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endless the World War  作者: うぃざーど。
第4章 The Birth of the Endless
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4-7 Heroes of Zeta

イプシロンの沈黙後、しばらくは戦闘が起こらない。

彼らの記事に関する記事や情報が出回る中。


同じようにして、知れ渡り始める言葉がある。



 本当に、はじめからその目的だけを追っていれば、こんなことにはならなかったのだろうか。もし、はじめからこうなることが運命であったとしたら、それを彼らが知っていたら、彼らはこの話にどう抗っていたであろうか。



 つい先日まで起こり続けていた戦闘が、突然停止した。連合軍と残党軍の戦いは、連合軍が勝利をおさめ、残党軍の組織的抵抗を完全に沈黙させるに至った。連合軍勝利、という情報はすぐに各国に知れ渡り、また、その中で今回の戦いにおいて比類なき成果をあげたと言われる、彼らの存在も知れ渡った。今まで、彼らの活躍は公の舞台に出る機会がほとんどなく、その存在は、軍の関係者や、物知りな情報屋といった、狭い範囲に限定されていた。しかし、この報道がされて以降、彼らは戦争終結への功労者として、人々の間で広く知られることとなった。

 彼らがそう望まなくても、人々がそう望んだために、そう知れ渡った。事の先頭に関与していた者に、選択肢も、権利もなかった。


 「ずいぶん沢山の評論家がいるって話じゃねぇか。なぁ、レイ?」


 イプシロン沈黙から、さらに数週間が経過する。その間、一度も戦闘が発生することはなく、戦争の姿は変わりつつあった。今まで目の前で見続けてきた戦火が、今は穏やかな日常の光景へと、変化している。しかし、彼ら三人にしてみれば、それが何か不思議な光景に感じてしまっていた。


 彼らの頭は、既に「戦争が当たり前」という、皮肉なまでの考え方に、勝手に変換させられていた。


 「今日の新聞。見てみなよ」

 「どれどれ…お、なんだこりゃ?」


 12月も下旬へ入る。あと数日で年が改まるだろうという日の、朝の新聞。毎日のように新聞記事の一面を戦時下の話が埋めつくすが、その隣、二面に彼らの話が載っていた。


 「戦争終結へ大いに活躍した人物。ゼータ地方よりやってきた、英雄とも呼べる5人の子供を、称賛する…って。なんだ、この『ゼータ』って」


 「俺も気になってね。ゼータといえば…」


 レイは自分の頭の中にある知識で、話し始めた。ゼータ地方。昔よりグランバート領土の北部、元々城のあったあの一帯を、その名前で呼ばれている。誰がこの名前をつけたのかも不明で、それがいつの話になるのかも、不明であった。しかし、ゼータという一つの響きが、印象に残りやすい。人々に広く親しまれている名前ではないが、その評論家の記事には、その名前が書かれていた。


 「私も知ってる。ゼータ…何か意味を持つ言葉なのかどうか、私にはわからないけど…」


 フィルがそう言うと、アイクは新聞を机の上に放り投げ、同じように何も分からない、と言った。

 この記事に限ったことではない。戦闘が終わった後の記事で、何度かその言葉が記事に書かれていたことがある。しかし、今日のこの面では、ゼータという名前が大きく取り上げられていた。彼らとしては、ゼータが示す意味を知りたくなってきた。


 「批評する人たちは良いね。気楽で。俺たちがどんなに苦労をしてきたのかも、分からずに」


 「まぁ、確かにそうだけどよ…英雄だってさ、カリウス。幾つもの国を救った偉大な英雄ってのぁ、響き的にそう悪かねぇだろ?」



 「戦争に偉大な者など必要ない。世界は英雄を必要としている。だが、英雄を必要とする世界に、平和などない」


 カリウスは、4人にそう言い放って、口を閉ざした。そして自分ひとり、外の景色をずっと眺める。雪がちらつき、外は凍てつくように寒い。その中、カリウスの発言一つは、彼ら4人の精神に冷たい氷の刃をぶつけるに、十分すぎるほどの威力をもった。戦闘を経験してきた者が発する、言葉。この数ヶ月という短い時間で、戦争の姿は、大きく変わってしまった。その原因に、彼らも関係しているだろう。

 この一連の流れから生まれたその言葉は、彼の精神の一部分を示していたのでは、なかろうか。


 12月の下旬に入っても、戦争終結の宣言はされていない。連合軍は警戒態勢こそ解いたものの、まだ本国へ帰投はしていなかった。幾度の戦闘における傷を癒すことや、武器や車両といったものの補給確保など、オーク大陸でもやることは多かった。その中で、各国の首脳部を交えた、戦後の復興計画や今後の統治に関する会議が、ソロモン連邦を中心として行われる。場所は連邦領の北部の街、アルカナ。今まで決して和解することはないだろうと呼ばれていた、アスカンタ大陸の王国も協議に参加し、ある意味で、戦場は大地から会議室へと移って行った。この話し合いによって、また世界情勢が変化することになるだろう。既にどの国も敗戦における義務を背負わないことが決定されている。この戦争は、どの国も主犯であり、どの国も被害者であったのだ。

 しかしながら、一番不遇の扱いを受けることになったのは、やはりエルジア王国であろう。大規模な大陸侵攻作戦と、その過程で受けた被害は計り知れないものであり、既に国力として軍が意味を成していない。また、エルジアは自国が軍事的抵抗の停止を宣言したのち、それに反感する人々の圧力を止められずにいる。であれば、政治的な意味で、他の国が鎮圧や統治に協力する他ない。この後エルジアの状況がどう変化していくか、ほぼ目に見えていた。

 そして、最大の問題は、ルウム公国の処分だった。既に国としての機能はなく、残存兵力もイプシロンの攻防時に、全滅させてしまった。決して許されることのない永久戦犯、核攻撃による、一般市民を巻き込んだ大虐殺は、ルウムの汚名と人類の愚行と共に、永久に語り継がれることになるだろう。



 この数日間の会議が終われば、すべてが終わりへ向かう。俺たちの役目も終わり、やっと奴を追える。



 …そう、信じていたのに。






 なぜ、ここまで人間は愚かなのだ…



 …。




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