1-6 聖堂院
より詳しい情報を知るために、南下を続ける四人。
そこに見えてきた、一つの大きな聖堂院。
予想もしないところで、自分たちの目的に繋がる環境を見る。
若き女性フィルを新たに仲間に迎えて、四人となり再び道化師を追い始める。道化師が意図的にフィルの雇い主を殺害したと四人は考え、恐らくその目的を達成した今、レイラの街にいることは無いだろうと判断した。四人はレイラから南下し、再び大きな街が来るまで進み続けることにした。
ここから西部へ進むと、天然自然がそのままの形で残り続けている。小さいが山などもある。ソウル大陸東部も自然の形がハッキリと分かる地形で、歩きづらい場所なども多く存在していた。そんな苦労も、四人いれば何とかなる。道中話しながら四人は進んでいた。
「えっ、言えば寄ったのに!」
「いや、良いの。あの村には、もっと私が大きくなってから帰るって、決めてたから」
その話の中で、レイラの街から更に東部へ進むと、レニースという小さな村があることを、フィルから教わった。本当に何もないような場所だが、その村がフィルの生まれ故郷だと言う。フィルが都会で働くようになったのは、まだ13歳の時。
「私は昔から、両親がいない家庭で育った。村では、親代わりとして育ててくれた父がいたけれど、その父も度々帰って来ない時期があって、ある時突然別れを告げられたんだ」
「それがフィルに都会へ行く決断をさせた、と…」
「…そうだね。まだ、5年しか経ってない」
それから数日が経過する。しばらくは街や村は無い自然地帯だったが、やがて視界の先に大きな建物一つが見えてくる。大自然の中に一つだけ目立つものがあり、この近くに来た人は誰もがその建物の存在に気付くだろう。雨上がりの寒い日の午後、四人はその建物に近づく。
「あれは聖堂院だ!」
「聖堂院?」
聖堂院とは、この世界に存在する神教を尊ぶ者たちが集まる施設であった。ソウル大陸以外にも、世界中に幾つも存在していると言われている。宗教的要素のある施設のためか、公に存在を広めることはしていない。また、多くの聖堂院は、孤児や精神的に傷を負った者の救いの場所とも言われる。
ソウル大陸最北部のこの聖堂院は、ラズール聖堂院と言われる。既に日が暮れ始めているということで、四人はまずその聖堂院へ入ることにした。
「よくぞ参られた。このラズール聖堂院で神々に祈りを捧げ、己の安泰を願えよ」
神聖な場所なだけに、雰囲気もまさに思わせるものがある。しかし聖堂院内部は人の行き交いがそれなりにある。恐らく多くの人はここで生活をしている人たちなのだろう、カリウスたちはそう思った。しばらく院内を歩き続けていると、一人の女性に出くわした。
「いらっしゃいませ。旅のお方ですか?」
「はい。少々用があって、大陸を南下しています」
カリウスが一歩前に出て、丁寧に自分たちの身分を簡潔に話した。彼の対応にアイクやフィルは少し感心した。武器を持ちながらも、こういった親切な対応もしっかり出来るのだと。
「もしお困りのことがありましたら、お力になれるかは分かりませんが、お手伝いしますよ?」
四人は同時に顔を見合わせた。この女性に自分たちの目的を明かしても、何も問題はないだろう。もしここで何か情報を得られるのなら、そうしたい。カリウスは自分たちが道化師を追っていることを、彼女に伝える。
「…道化師の話は、私も何度か聞いています。ですがその件は私よりも、団長に聞いた方が良いでしょうね。ご案内いたします」
若い女性が笑顔でそういうと、四人を聖堂院内の奥へ案内してくれた。思いのほか建物は広く、また一般の客人が入れないような場所も多々ある。恐らく聖堂院で生活をしている人たちのスペースは、客人とは別に設けてあるのだろう。しかし、四人が案内されたのはそれよりも奥。
「聖堂騎士団…詰所?」
「この先は、この院で修行をする兵士たちの生活場になっています」
グランバートの兵士であったカリウスは、聖堂騎士団のことをそれなりに知っている。聖堂騎士団は世界中にある聖堂院の警備を第一目的として作られた組織である。聖堂院での生活をする男性で、騎士団への加入を希望する者は少なくない。しかし、騎士団の見習いになるためには、適性検査を通らなければならない。その検査が厳しいもので、その段階で諦めてしまう人も多いと言われている。
そのためか、騎士団に所属する剣士たちは皆相当な実力者と言っても良い。
「団長今よろしいですか?旅の方々で、ぜひ話してあげて欲しいことが…」
「どうぞ、入って下さい」
中から男性の声が聞こえてきた。すると案内をした女性がドアを開け、四人を中に通す。窓から差し込む光を背景に、デスクに座る青年の姿が見えた。
「よくお越し下さいました。私はラズール聖堂騎士団の団長を務めています、クラインと言います」
…。




