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endless the World War  作者: うぃざーど。
第4章 The Birth of the Endless
52/65

4-6 after

大陸の空は、解放された。

残存部隊の壊滅により、戦闘行為が停止される。


終わりが見えてきたと、彼らは信じたかった。



 「既に戦線は崩壊しています。どうなさいますか」

 「そのまま続けろ」


 この戦争における、大きな転換点。化学兵器イプシロンという存在。しかし、それよりも、原点に戻ればすべてはあの公国が滅亡してから、始まったのかもしれない。しかし、戦時中である今は、逆恨みなどされて当然のこと。憎しみは怒りを、怒りは苦痛を呼ぶ。その中で、復讐が行われたとしても、人々は本来何も不思議なことではない、そう考えるのであった。戦争だから当たり前。その考え方は、次第に人間を戦争の渦へ陥れた。

 本当は、あるべき姿でないものであったとしても。


 「…結局人が人に憎しみをぶつける。人が始めたことは、人が終わらせる。それだけのことだ」


 イプシロンは、既に内部の施設の制圧が完了し、完全に沈黙状態となっていた。連合軍の航空部隊も、既にイプシロンに対しては攻撃を停止している。今はイプシロンを防衛していた部隊の掃討にあたっていた。しかし、司令部が破壊された残党軍に、組織的な抵抗力は一切存在しなかった。戦線が崩壊し、混乱が発生している。その混乱を利用し、連合軍はさらに攻撃を続けた。その結果、残存する部隊がほぼ全滅したのである。

 イプシロンが完全沈黙してから、30分後。


 「…分かりました。アイク、レイ、撤退命令だ」

 「あいよ」

 「…やっと、終わったか」


 施設内部の制圧で特に活躍した彼らも、最前線からの撤退命令を受けた。これ以上居続けても味方が多すぎるために、先に突入した部隊を対象に、命令が下された。


 「…こんなものを作る技術があっても、人は戦いにしか使わない」



 結局は、技術も戦争のための手段であったのだろうか。

彼らは施設の外から後方へ下がり、味方の回収部隊と合流する。戦闘はほぼ終了した。クロス大佐は、調査部隊のみを残し、他の部隊を撤退させた。あまりにも悲惨な状況となった戦場であった。

 イプシロンの沈黙は、少しの時間を置いて、大陸中に知れ渡った。また、その周囲施設制圧に尽力し、味方を勝利に貢献させた中心人物として、彼ら三人が取り上げられた。大陸の空が強大な兵器による支配から解放された今。それを喜び歓声を上げるもの、軍を称えるものが大勢いた。


 その対象人物に、彼らが浮かび上がった。


 「俺たち、なんかかなり話題になってるっぽいな」

 「堂々と外歩けないんじゃないか?」


 イプシロンの制圧終了後、3日が経過する。彼らはメロディとフィルの一時滞在している町へ戻ってきた。その時に、彼らは何度も知らない顔の人たちに話しかけられた。自分たちは、いつの間にかこの戦争に大きく関わり、普通の人には成し得ないことをやってしまった。それによる影響なのだろうか。言うまでもなかっただろう。

 また、イプシロンの制圧は、同時にルウム公国軍の残党部隊が壊滅したという情報と共に、民衆にもたらされた。それを聞いた人々は、ようやく不毛な時代を形成し続けた戦争が終わるのか、と様々な感情を露わにした。無論、それが事実であるかどうかは、まだ決まったとは言えない。

 しかしながら、世界情勢は再び切り替わり、安定の兆しを見出し始める。特に尽力したのは、連合軍として戦闘に参加したソロモン連邦、ギガント公国であった。この戦争における犠牲の中心、エルジア、グランバート両国の復興が、今後の課題となるだろう。

 さらに時間は経過する。


 「なるほど…敗戦扱いを避けるのですね」

 「そうすべきだろう。グランバートもエルジアも、そして我々も…戦争の原因なのだからな」


 レイは、その町の政府事務所に呼ばれ、情報を受けた。この戦争はもともと、アスカンタ大陸の発見に端を発す。しかし、アスカンタ大陸には既に発達した文明のもと、二つの王国が成立していて、組織的な抵抗を受けることになった。はじめは絶対的な勢いを持っていたエルジアだが、戦線が拡大したと同時に、泥沼化していった。兵士たちが言うように、この戦争は一体何が目的なのかが、明確ではなかった。資源なのか、侵略なのか。そのすべてを自分たちの手に収めようと、各国間が争いを続けた。エルジア主導のこの戦いは、思わぬ展開でエルジアが降伏し、そして今、その元凶を連合軍が打ち破った。

 レイは政府高官からの情報を、他の人たちにも口頭で伝えてほしい、と頼まれた。


 「レイ、君も国へ戻るのか?」

 「いえ、しばらくはこの大陸にいようと思います。この大陸でもまだ、あらゆる問題があります。その解決に、自分の力が役立てば、と思っています」

 「そうか。では…もしよかったら、私も協力したい。連絡先を渡しておこう。私の名前は、ローナン議員だ」



 その日の夜。メロディとフィルの二人にしては広すぎる住まいに、彼ら三人もやってきた。久々の再会である。彼らが前線で活躍していることを、彼女たちも情報として聞いていた。しかし、彼女たちにしてみれば、そんな情報よりも、三人が生きているということが、何より嬉しかった。


 「なんか変な感じだね。5人揃って夜ごはんって」

 「本当は、これが当たり前なんだろーけどな!」


 そう。本当はこれが当たり前の姿。人々が送りたい生活なのだろう。カリウスは頭の中でそう考えながら、美味しい夜飯を食べ続けた。食後、皆がそれぞれ休み始めた頃。カリウスは外で夜空を眺めていた。


 「さ、寒くない…?」


 やや驚いた表情で、ドアを開け外に出てきたメロディが見えた。今は12月。当たり前のように、寒い。彼はグランバートにいた頃は、もっと寒かった、という。


 「私たちは、これからどうなるんだろう?」

 「まだ、具体的には決まっていないね。俺たちは一様扱いで言えば、傭兵なんだ。国に雇われた兵士。それでも、いつの間にか最前線で戦っていた」


 「それも、なんだか不思議だね。私たち、道化師を追って、あの杖を取り返すのが目的だったのに」


 「本当に、不思議なものだよ…」



 おそらく、彼らの今後については、これからの軍事会議において決定されるだろう。彼らは望みはしなかったが、連合軍のために尽力し、多大な成果を上げた。その評価は非常に高く、今となっては民衆が認めるほどであった。その分、慎重に今後の検討が行われるであろう。


 戦争の処理と、同じように。



…。



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