3-4 evil road of lightness
信じられない光景が、目の前に広がっていた。
圧倒的なまでに強いはずの者に対抗する、一人の男。
そして、道化師が感じ取った、強烈なプレッシャーを武器に、戦う。
「言っただろう。そう簡単に、負けるつもりはない、と」
「…馬鹿な…」
島の奥、ついに彼らは道化師ネオスと対峙する。聖堂院以来の対峙で、一人ひとり共通の目的を持ちながらも、異なる感情を抱き、ネオスと対することになった。ネオスの魔道の前に、彼らは必死に戦うが、ネオスが撃ち放った魔道の攻撃を受けた彼らは、身動きを封じられた。絶体絶命の危機に瀕したと、誰もが思うこの場面であったが、たった一人だけ、身動きができるものがいた。
…カリウス。
再びカリウスが、攻撃をするための態勢を整える。ネオスはこの時、はっきりと感じ取っていた。あの時、そう、聖堂院でスレンダーを殺害した時に感じた、わずかな感覚。気のせいと信じていた、自分が一番知っている感覚を、強く感じ取っていた。
「…感じるぞ、強い力を、魔道を…!」
ネオスは右手から、瞬時に魔道による電撃を放出し、カリウスに向けて攻撃を仕掛ける。それを見たカリウスは、すぐに剣を前に出して電撃を受け流す。その状態のまま、ネオスは杖を持って急接近してきた。高速で接近するネオスの目的が近接戦闘であることを、カリウスはすぐに理解した。そのために、電撃が止み斬撃が繰り出される一瞬を正確にとらえ、彼はジャンプした。高速で真横に振られる杖をかわし、今度は下から上に向かって振りあげられる攻撃を、真正面からカリウスは受け止めた。
信じられないような光景が、目の前で繰り広げられていた。アイク、レイは全く身動きが取れないというのに、カリウスはネオスの魔道が効いていないどころか、先ほどよりもキレのある、はっきりとした攻撃意志でネオスと対していた。尋常ではない、自分たちと違う力を持つ者の具現化。この時、彼らとカリウスとの間に、大きな力の差があることを、認めざるを得なくなった。
ネオスは、杖の長さを活かして、杖を真ん中で持ち、両刃の武器のごとく扱った。高速で力強く放たれるネオスの攻撃に、カリウスは防戦を強いられながらも、一瞬の隙を見逃さず、果敢にネオスの胴体に攻撃を入れようとする。そんな戦闘が、既に2分間も続けられていた。お互い動き回り、決して背中を取らせない戦闘。ネオスの力を持ってしても、倒すことも、攻撃を加えることも出来ない状態。ネオスは、先ほど放った魔道の力で、力が若干弱まっている。短期戦ですぐケリをつけられると信じていただけに、ネオスが打ち出した魔道の技は、自分にとってもリスクの多い技だったのだ。それを理解したカリウスは、この戦いの優位さを見逃さなかった。
「ぐっ…何ということだ…!」
隙をついた、カリウスの蹴りが、ネオスの顔面を直撃し、一瞬怯んだ。さらにそこへ付け込んで、斬撃を繰り出したカリウス。その攻撃は正確にネオスの体を捉えていたが、掠った程度にしかならなかった。ネオスが何とか回避したのである。
カリウスは、無言で剣を構える。明らかに強く感じる魔道の力に、ネオスが驚きを感じていることを、ネオス自身が自覚した。
「…残念ですが、ここまでのようですね。カリウス殿!この戦い…いずれ必ず返させていただきますよ…!!」
その時、ネオスが悔しそうにそう言い放ったのを、その場にいた彼ら全員が聞き、そして理解していた。ネオスがその瞬間目の前から消えると、アイクとレイは見えない拘束具から解放された。体には、何の負担もない。カリウスに助けられたのだ。
「逃げたか…それにしても、カリウス。どうしてお前だけ…」
カリウスが、答えようとした、その瞬間だった。突然聞きなれない音とともにやってきた、揺れ。ほんの数秒経過したうちに、その揺れと音が、徐々に強まってきた。
明らかに様子がおかしい。倒れそうになるところを何とか堪え、周りの状況を確認しようとした。が、天井からいくつものコンクリートが落ちてきたとき、確認する必要もなく、断定した。
「島が崩れていく…!」
「あいつもだが、俺らももうここに用はねぇんだ!脱出するぞ!!」
突然やってきた揺れは、さらに勢いを増していた。恐らく自然に発生したものではない。タイミングが良すぎることからも、ネオスが何らかの手段で揺れを発生させたのだろう。
彼らは、脱出を開始する。
…。




