1-4 街の陰りで
危機的状況から救い出された女性。
あらゆる事を知る男と共に働いていた事実。
そして、自分たちがその一件に関わりがあるという、真実。
「分かっている」
「放ってはおけねぇな!」
旧シェイル共和国自治領、レイラ。大きな街であの道化師の行方を掴むために、情報集めをすることを三人は決めた。そして移動を続けようやく街へ入ろうとしたところ、様子のおかしい集団を三人は目撃した。一人の女性を五人ほどで取り囲んでいる物騒な集団がいる。様子を見た感じ、その女性が何か悪いことをした訳ではなさそうだった。
「あ?なんだお前ら」
「その女性を放せ。さもなくば、容赦はしない」
カリウスの性格上、弱い者に数で一方的な立場を得ることを絶対許そうとしなかった。アイクも同様で、二人は男たちの間合いの一歩外で、すぐ武器を抜いた。男たちもそれを見ると、向こうが勝負をしろと挑発してきたように受け捉え、簡単に武器を取り出した。二人の狙いは、まさにそこにあったのだが。
先に武器を取り出したのはカリウス等だったが、先に攻撃をしかけたのは男集団であった。まず一人がカリウスを殺そうと攻撃を仕掛ける。が、一度の振り抜きを彼は見抜き、一発の攻撃で武器を弾き飛ばした。続いてもう一人がアイクに攻撃するが、相手の武器とアイクの戦斧がぶつかり合った瞬間、相手の武器は砕けて無残な音を立てる。残り三人が同時に向かってきても、結果は見えていた。
「ちくしょう…覚えてやがれ!!」
自分たちが1分も経たずに、しかもたった二人に負けたことを自覚する前に、この二人があまりに強すぎるという認識から、五人は一斉に逃げ出した。二人の敵ではなかった。
「すみません…ありがとうございます…」
「怪我はない?」
「はい!大丈夫です。助かりました…あの、もしよかったら私の家まで来ていただけませんか?その、お礼がしたいです」
感じの悪い人ではなかった。むしろ大人しい性格のようにも見え、カリウスたちも警戒する必要はないだろうと感じていた。断る理由も無かったため、そのまま彼女の家まで案内された。この街で一人暮らしをしている彼女は、当然のことながら街にも詳しい。情報をもらえるような場所も、ついでに教えてもらおうと考えていた。
「私はフィルと言います。この街には数年ほど前に来たばかりなのですが…」
…フィル。
都会の裏通りの道具店で働く、若き女性の名前だった。ロングヘアで全身が細身の彼女は、その店で知られた人気者である。
彼女はお礼、と言って、紅茶を三人分用意した。旧シェイル共和国は、紅茶の産地として大陸内で有名であった。良い香りと豊かな味が広まる。
「皆さんは、旅のお方ですか?」
「用があってな。そんなとこだ」
「フィルさん。この街でこの大陸の色々な情報を仕入れられる場所を探しているんだけど、心当たりある?」
メロディがそう優しく聞くと、フィルは少し俯いて話し始める。
「そうですね…色々ありますが、私の雇い主も、とても情報網が広く、いろいろ知っていました。今はもういませんが…」
「…何かあったようだね。よければ、雇い主の話をして頂きたい」
カリウスは、数秒間だけ間をあけた後、フィルにそう聞いた。この時点でカリウスは既に、フィルが何かしらの情報を持っていることを信じ、自分たちの身分を隠す必要はないと判断していた。
「道具屋の店長で私の雇い主は、先日街の郊外で殺害されたのです。得体の知れない、不思議な者に」
「雇い主は、何か殺されるような方だったのだろうか」
「あまりそう思いたくはありません。ですが…色々不思議なことを知っている人でもありました。情報に詳しいこと以外に、私によく魔道と呼ばれる能力の話をしてくれました。昔、グランバートでそれに関する調査に携わっていたようで…」
この話を聞いた直後から、アイクとメロディにはある一つの考えが浮かび始めていた。カリウスは、雇い主の話を聞く前から、二人が今考え始めたことを既に考えていて、それに関連付けられた話であることも予測していた。
フィルの雇い主は、実際に魔道の力を知る者で、それを駆使することも出来ると本人に言われたのである。
「そして言っていました。魔道は魅力的な力だが、本来表に出るべきものではないと。ここ数年で、その力が若干世の中に広まりつつあることを…」
話の全てを断定できる訳ではないが、自分たちが今これからしようとしていることと、フィルの身の回りで起こった事件には、深い関係がある。三人はそれが恐らくあの道化師へ繋がる道だと、判断した。
そしてカリウスは、自分たちの素性を明かす。
…。




