3-6 unknown alert
世界情勢の急速な変化を危惧する彼女。
その最中、大陸では再び大きな事件が巻き起こる。
危機感は、徐々に現実へと向かっていく。
世界情勢の急変。かつてないほどの速度で、世界が新たな方面への加速を始めている。戦争を始めた当初以上の勢いで、変化が進行し続けている。このまま潮流が世界を飲み込むようなことがあれば、今後人類がどのように変化していくのか、わからなくなる。その危険性がこの時代になって現れている、とメディばあさんは言った。
負傷したカリウスや、彼らの休息のために、オーク大陸へ上陸して一番はじめに見つけた家に、お邪魔していた。そこで彼らは、メディばあさんが魔道に通じる人間であることを知り、若干戸惑った。メディは物知りというだけでなく、おそらく若い頃にいろいろな経験をしているのだろう、若い彼らはそう判断した。
「ギルド街襲撃事件…ギガント公国の参戦や、ソロモン連邦の大規模侵攻作戦…世界は、間違いなく、よくない方向へ加速を続けています。戦争は、一度始めたら、収まるまで、行くところまで行くしかない…」
彼らがメディの家に厄介になり始めた頃、大陸では大きな動きが発生することになった。それは、彼らがオーク大陸へ到達してから、4日後のことであった。
「チッ…相変わらずソロモン空軍は精鋭揃いか。司令官、またしても後退命令が出たそうです。もうすぐ、この大都市にまで見方が集まりますよ?」
「愚痴を言うな愚痴を。必ず好機は訪れる。それが来るのを待つしかない…」
ここは、オーク大陸南部。エルジア王国領北部に位置する、エルジア三大都市のひとつ。エールバシオンと呼ばれている大都会。エルジア王国流通の拠点であり、エルジア国内全域の商業地中心地として、非常に栄えた都市である。ソロモン連邦共和国がエルジア王国に対しての、本格的な侵攻作戦を開始してから、エルジアは連戦連敗を喫し、幾度となく陸空軍を撤退するに至っている。この頃から、一般市民の間でも、エルジアの戦線拡大が無謀であることが叫ばれている。それ以上に、エルジアの軍首脳部や政治内部に、一体どのような異変があったのか、それを知りたがる者も増えてきていた。
いずれにしても、ソロモンは、たった2週間ほどで、常識に考えられない速度で、南部侵攻を果たしている。
そしてここは、エールバシオン郊外にある、エルジア軍基地。陸軍のみならず、空軍までもが管理できる、複合基地であった。夜の11時。既に飛び立つ航空機も、出撃する軍の部隊もいない。情報員たちは、基地内部にある施設で専用の機器を使用しながら、周囲の状況を常に確認し続けている。
「まだ、エールバシオンに敵が来るまでは、3回戦闘があるだろうな、きっと」
「おいおい、冗談はよしてくれ。全部負けたら3アウトだ、ゲームセットじゃないかよ。こりゃ都市に人がなだれ込むな…」
「ただの予想さ。当てになる訳でもないし、気にする必要なんてないさ」
「だと良いがな?俺はお前と違って、女房も子供もいるんだ。そういやお前、まだあの美人さんと?」
「あぁ。年が明けたら、一緒に…」
その時だった。対空レーダーを管理している一人の男のモニターに、赤文字でアラートが表示された。聞きなれない不安感を増長させる音と共に、アンノウン急速接近の表示に切り替わる。
「し、司令官!反応です!レーダーに何か…!?」
夜中で暗い建物に、突如眩い光が強弱をつけて迫ってきた。暗い空間に目が慣れていたため、閃光弾でも受けたのか、と誰もが考えたが、予想ははずれた。徐々に光が強くなり、目が痛くなってくる。
「…こ、光…熱源…近…!!」
レーダーに反応があってから、すべてが終わるまでに要した時間は、わずかに15秒であった。たった15秒で、彼らの命運が定められ、ひとつの大事件が発生した。晴天の星空に光り輝くもの。エールバシオン郊外エルジア軍基地で異常が発生したことを、本国が気づくのに、数時間以上も必要となった。
「…なんだ、この感じ…」
同じ時刻。メディ宅の2階。突然嫌な予感を感じ取ったカリウスは、椅子から立ち上がり、ベランダに出る。
そして、彼が向いた方角は、都市エールバシオンのある方角であった。
…。




