4-10 Valley Strike
もはやそこに言葉はない。
苛烈なる攻撃が彼らを襲い、戦いを激化させていく。
多くの者が死に、多くの者が活躍をする。
雪は降り注ぎ、大地を白く覆い尽くす。
空は暗く黒く、ただ静かに雪を降らす。
黒き暗黙を示す物の中から輝き降り注ぐ、雪。
黒い闇は輝ける光の意志を消し、
輝ける光は黒き闇の絶望を塗り替える。
やがて昏迷の時代は姿を変えていき、
明日という世界が大地を覆い尽くす。
白き大地に浮かぶ、輝ける雪。
降り注ぐ雪と黒き雲から覗く光が射し込んだ時、
私たちの願いは、きっと届くだろう。
「閣下。いかがなさいますか?」
「なるほど…対空砲という訳か。たとえそれが無かったとしても、バーチ渓谷は深い。攻撃機を先発隊として出撃させ、対空砲を迎撃。その後ろから、輸送機で接近する」
12月28日。
最前線に再び結集されたソロモン連邦、ギガント公国両軍は、昼過ぎから夕方頃にかけて空中移動し、ミサイル発射基地があると思われるバーチ渓谷地帯へ接近していた。谷はとても深く、航空機が通るほどの余裕が至る所にある。しかし、一本道ではなく、幾つかのルートが存在するため、正規ルートで目的地に辿り着くための調査が必要であった。そのために、連合軍は少数での偵察部隊を送り込んだが、すぐに撃墜されてしまった。しかし、その過程で対空砲が非常に多いルートを見つけ出すことに成功した。
司令部は、恐らくこのルートが基地へ通ずるものとなるだろう、と予測した。最前線にクロス大佐を送り込んでいる今、前線の指揮をするのは、後方に控えているヴァンス准将という老兵であった。
「ということらしい」
「もし俺たちが飛行機の運転も出来たとしたら、間違いなく攻撃機で最前線に行ってただろうな」
彼らも輸送機に乗りながら、その状況を聞いた。その輸送機内には、メロディとフィルの姿もいる。戦場の最前線へ行くことは出来ないが、その近くまでは行ける。彼らが空を飛び現地へ向かっている頃、攻撃機が対空砲火の激しい谷間へ突入していく。その状況を映像で見ることは出来ないが、多くの無線が飛び交い、ある程度の状況を確認することが出来る。
「何て敵の数だ!」
「ちくしょう奴らめ!一体どれほどの戦力を隠し持ってやがったんだ!!」
「クイーン7が墜落した!」
味方の、まるで悲鳴のような叫び。無線機に拾いこむ激しい砲火の音。先発した攻撃隊は、広い渓谷とはいえ、対空砲に囲まれながら前へ進む状況下にあり、瞬きをすることさえ許されない状態であった。壁が横へ流れ、次々と対空砲が現れる。ほぼ無謀の侵攻と言っても過言ではなかった。そんな中、輸送部隊も渓谷へ突入を開始する。攻撃部隊が仕留められなかった対空砲を破壊しながら。
「バトラー少佐。敵がさらに近づきます」
「分かっている。対空防御を怠るな!それから、基地には次の発射を急がせろ!」
「くそっ!スペード3も堕ちた!」
「このままで本当に大丈夫なのかよ!?」
攻撃機も次々と対空砲を破壊し続けているが、その数は尋常ではなく、同じようにして敵の対空砲は次々に連合軍の攻撃機を撃墜していた。既に輸送部隊も渓谷に突入しているため、彼らも迎撃を行わなくてはならなかった。攻撃機の数は更に減り続け、その圧倒的な対空攻撃は、輸送機までも被害を発生させるに至っていた。
「揺れるぞ気を付けろ」
「うん…!」
目の前が戦場で、視界が狭い。外を見ればすぐ横に壁が通り過ぎる。そんな光景を間近で見た彼女たちは、改めて彼らがどのような相手と戦いを続けてきたのかを、その危険さと共に考えさせられた。時々激しく機体が揺れ、姿勢を崩してしまう。
「聞こえるかユリアン!このままじゃ攻撃隊は全滅してしまう。攻撃しながら抜けるにはこの方法しかない」
「分かってる!!だが俺らについて来られる奴は恐らくいないぞ、ハイフェル!」
攻撃隊で先陣を切って、今も生き残り続けているパイロット二人は、全員にも聞こえる無線の中でそう言い合い、そして機体の速度を一気にあげる。景色が移り変わるのがとても速くなり、一度のミスも許されない状態になった。渓谷の中にいてもカーブが多く、上空へ出れば再突入の機会を失う。その中、高速で二人は先へ進み、驚くべき戦果をあげながら、渓谷地帯を進んでいった。
「おっ…光が!」
「視界が開ける…!!」
ユリアン、ハイフェル2名の攻撃機が、後ろとの差を何十秒も開け、対空砲火の防空網を潜り抜けた。すぐに二人は全軍の味方に無線を通じて、防空網からの脱出を報告する。そして、目の前に見えてきた大きな建物。円状のような建物があり、その周りには大きな施設がいくつも建てられている。
「こちらハイフェル中尉。嵐を抜けた。巨大な空間と施設を確認!」
谷の中に開ける広大な空間。そしてそこに聳え立つ大きな建物。偵察隊が調べることの出来なかった、最奥の空間。あまりに巨大なその建物から、抜け出してきた2機に対して対空攻撃が始まる。勢い良く苛烈な攻撃だったが、そう簡単には落ちる訳にいかない、と二人はすぐに回避行動を取り、味方に対空砲の所在を報告した。そして2機は、建物の外壁に作られている対空砲を、すぐに迎撃にかかった。
「2機突破したそうだ!」
「よし…俺たちもこのまま続く…!」
もうすぐ、戦争を終結させないと行動する者たちの壁が、見えてくる。
…。




