4-11 ideal
戦闘は再び起こる。
激しさを増しながら、人々の思いを増幅させながら、
すべての理想を、実現させるために。
「敵機近づきます!」
「弾幕を張れ!何者も通すな!」
「こちら攻撃隊のハイフェル。ミサイル発射台と思われるものは幾つもあるようだが、外壁が固く砲撃も激しい!内部からの攻撃を頼む!!」
空の狭い渓谷にも、空から雪が降り注ぐ。ただひたすら静かに、ゆっくりと。何機も撃墜されている中、攻撃隊の2機が遂に渓谷地帯の奥深くまで進むことに成功し、そこにミサイル基地を確認した。幾つもルートがある渓谷地帯であったが、やはり当初の予想通り、対空砲が多いルートが、ミサイル基地への道であった。残存する攻撃機が次々と基地の高射砲や砲台を破壊し始める。そして陸戦部隊を乗せた輸送機も、次々と基地の敷地に強制着陸する。激しい攻撃を受けている今、躊躇している場合ではない。基地内部の構造はブリーフィングでも明らかにされていないため、実際に内部へ突入して確かめる以外に道はない。
彼らも激しい揺れに襲われつつも、強制着陸を行い、すぐに機体から降りる。最前線に行くことが出来ないメロディとフィルは、そこで彼ら三人と別れ、臨時の司令部が出来るのを待った。
「早速敵が…って、はじめから接近戦をやろうってのか!!」
アイクは向かってくる敵に対し、すぐ戦斧を取り出し、攻撃に対処した。今まで以上に俊敏で力強い攻撃を何度も受け、すぐに今までとは違う強い敵の集団であることを自覚した。ローブを身にまとったまま、カリウスも戦い始める。レイは走りながら数人の敵と一度に対し、別々の攻撃を繰り出してくる敵に柔軟に対処し、倒し続けていた。
「お前たちが噂の英雄か、待っていたぞ」
「何だって…!?」
レイと対する敵の一人が、冷静に剣をかわしてきた。速攻に転じた敵に対応が遅れたレイは、危うく体を斬られそうになる。脇腹を狙って繰り出された斬撃に対応し、その場でお互い膠着状態となる。
「何してるんだ!もう戦争をする必要はない。これ以上の争いを大陸に持ち込む理由はない!」
「争いの理由?…一つ戦いが起これば、もはや理由ではなく、理想が物を言う」
「理想だと…」
「理想を掲げる者たちの宿願を果たす為に、我々は戦う」
カリウス、レイ、アイクの三人ははじめ、同じ位置で戦闘を続けていたが、敵が強くなることによって、敵が戦場を移動し続け、次第にお互いの距離が離れていた。戦闘に集中し、周りの状況を上手く掴めなくなると、三人の距離が離れていくことさえ気付かずにいた。
「貴様がアイクかっ…!」
「何者だテメェ…!!」
レイと同じようにして、アイクも強敵に遭遇していた。彼らが出会う施設内部の強敵は、皆共通して敵の方から戦場を移動し続ける。近くの階段を一気に駆け上がった敵は、アイクが到着するその瞬間に強烈な一撃を加える。アイクはそれを戦斧で防御するが、次に腹部に蹴りを入れ、その衝撃でアイクは壁に打ち付けられる。斬られそうになるところを、斧を振る速さとは思えない速度で払いのけ、フロアが変わり戦闘が続く。
「チクショウ…分からず屋が…!!」
「貴様たちは、何のために戦いを続けている。我々への復讐か…っ!!」
「テメェらの復讐劇でどんだけの人が死んだか分かんねぇのか!!」
すると突然、敵が間合いを開けてきた。その瞬間、その敵は右手を前に突きだしてきた。一瞬強烈な風が吹き付け、アイクは思わぬ行動に対応できずその攻撃をもろに受ける。体が吹き飛ばされ、近くにあった窓ガラスに直撃する。勢い強くガラスに直撃したため、そのままガラスは粉々に割れ、アイクはその勢いのまま落下する。地面に落下する前に着地姿勢を取り何とか着地する。
「何て野郎だ…ありゃ魔道か…?」
アイクの着地した周囲では、連合軍と多くの敵が戦闘を繰り広げている。彼はその渦中に入り込んだ。戦闘は苛烈さを増し、一進一退を繰り返しているようであった。アイクは周りをいったん見て、そして考えた。魔道をあれほどまでに強く使える人が、あの男以外にもいるのだろうか、と。
「…じゃぁ、誰がアイツに魔道を教えた…んっ!!」
「たとえ英雄だろうが俺は負けん…!!」
上から勢いよく降りてきて、その落下状態のまま斬撃を繰り出してきたその男。アイクは自分の戦斧が折れるかもしれないと考え、すぐに横へ飛び込んでその攻撃を回避した。ビルで言う4階ほどの高さから落ちてきたのにもかかわらず、アイクは足に衝撃を受けただけで、状態の異常を抱えていない。同じくその敵も、何のダメージも無く、すぐにアイクに斬りかかってきていた。
「…皆いない」
カリウスは十数人もいた敵をすべてその場で倒し、ようやく停止出来る時間を手に入れる。が、その時既にレイもアイクも近くにはいなかった。あれだけ近くで戦っていたはずなのに、皆共通した目的のもと、それぞれの闘いに引き込まれていく。カリウスは施設内部を進んでいく。細い通路を何度も通り、幾多の敵と遭遇しながらも、すべて倒し続け、歩き続ける。
「…ここは…?」
狭い通路を進み続け、行き止まりに達した。何も書かれていない部屋へ入るためのドア。彼は静かにドアを開け、その内部へ入って行く。誰も姿が見当たらない。薄暗い部屋の中、多くの機会がその空間の中で、光を放ち続けている。
カリウスは、そのうちの一台に目を向けた。画面上には地図が記されており、その端から赤い点がゆっくりと移動し続けている。
「…この内部の地図か…」
そこで見つけた、軌道制御室という部屋。ここからは遠いが、その言葉を見てすぐに思いつくものがあった。
しかし、その瞬間。
「…そうか、貴方がゼータの英雄か」
「…?」
薄暗い空間の中から、一人の男の声が、彼の背中を突き刺した。ゆっくりと歩いてくる音を聞いたカリウスは、後ろを振り返る。まだ若い青年のようにも見える男が、そこにはいた。既に右手には剣を持っている。
「この戦争の姿そのもの…人々が50年もの間、迷走を続けた末路…私も、ルウム公国も、そして…同じ志を持つ者達をも呼び起こした、最期の抵抗…新たな創造への理想…」
…このヴァルサー、散り場所を見つけました…。
…。




