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endless the World War  作者: うぃざーど。
第4章 The Birth of the Endless
58/65

4-12 reason

理想を掲げ戦いを起こす。

すべてを成し遂げ、その言葉を実現させるため。


今、破壊という行動を正当に導く。



 「…これは、俺がこの組織…そう、国境なき独立軍に入った時に決まった定めだ」



 バーチ渓谷地帯の奥に潜む、敵の脅威。ミサイル基地という、大陸のほぼ全域を攻撃可能な兵器所。その所在を突き止めた連邦軍は、狭い谷の間を潜り抜け、大部隊を侵攻させた。それに対抗する、敵の猛攻。お互いの力がぶつかり合い、弾け合い、そして散っていく。

 最前線で戦いながら指揮をするクロス大佐は、敵軍による激しい交戦の末、混乱による指揮系統の障害に遭い、部隊との連携が取れずにいた。施設内部への侵攻ではなく、ミサイル基地外周面での大規模な戦闘を行っている。ミサイルを取り扱うせいか、敵も連合軍も、携行型ミサイルや自走砲などを、使用しなくなっていた。はじめ一方的な空中戦では、対空砲が使用されていたが、陸戦部隊が突入し始めた頃から、断続的に近接戦闘が続いている。

 その渦中に彼らも巻き込まれ、味方と無線連絡を取るような時間的余裕を失っていた。カリウス、レイ、アイクの三人は戦闘の中でお互いを見失った。


 「ルウム公国は、グランバートとエルジアの侵攻に挟まれさえしなければ、国としての機能を失うことはなかった。他の大国と肩を並べるほどの技術力を持ちながら、屈辱的な敗北を喫した」


 「…やはり、これはお前たちの…」


 「復讐と、言われても良い。しかし、俺たちにはそれ以上に、目的がある。あの核攻撃もその前段階だと言われている。…俺たちは、大罪を犯した。決して許されるべきではない行為を決意した。そうまでしなくてはならないという状況を、俺たち自身で作り出した。ここまで来たからには、すべてを完成させなくてはならない…理想のために」


 「協定の街を破壊したのも、罪もない人を巻き込んだのも、すべては理想のためか」



 「…そう、俺たちの理想を掲げ、それを成し遂げるため。それを果たすには…貴方を倒さなくてはならない」


 ヴァルサーは、剣を自分の胸元に構える。それを見たカリウスは、長いローブを少し触れ、その場でゆっくりと剣を抜く。お互いの、使命を背負った眼差しがぶつかり合う。


 「それなら…俺も、止めなくてはならない。これ以上、無用な血を流させないように…」



 戦闘は激化していく。その中で、ヴァンス准将が設置した臨時の司令部には、少数ながらも情報員と無線担当者が常に情報収集に当たっている。司令部の周辺では戦闘は起きていないが、たまに聞こえる爆音が精神面を不安にさせる。恐らく敵を一掃するために、手榴弾が使用されているのだろう。弾道ミサイルに影響がなければ、幸いであった。


 「…大丈夫、かな…」


 メロディは、胸に両手を当てながら、刻一刻と変化しているであろう戦場をそばで眺めていた。彼女たちは、戦闘に参加することが出来ない。もし彼女たちにその力があれば、もしかしたら、参加したかもしれない。

 メロディは、少し前に出て周りを見渡した。


 「…え…?」


 戦闘の激しさを物語る負傷者も、次々と運ばれてきている。腹部を切り裂かれた者や、目元や頭から血を流す人もいる。そんな中、メロディはある一つの異変に気付いた。それはあまりに突然のことであった。



 「…フィル…?」



 一方。カリウスとヴァルサーの戦いは、更に苛烈さを増していく。実はこの二人は歳の差が3歳しか違わなく、お互い青年であったが、お互いにこのことを知りようは無かった。カリウスが早い攻撃でヴァルサーにくらいつくと、ヴァルサーは防御の姿勢を崩さず、カリウスから放たれるすべての斬撃を受け止め、反撃の機会を伺っている。薄暗い部屋の中を移動しながら、二人は戦いを続けている。外の音も殆ど入って来ず、しかし目の前の戦闘による音は、ハッキリと聞こえていた。


 「カリウス…貴方ほどの男には、分かっているはずだ。かつての戦争の形が、ここ数ヶ月で大きく変わった…その要因に、自分たちが含まれていることを…!」


 「…きっかけがなければ、こんなことはしていなかった…!」

 「そしてもう一つ…!目的さえはっきりとしないこの時代の戦争は、国が主導で行っている。国と国という線引きが、全てを駄目にしている!!」


 ヴァルサーがカリウスの攻撃を一瞬でしゃがんでよける。その回避行動をカリウスは読めず、真下から振り上げられるヴァルサーの攻撃に対応が遅れる。それでも何とか剣で受け止めたが、すぐに顔面に蹴りが入り、直撃を受ける。その場でバク宙して後ろへ着地し、間合いを広める。

 お互いの距離が開き、時間が生まれる。



 「…貴方がどれほど強いのか、ようやく分かった。バトラー少佐が言うように、貴方たちはあまりに強大な力を手にしている」


 「やはり…残党軍…!」


 「今はもう、その呼び名ではない。理想を掲げるために生まれた、国境なき独立軍だ。それぞれ道は違うが…戦うことに変わりはない」





 この一撃にすべてを込める。貴方との時間で見出し得たもの、すべてを…




 この時。カリウスは改めて、残党軍、いやルウム公国に生きたこの男たちが何を目指すために戦っていたのか、ハッキリと分かった。そして、その気持ちを自分の中で理解し、押し殺した。

 『国境なき独立軍』が掲げる理想。連合軍が貫く現実。お互いに成し遂げたいものがあり、叶えたいものがあり、そのために戦い続けている。たとえ腕や足が無くなっても、生命が散っても、その魂は決して消えることがない。どちらかが死に、どちらかが生き続けても、その理想はいつまでも生き続ける。

 歴史が証明し、時が記憶する。




 「…強い。だが俺も、ここまで来たらもう…留まる訳にはいかないんだ」



 すべてが終わった時。

彼は静かにその場に剣を収め、薄暗いその部屋から離れていく。静かに倒れたヴァルサーは、意識を失った。一滴の血も流さずに。


 カリウスは、再び走りながら移動し始める。外では何らかの爆発物が使用されているのか、爆音と多少の揺れが伝わってくる。ミサイル基地だというのに爆薬を使用することを、カリウスは不安に思っていた。彼は、あの部屋で見つけた軌道制御室へ向かう。先程とは違い、敵と殆ど遭遇しない。

 実は、カリウスが入った施設の入り口は、軌道制御室から最も遠い位置にあった。


 その時突然。カリウスはその場に停止した。




 「我々は今、破壊という行動を正当に導き、新たな創造を行う」




 …。




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