4-14 meet again
タイムリミットは近付く。
彼の前に現れた、最早過去の人物。
そこで、時は彼女の涙を知る。
ミサイル発射シーケンスが開始され、30分という短いタイムリミットが作動した。その情報はすぐに連合軍の各隊に無線により通達される。もはや敵味方の無線が交錯しており、正確な情報であるかどうか、確認ができない状況に陥っていた。
混乱を極める戦場。その中、外の激しい戦争とは裏腹に、静かで薄暗さに満ちた世界の中に、二人の男女が出会う。
「…」
「大陸に来てから、貴方の名前を聞いて驚いたけど…噂は本当だったのね」
フィルと距離をあけ動きを止めているその男。男の表情は硬く、揺らぐことがない。それに対し、フィルの表情には迷いや不安といったものが明らかに見えていた。誰が見ても、そう思ったことだろう。二人の複雑な事情が、彼女の表情に反映されている。
その男、バトラーはフィルから視線を離して、機械の操作を始める。
「もうやめてよ“お父さん”!こんなことして…何になるっていうの…!?」
「私はもう…いや、最早お前の父ではない。その資格は無い」
二人の、再会。
ある時突然、彼女の前から姿を消した父の存在。数ヶ月前、カリウスたちと共にネオスを追うようになった時、一度だけ父のことを彼らに話したことがある。彼女は、父が何度も家を空けている理由をよく知らず、ただ仕事上のことなのだろうと理解し、特に問い詰めることもしなかった。フィルは、自分を育ててくれたこの男が、本当の自分の親ではないことを知っていた。それ故に、親身になって関われない機会もあった。
しかし。
まさか自分の義理の父が、かつて6年前のアミストラス戦役で敗戦し、滅亡したルウム公国の軍人だとは、知らなかったのである。
「…ただ、そばにいてくれるだけで…私はただ、それだけで…」
「常人に、分かるものではない。だが、誰かがやらねばならんのだ。その身をもって行動を示し、成就を物にし世に伝える。国家や国籍が意味を持たないものとして、それがこの世界に相応しき状態であることを、証明する」
フィルはその場に崩れ落ちた。大粒の涙を流しながら、親のいない自分を育ててくれた、男の前で。バトラーは残り10分に迫ったミサイル発射を前に、軌道制御室で最終段階を整える。目の前にフィルがいても、彼は留まることはできなかった。国境なき独立軍が目指す目的を果たすために、それを筆頭に導き続けてきた一人の男として、彼は戦場にいる。
「…フィル。時代は変わった。これ以上、私から言うことは何もない。自分がすべきだと思う道を、往くがいい」
「…お父さん…私、は…」
その瞬間。
扉からこの空間へ入るもう一人の男が、フィルに、そしてバトラーにも見えた。その男は入った瞬間、近くにいた女性の横顔を見て、それがフィルであると確信したように、彼女の名前を呼んだ。そしてその男が彼女の名前を呼んだ瞬間、バトラーが動いた。
「お前か!!」
「何っ…!?」
バトラーの存在に気付いたその男は、高速で抜刀しようとする。彼が気付くよりも早く動いたバトラーは、腰に下げていたホルスターから拳銃を取り出し、素早くその男に向けて発砲する。正確な狙いをつける時間もなく、ほぼ勘のような形での射撃となった。
一発の発砲音がその空間に響き渡る。反応に遅れたその男は、抜刀をし終えた瞬間に、剣の柄に直撃する。強烈な衝撃が腕から全身に伝わり、その強さに彼は剣を弾き飛ばされてしまう。視線はバトラーへ残したまま、勢いに負けて態勢が崩れそうになる彼を見て、バトラーは再び、拳銃のトリガーを引く。
彼と彼女が、同時に目を見開く。
―カリウス!!!
…。




