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endless the World War  作者: うぃざーど。
第3章 Revenge of the Despair
45/65

3-14 sadness

エルジア軍の全面停止。

それでもなお、脅威は依然として存在し続けている。


排除という政府の命令に、軍人は従わなくてはならない。



 甚大な被害を出したソロモン連邦軍も、全軍に撤退命令を出し、各地の野戦飛行場から輸送機を派遣して、回収にあたった。生存者を救出するのに手一杯で、戦死者を回収するのは後日という形になった。もっとも、姿形さえない戦死者がどれほど多いか、それを気にするだけで、絶望に苛まれた。

 彼らは、自力でエールバシオンまで行き着き、連邦軍と合流した。海上方面へ撤退したギガント公国軍は、沿岸部で待機することになった。彼らは治療を受け、何とかして回復の方向へ持っていくようにした。他の兵士たちに比べて、それほど酷く重傷を負っている訳ではなかった。それが救いであっただろう。

 一方。戦闘中に連合軍の背後を取った無国籍軍は、爆弾が投下される前に、既に撤退を始めていた。北東への後退を繰り返しているとの情報が、上層部にもたらされていたのである。


 「とにかく、君たちが無事で安心した」


 怪我をしたものの、命に別状はなかったクロス大佐が、本国の領土へ輸送した彼らと会って話をした。彼らはその時に初めて、この戦いにおける犠牲者の数を知らされた。その数を聞いて、カリウスはまず最初にため息をついた。若干呆れたようにも見られたが。


 「今後については、今の私にも分からない。だが、政府はすぐに軍首脳部を交えて対策会議を開くだろう。すまないな、子供である君たちにここまでさせてしまって」


 「大丈夫です。今はそれが、自分たちのやるべきことだと、思っていますので」


 カリウスは冷静に、あるいは冷徹と言うべき様子で、大佐にそう言った。それを聞いた時の彼らの反応は、ほぼ全員が若干驚き戸惑っているものであった。大佐は一瞬俯き、そしてまた、彼らに言う。


 「こんな状況下で言うのもなんだが、軍内部でも、また、政府内部でも、君たちは必要とされている。ただ戦闘に生き残って帰ってきた、という点だけではない。君たちは戦果をあげ、味方に良い影響を与えるだろうと、考えられている。すまないが、もうしばらく、命令が下るのを待っていてほしい」


 「…」


 クロスは、子供たちにのしかかる重圧を、理解することは出来なかった。彼は、もう子供ではないからだ。しかし、事の重大さとそれを負わせる責任の大きさは、大佐にもよく分かっていた。自分も、この子供たちを必要としている。本当は巻き込みたくない、この力を利用したくはない、そう思ったとしても、この戦時下に、人を選んでいる場合などない。使える人間がそこにいるのなら、最大限に利用する。軍の上層部や、政府は結局そういう存在で、それを覆すことなど誰にも出来ない、とクロスは思っていた。


 クロスもまた、この流れの悪さに予感を感じていた。


 無国籍軍、バトラー少佐たちの襲撃から、1週間が経過する。今も、彼らはソロモン連邦領内にある基地の近くの街で、待機し続けている。次なる命令が下れば、彼らはまた、戦闘へ参加することになるだろう。本当は自分たちにも命の危険が迫っているのかもしれない。しかし、妙に落ち着いた状況でいられる自分たちが、ある意味で憎かった。その日の晩、カリウスは一人無言で外へ行く。それを追いかけようとメロディも上着を着ようとするが、その場にいたアイクに止められた。


 「…そっとしておいてやれ。あいつは今、疲れている。無理に行動を抑えない方が良い」


 「…アイク、私心配で…どうすれば良いのか分からなくて」

 「あぁ、お前の気持ちも分かる。俺にも、今はどうすれば良いのか分からないんだ。だが…あいつが言うように、俺たちは今、自分のすべきことがなんとなく分かってる。それを全うすべきなのかも、しれないな…」


 皆が辛い思いをしている。それでも、助け合いをすることが出来ない自分がとても嫌いになりそうだった。メロディは、こみあげてくる思いをぐっと堪えて、部屋に戻った。何も出来ない、どうすれば良いのか分からない、その思いはアイクも、レイも、フィルも同じであった。

 それからさらに、1週間が経過する。オーク大陸にも雪が静かに降り始め、徐々に季節の変化を表現し始めていた。冷え込みが激しくなり、服装も変化する。大地の自然の流れにも、違いが表れてくる。ある日のこと、彼らはクロス大佐から、基地に来るように言われた。おそらく、新たな命令が出たのだろう。


 「来たか。君たちも見るんだ」


 クロスに出迎えられると、彼らは兵士がたくさん集まっている場所に案内された。その大きな部屋には、大きなスクリーンがあった。スクリーンの中で、スーツを着た男一人が、演説のようなことをしている。彼らもその映像を見る。


 「あれが、大統領だ」

 「あの人が…!」



 「エルジア軍は、戦闘の全面停止を宣言した。しかし、まだ脅威が晴れた訳ではない。既に誰もが知っていることだろう。先日、我が軍、ギガント公国軍の連合軍とエルジア軍との戦闘の間に、我々は核攻撃を受けた。人類史上最も卑劣で、最も最悪な日となっただろう。その脅威は、今もまだ、残り続けている。それを排除しなくては、真の意味で平和をもたらすことが出来ない。これは、公国政府と、我々連邦政府が決定したことである。国籍なき軍隊は、オーク大陸の北東部や、その他の地域に基地を構えている。よって我々は、これらをすべて排除し、この戦争を終結させる。それこそが、核攻撃によって亡くなった軍人や一般市民に対しての、最大の償いとなるだろう」


 スクリーンに流れている映像は、連邦政府の大統領が国内に向けて流した演説であることが、彼らにはすぐに分かった。そして、その話の中にあるように、ルウム公国の残党と思われる兵士たちは、今も各地で活動を続けている。これらを排除することが、両国政府間で決められた。これにより、両軍は再び大陸内を侵攻することになる。ソロモン連邦が干渉していなかった地域への、侵攻。

 戦争は、まだ続く。政府の命により。



 「…くだらない」



 カリウスは、たった一言、そう吐き捨てた。




 もはや、何のために戦争をしているのか、分からなくなっていた。今に始まったことではない。しかし、その愚かさが人をも滅ぼすことを、彼は気付いていた。

 人が人を滅ぼす。それが最善の選択肢と考えられ、そして実行されようとしている。




 …すべては、国家の争いから始まっている。

国と国、互いを別け、争いの種を作り出している。国家は、戦争のために存在している訳ではない。


 それでもなお、人は愚行を続ける。

何のために、この地図に国境線を引いた?

隣国へ侵攻するために、この線引きは存在しているのか?

すべては、上の判断。俺には、どうすることも出来ない。



 ただ、何もかもが悲しかった。


 

 だから、俺は…。




 …。



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