3-1 Another Army
戦況に新たな局面が発生するのと、時を同じく、
新たな状況を作り出そうとする者もいる。
彼らも、そして、あの男たちも。
「こちら駐留軍司令所。作戦コードと機体シリアルナンバーを提示せよ」
「了解。今送信する」
オーク大陸。
本来であれば、自然豊かな大地が続く土地として、人々の間で親しまれていたであろう場所。南北東西共に大自然に囲まれ、そのもとに、文明が発達してきたとされる、世界で2番目に発見された大陸。
その自然に溢れた大陸では、ここ数十年間で、もはや数えきれないほどの戦闘が繰り返されてきた。自然の炎上。人々の憎しみや恨みが形となって現れた、破壊活動。自然は常に、人々の犠牲となり、決して自由を赦されることがなかった。
オーク大陸中北西部。戦争の傷跡が激しく残るこの地に、あの男は帰ってきた。
「バトラー少佐!久しぶりです!」
「レンスか、懐かしいぞ!」
ギルド街襲撃事件。既にその情報は、衰退したグランバート軍やギガント公国だけでなく、オーク大陸にいる各国にも広まっていた。核弾頭が街の地下で管理されていた、という事実も、国としては驚きであった。が、それ以上に、グランバートは核爆弾を作る技術があったということに対し、各国とも「やはりそうだったか」と、グランバートの技術力を皮肉にも高く評価した。
ギルド街から奪取に成功した、バトラー少佐と呼ばれる男と他の人員が、基地へ帰還する。他の国に知られないよう、ひそかに進められていた軍事工作。
「私がいない間に、何か変わったことはあったか?」
「エルジアが戦線を拡大した後、ソロモンは大陸南部へ動き始めましたね。少佐の思った通りです」
「やはりな…エルジアも馬鹿な連中だ。補給線が伸びれば、兵士に負担が掛かるのは当然なのだが」
ギルド街襲撃事件から、既に2週間以上が経過している。この時期になり、オーク大陸ではようやく、グランバート王国に悲劇が発生したことが、情報として広まり始めていた。その前にも噂程度にグランバートの話は流れていたが、恐らく確証とした情報が出回ったのは、この時が最初であった。
「我々もそろそろ動きますか!」
「そう行きたいところだが、もう少しここは我慢だ。焦ることはない」
ソロモンとエルジアが再び本格的な戦闘を始めれば、必ず我々が付け入る隙が出来るはずだ。その時を、待つ…!
世界情勢。軍事大国であるグランバートが衰退し始めてから、幾つかの大きな出来事が発生し続けていた。一方で、ギガント公国と同盟関係を結んだ若き子供たち、彼らは、ソウル大陸の西側から北側に向けて大きく迂回して、小さな戦艦で移動を続けていた。大陸の東側から向かえば、最後に道化師ネオスが目撃された場所まで、そう時間を使わずに行くことが出来る。しかし、それを邪魔する戦争という存在のおかげで、彼らは見つかり辛いとされるコースを辿るしかなかった。
夜明け。地平線上に明かりが見え始め、幻想的な風景を醸し出している。水しぶきが時より顔を弱く打ち付け、冷たい感触を認識させる。真上の空には、今も無数の光が転がっている。
「おーい、カリウスー」
戦艦の高所から、周りを眺め続けるカリウス。寝ずにここに来てから、既に数時間と経過している。そこへやってきたのが、古くからの友人、メロディだった。特に何も見えず、異常もないことを、彼はメロディに伝える。そういう役を担っていた訳でもなく、ただ自然と生まれた確認、であっただろう。
「今、こうしている間は、ゆっくり出来て良いね」
「あぁ…そうだね」
「本当は、もうちょっとゆっくりしていたいけど…」
彼らは、噂にある奇妙な島に、近づきつつある。
…。




