戦場は混乱を来している。両軍入り乱れ激しい攻防が続いているが、独立軍がミサイルの存在を関係なしに、携行型の砲撃で連合軍を攻撃し始めたために、随所で爆発が発生する。地面は揺れ、激しく音が鳴り響く。空から降り注ぐ雪などすべて融かしてしまうかのごとく。
その中で、アイクも目の前にいる男と必死に戦っていた。既に十数分も戦っているが、お互いに一歩も油断を見せられない状況が続いていた。だがある時、その揺れが武器弾薬倉庫を襲う。
「…やるな。敵ながら見事なもんだぜ。お前、名前は何て言うんだ」
「ギュネイ、だ。アイク…ここで、ケリ付けようぜ…!」
「…やるしか、ねぇな」
アイクは頬に少し笑みを浮かべ、戦斧を構える。ギュネイと名乗った男も、それを見て態勢を整えた。
二人が突入しようとした、その瞬間。先ほどよりもさらに激しい揺れが、倉庫内を襲う。突然やってきた大きな揺れに反応が遅れ、アイクはその場でバランスを崩す。ギュネイも同じようにして足が止まり、一瞬で周りを見渡す。何か砕けるような音が数秒間響き渡り、背筋を凍らせる。嫌な予感がする。その予感は、天井から無数の瓦礫が落ちてくるというもので、現実のものとなった。
急いで二人は反対方向へ避ける。間合いが一気に広くなる。アイクは倉庫の奥側へ、対するギュネイは入り口側へ退避行動を取った。そこでギュネイが、ここぞというタイミングで、腰から黒い球体のものを取り出し、安全ピンのようなものを抜いて、倉庫の奥へ投げ込んだ。
「何っ…!?」
「…アイク、許せ」
アイクの目の前に、空しいような音を立てながら転がってきた、黒い球体。それが何なのか、アイクには大体察しがついた。そして、この部屋は武器弾薬倉庫である。結果は、既に明らかであった。
「何だ…何が起こっている!?」
「わ、分かりません!大規模な爆発が!!」
「何だ…!?」
「爆発か…!!」
施設内でも当然のように観測された、大規模な揺れ。今まで以上の激しい揺れが継続して襲い掛かり、足を止める。これが敵によるものなのか、それとも攻防戦の結果発生した事態なのか、もはや詳しい情報は明らかではなかった。
「少佐!離脱の準備を!!」
「頼む!!」
軌道制御室のもう一つの扉。バトラー少佐が逃げるために使った道が、まだそのまま残されている。発射シーケンスが開始され、そして残り5分を切った。軌道制御室からでは、もはや発射を止めることができない。最終的な管制はすべて終わっており、軌道制御と機械モジュールの切り離しが完了してしまっていた。
スクリーン上に映る、オーク大陸の街。
わずかに、遅かった。この事態を知った者だけが、絶望を知り得る。
しかし、彼はまだ絶望していない。
「…フィル、じゃぁ…行ってくるよ…」
そして静かに、軌道制御室の扉は閉じられる。思いをぐっと胸に詰め込み彼は走り始める。
「発射まであと3分!時間がありません!!」
「なんとかして発射を阻止できないのか!?」
「駄目です!これ以上はあまりに危険です!」
現場で指揮を執り続けている高級士官たちも、もはやどうすることも出来ない状況にあった。内部にいる連合軍の部隊を通じて何とか情報を得ることに成功したが、既に発射3分前で止めることができない、という。このままでは、再びどこかの土地へ大型のミサイルが着弾し、被害が拡大することになる。
准将のそばへ戻ってきていたクロス大佐が、情報士官に言う。クロスは、広場内での制圧をほぼ終えたが、部隊の統制がとれていないため、施設内への突入ができずにいた。そこで、発射間近であることを聞かされる。
「…カリウスたちからの連絡は」
「依然、応答ありません…」
「…まさかな…」
爆発、炎上する施設の方角を見て、クロスは表情を硬くする。
「…何をするつもりなんだ…」
カリウスは、施設内を猛スピードで走っていた。残り僅かに迫った発射を前に、彼は基地の外へ出るのではなく、基地内部からミサイルサイロへ通じる通路を走り続けた。一発の弾頭が、今まさに射出される瞬間を迎える。残り1分となったところで、彼は何とかミサイルサイロの下に辿り着く。ミサイルは既にカウントダウンが開始されており、フロア内に無機質なカウントダウンの声が響き渡る。
誰もいないミサイルサイロフロアの1階。カリウスは携行型ミサイルを構える。
「…俺たちを殲滅する。その手段にこだわりすぎた」
「発射20秒前。ブースター点火!」
…フィル。ようやく、分かったよ。
…。




