2-2 ギルド街襲撃事件
突然発生した爆発に火災。
目的を突き止めるべく、彼らは現場へ急行する。
そこに現れた者達とは。
突然感じ取った、強烈な気配のようなもの。一気に不安感を増幅させ、それと同じように危機感も体全身に伝わるような感覚。これがスレンダー院長の言っていたプレッシャーの一つなのかもしれない。その時のカリウスはそう判断したが、彼にとってもまだ魔道の力をすべて理解していない点が多いので、それがプレッシャーによるものだと認めるのには、まだまだ時間が掛かりそうであった。
そばにいたフィルも、突然歩くのを止めたカリウスに異変を感じ取った。そして次の瞬間。突然空から爆音のようなものが近づいてきて、鼓膜を刺激する。直で聞いていられないほどの音が数秒間だけ鳴り響いた後、突如街の至る所で爆発が発生する。まるで地震が発生したかのような強烈な揺れと共に、視界に映るやや遠くの場所で火災が発生するのが見えた。
「なんだ!?」
「分からん…だがここにいては危険だ!」
突然発生した大きな揺れと爆音に、レイたちも目覚めて様子を見た。はじめにカリウスとフィルが見た時よりも、火災発生地区が拡大している。たった数十秒の違いではあったが。
とにかくも、建物の中にいると危険だと判断した彼らは、すぐ必要最低限の物だけを持って外に出る。カリウスも走りながら院長にもらったローブを着て、皆は大広間のような場所に出た。
「アイク!この街が狙われる理由分かるか!」
「んーっとな…あーそうだ!この街は元々グランバートの軍事施設だったんだ!ここには軍人も多くいたはずだが、俺が街から離れる時にぁ既に軍も殆ど駐留しなくなった。ここは内地だからな!」
カリウスがアイクに聞くと、アイクはそう答えた。今までソウル大陸で戦闘が全くなかった訳ではなかったが、少なくても内地での戦闘を想定してはいなかっただろう。人員が割かれたのは攻撃対象となり得ない場所と判断されたから、という考えが一気に強まった。アイクは、グランバートが軍事施設として使っていたのは、この街の中心にある、現在の評議会講堂だという。
「アイク、レイ、行くぞ!」
「お、おう!!」
「二人は安全な場所へ!」
恐らくこれはエルジア軍の奇襲によるものだろう。内地への戦闘を想定していないことを前提とした攻撃の可能性が十分に考えられた。今一番問題なのは、上陸作戦を展開したエルジア軍がなぜここを強襲したか。何か目的が無ければこの内地に侵攻してこないだろう予想があるだけに、目的が彼らには気になった。直接道化師と関係のない戦闘だとしても、既に彼らはエルジア分隊との戦闘を経験している。
彼らの気質が、放ってはおけないという、行動に繋がった。
「こりゃひでぇ…!」
「既に中に入ったようだな…カリウス」
講堂についてみると、アイクの予想が的中したのか、建物内部にまで火災が広がっていた。広く大きな建物であるが、至る所に兵士が倒れている。カリウスはまだ意識があり倒れている兵士のもとに寄り、敵がどこへ向かったかを聞いた。
「誰だか知らないが…頼む。奴らはこの先の地下室が目的だ…っ」
「地下には何があるんだ!?」
「急げ…地下には、戦術…か…」
兵士はその場で気を失い、口を開けることはしなかった。話の最中ではあるが、敵が何かを目的にこの講堂を狙ったことはハッキリと分かった。カリウスはすぐに地下室を探し走り始める。ここで多くの兵士が倒れているということは、既に地下室の中に敵は入り込んでいるだろう。カリウスの予想は当たり、地下室への入り口が既に敵兵に抑えられていた。走った勢いのままカリウスは剣を抜き、敵兵と対峙した。何度か剣同士で打ち合うが、すぐに隙を突いて突破する。
さらに走り続けて抜けた先は、まるで宝物庫のような空間に出た。恐らく密閉されていたであろうこの空間は、ドアノブが破壊された後、ドアを破って突入されたと思われる。既にそこには誰もいなかったが、目の前に一つ大きな金属製の箱があった。
「奴らこれが目的か…?」
何も塗装されていないように見えるこの箱。その大きさから、中にはとても大きな何かが入っていたことは、彼らにもすぐ分かる。それが何なのかは分からなかったが、一つのマークを見て彼らは勘付いた。
…ハザードシンボル。
「おい…これ…」
「…まさか…!!」
彼らはすぐにその部屋から出て、右の方に見えた扉の先に向かった。この先も既に敵兵に破られた跡が残っていて、目的は既に果たされたと彼らは判断し、急いで後を追った。いまだに街中が揺れに襲われている中、とにかく急いで階段を駆け上がる。そして再び大広間に出て外が見えると、そこには爆音を鳴らしながら今にも離陸しそうな、ヘリコプターが止まっていた。彼らが現物を見るのは初めてである。
それを見たカリウスが真っ先にヘリに向かって走り出す。敵兵士たちもその存在に気付いたようで、すぐに離陸を始める。宙に浮いたヘリの足を掴もうとカリウスは飛び上がるが、あと一つのところで手が届かなかった。
「…くっ…!!」
「ここにあった物は頂く!我々国家の再興のためにな!!」
ヘリ側面のドアが閉まる瞬間、中から男が出てきてそう言った。カリウスたちはその時の敵兵の言葉を忘れず、姿を目に焼き付けた。ヘリが遠くへ離れていき、虚しく音が小さくなっていく。何かに巻き込まれたことは間違いない。それが何なのかは彼らにも分からない。だが、彼らにはこの戦闘で決定的に予想と違うものを発見した。
「…カリウス、こいつらは、エルジア軍じゃない…!」
…。




