0-5 first contact
たとえ警戒を強めたとしても、不安が残ることに変わりはない。
何が起こるのか、何も起こらないのか。それさえも分からない状況。
その中で、一つ「禍々しい」気が、突如強く発生する。
よく考えてみれば、一日で相当な具合出世したことになる。彼は後々そのことに気付いたが、元々カリウスは出世を目的として兵士を続けていた訳ではなかったので、その辺りを気にすることは無かったのかもしれない。
「彼に任せて、大丈夫でしょうか…」
大臣がカリウスのいなくなった玉座の間で、デラーズにそう言う。実のところ、カリウスが適任だと思っていても、これから先何が起こるか分からない以上、不安はデラーズ王にも残り続けていた。
「…分からぬ。だがもし何か起こった時、奴ならその後、何とかしてくれる」
彼が玉座の間を出て、次の広間の扉を開けると、目の前にメロディがいた。流石に彼も驚き少し後退した。メロディは大臣から今回の件をよく聞いており、カリウスの手助けをするように指示されたようだ。彼としては驚きの連続であったが、それを表情にすると、メロディは少しだけ不満げな顔をして、カリウスの背中を叩いた。
早速彼はその日の晩から、城内警備ではなく、宝物庫へ通じる廊下の警備を任された。そこには普段見る機会がない新鮮とした空間と、それを守る親衛隊長の姿があった。
「お前も損な役回りを任されたものだな…」
「え?」
親衛隊長が勤務中にそう彼に言うと、彼は驚いたような表情を見せた。グランバートとエルジアの攻防が続き、その実戦経験で戦果をあげてきた親衛隊長にとっては、地味すぎる職場だという話だ。確かに大事な仕事ではあるが、目立つ機会もなく、動き機会も中々ないという。
「だが嬉しいよ。若いのが一人増えて」
それから数日間、特に何も目立ったことはなく、交代制で彼は杖の警備をしていた。隊長の言ったように、何もなければ本当に何もすることがない。それがむしろ当たり前の仕事であった。
…が、数日後。
その当たり前が、突如乱れる。
「…閣下」
「あぁ…私にも分かる。上の様子がおかしい」
突然訪れた、強烈な不審感。言葉では説明しづらく、ただ不安に駆りたてられるような、強い感覚。「禍々しい」気を激しく感じたのは、この時であった。
カリウスは自室から職場へ戻ってくる最中、いつもとは違う様子を肌で感じ取った。親衛隊長の顔を見ると、彼もまた気付いたようであった。
「カリウス…お前にも分かるだろう…この気は尋常じゃない…!!」
戦士として育て上げられる者には、その一部に強い気配を感じ取る力が備わると言われている。しかし、今自分たちが感じているこの気は、明らかに誰もが感じ取れるだろう「不安」であった。
その気配が一瞬強くなり、そして一瞬で消える。カリウスと隊長は、一気に強くなった方向を見た。
「…!?」
「何っ…!!」
その瞬間。まばゆい閃光が廊下を突き抜け、同時に激しく風圧を受け後ろから押し出される感覚を覚えた。
…。