0-4 「魔道」の杖
穏やかな生活、活気のある町に潜む、禍々しき陰。
光と陰の世界に足を踏み入れ、人々の心に警戒と不安を与える。
人々は、それが現実に起こらないよう、祈るのだ。
普通の兵士にしか見えないカリウスは、やや普通とは思えない、元気で美人な友人であるメイド、メロディに呼ばれて、自分が大臣に呼ばれていたことをそこで知らされる。何分前に呼ばれたのかハッキリしないため、やや怖いものであったが、日中で兵士が呼び出しを受けることもそんなにないため、何事も無いだろう、とカリウスは考えた。
カリウスは、メロディに言われた通り、玉座の間へと向かった。この城を象徴するかのような大きな空間。客人を迎えるための空間でもあり、
他の空間より綺麗に保たれている。新鮮な空気が漂うこの空間に、カリウスが入っていく。
「失礼。メイドが私を呼んでいた、と聞きましたが…」
とても硬い表情で、逆に言えばとても礼儀正しく、彼は玉座の間へ入っていく。兵士が玉座の間を訪れることは、そう多い機会ではない。「親衛隊」として認められているカリウスでも、そこまでこの空間に来たことは無い。
彼の目の前には、王の座に座っているデラーズ王、そして彼を呼び出した大臣が傍で立って、カリウスの方を向いている。
「突然すまないな、カリウス。今日呼び出した要件は重要なものだ」
カリウスは歩いて二人のそばまで近づき、そして静止する。
「近頃、城の周辺で奇妙な噂が流れている。道化師のような男がうろついているらしい」
「…穏やかではありませんね」
カリウスがそう返答すると、二人とも頷いてまた彼の方を見る。大臣が話を続ける。
「何を企んでいるかは知らんが、町の人に城の場所や内部の情報を聞きまわっているらしい。そこでカリウス、お前の手を借りたい。今5階の宝物庫で守っている物、知っているだろう?」
「…魔道の杖、ですか」
それを聞いた時、デラーズがその場から立ち上がり、大きな窓の方へと向かった。グランバート城にずっと保管されている、杖。特殊な力を発生させる人工的武器のようなもので、親衛隊が常に警備し続けている物であった。
普通の人は手にしない、特殊で未知なる力を導くもの。それが「魔道」と呼ばれていた。
「城の警備を強化することに決めた。カリウス、今日の夜から親衛隊の中枢の一員となり、杖の警備に専念してほしい」
大臣が一人の兵士に対して頼みごとをする例も、この国ではそう多くはない。何か特例で扱われているのではないか、というように感じてしまうのも無理はないが、杖の警備は実績と力のあるものに任せるように決めてある。ある意味、カリウスが適任で彼の力が認められていることの証明でもあった。
デラーズ王は、言う。
「…何かが、良くない。何か嫌な予感がするのだ」
「分かりました。お引き受けしましょう」
何か嫌な予感がする。彼は、それが現実のものにならないよう警備し、また、祈るしか今は無かった。
こうして彼は、一般の兵士には出来ない宝物庫の杖を守る、親衛隊の中枢人物として仕えるようになった。
…。